残業代の計算方法について解説

公開日:2020年9月3日
  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

労働者もワークライフバランスや柔軟な働き方を求めるようになり、それに応じて、フレックスタイム制や変形労働制や歩合給制など様々な働き方が登場しています。

ただし、どのような働き方をしていても、労働者にとって、自身が得る収入・給与への関心、特に残業代への関心は高く、未払残業代に関する紛争も頻発しています。

仮に、未払残業代の問題が発生した場合、一人の労働者だけで起きていることは稀で、多くの労働者の間で同時に起きていることが多いです。そして、残業代については、以下で見ていくとおり割増率も大きく、未払残業代の問題が発覚した際には、会社として多額の未払残業代の支払いに追われ、資金繰りに窮するだけでなく、会社に愛想を尽かした労働者が会社から流出してしまうなどして、人員にも窮することになりえます。

そのため、残業代を適正に計算した上で、きちんと支払っているかどうかは非常に重要で、万が一間違いが生じた場合、会社の将来を左右しかねません。

そこで、以下、労務管理に詳しい神戸法律事務所の弁護士が、残業代の計算方法を詳しく解説していきます。

従業員の残業代を適正に計算する責務

会社は、当然ながら、労働者の残業代を適正に計算して支払う責務があります。

労基法37条では、会社に対して、労基法の定めた方法によって算出した割増賃金を支払う義務を課しており、法で定めた割増賃金を下回る支払いは許容されません。

そして、労基法37条に違反していれば、未払残業代だけでなく、「付加金」や「遅延損害金」の支払いを命じられたり、場合によっては6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の対象となるため、会社にとって未払残業代は十分に注意すべき問題といえます。

逆に、残業代を適正に計算して支払うことは、①人件費を把握して会社の利益を正確に把握できる、②無駄な残業代を支払っていないかチェックできる、③残業代の未払いを防止できる、など会社にとってのメリットもあり、特に、③については、未払残業代は比較的高額になることも多く、未払残業代を発生させないということが、会社の経営の安定につながるものといえます。

割増賃金の種類

残業代は割増賃金の一つに位置付けられます。

割増賃金には、①法定時間外労働に対するもの(時間外手当・残業手当など)のほか、②休日労働に対するもの(休日手当など)、③深夜労働(午後10時から午前5時まで)に対するもの(深夜手当など)があります。

具体的には、①は、法定労働時間が1日8時間、1週間40時間と定められているところ、これを超えて労働者を労働させるときに「時間外労働」となり、割増賃金、つまり時間外手当や残業手当が発生します。

また、②は、労基法で、会社が労働者に週に1回、もしくは4週間に4回以上の休日(「法定休日」といいます。)を与えなければならないとされているところ、この法定休日に労働させると「休日労働」となり、割増賃金、つまり、休日手当を支払う必要が出てきます。

そして、③は、労基法で、基本的に午後10時から午前5時までは深夜時間帯とされているところ、この時間帯に労働させると「深夜労働」となり、割増賃金、つまり深夜手当を支払う必要が出てきます。

割増賃金の割増率

上記したとおり、割増賃金には、①法定時間外労働に対するもの(時間外手当・残業手当など)、いわゆる残業代だけでなく、②休日労働に対するもの(休日手当など)、③深夜労働(午後10時から午前5時まで)に対するもの(深夜手当など)があります。

まず、①時間外手当や残業手当などについては、割増率が通常の労働時間または労働日の賃金の25%以上でなければなりません。さらに、ひと月60時間を超える時間外労働の部分については、通常の賃金の50%以上の割増が必要とされています。

次に、②休日手当などは、割増率が通常の労働日または労働時間の賃金の35%以上でなければなりません。

そして、③深夜手当などは、割増率が通常の労働日または労働時間の25%以上でなければなりません。さらに、時間外労働かつ深夜労働の場合には、割増率が通常の賃金の50%以上(25%以上+25%以上)でなければなりません。

残業代の計算式

では、具体的に、残業代をどのように計算していくべきなのかを見ていきましょう。

まず、割増賃金は、以下の計算式を用いて算出します。

【割増賃金額=基礎賃金・時間単価×対象の労働時間数×割増率】

*基礎賃金・時間単価=1時間あたりの基礎賃金を指します。

そのため、残業代を計算する場合には、以下の計算式になります。

【残業代=時間単価×時間外労働時間×割増率25%(ひと月60時間を超えた部分は50%)】

そこで、残業代の計算の基礎となる、⑴基礎賃金、時間単価の計算方法や、⑵時間外労働時間の計上の際の注意点、⑶割増率について、詳しく解説していきます。

1時間あたりの基礎賃金を算出する方法

⑴基礎賃金、時間単価を算出する方法としては、時給を算出していくことになります。

まず、多くの労働者に採用されている月給制の場合を見ていきましょう。

月給制の場合、月ごとに休みの日の数が異なるなどして、毎月の所定労働時間は一定ではないものと思います。

そこで、月給制の場合には、ひと月当たりの平均労働時間を算出する必要があり、以下のように、⑴基礎賃金や時間単価を算出します。

【時間単価=月給÷(1日の所定労働時間×(1年の日数-1年の所定休日日数)÷12ヶ月)】

*下線部の部分で、ひと月当たりの平均労働日数を算出しています。

これに対して、月給制以外の場合の基礎賃金や時間単価の割り出し方については、労基法施行規則19条によって定められており、例えば、時給制の場合には、以下の式になります。

【基礎賃金=時給】

また、日給制の場合には、以下の式になります。

【基礎賃金=日給÷1日当たりの所定労働時間】

家族手当などの各種手当は基礎賃金に含まれるのか?

割増賃金は、上記のとおり、⑴基礎賃金や時間単価をもとに算出しますが、かかる基礎賃金や時間単価を計算するにあたっては、役職手当や皆勤手当などの各種手当を基本給に含めて計算します。

ただし、⑴基礎賃金や時間単価を計算するにあたって除外できる手当がありますので注意しましょう。

それは、以下のア~ウのような手当で、これらは、労働者の個別的な事情に基づいて支給され、これを割増賃金の基礎に含めると不公平になるため除外が認められています(労基法施行規則21条)。

ア家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当
イ臨時に支払われた賃金(例:結婚手当等)
ウ1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与や精勤手当、勤続手当、能率手当等)

*ただし、これらの手当でも、個別的な事情に関わらずに一律に支給する場合には、労働者の個別的な事情に基づいて支給されているわけではありませんから、除外できません。

手待時間や持ち帰り残業の取り扱いについて

割増賃金は、上記のとおり、⑵時間外労働の時間数をもとに算出しますが、かかる時間外労働を算出するにあたって、業務時間とは必ずしもいいがたい時間を労働時間にそもそも組み込まないといけないかどうかが問題となるものがあります。

例えば、ⅰ会社で8時間労働したものの、業務が終わらずに家に持ち帰った際の自宅での労働や、ⅱ4時間作業を行い、その後1時間の待機時間を経て、再度4時間作業をした場合など待機時間がある場合は、時間外労働があると考えるべきでしょうか。

まず、労働時間とは、「使用者の指揮監督下に置かれている」時間かどうかをもとに考えます。これは、三菱重工業長崎造船所事件(最高裁平成2年3月9日判決)において、「労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。」とされているためです。

また、行政通達においても、「休憩時間とは、単に作業に従事していない手待時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間のことであって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと」(昭和22.9.13発基17号)などとされています。

これを踏まえて考えると、ⅰの持ち帰り残業については、自宅に持ち帰って仕事をするように明示的に命令されていた場合や、明らかに業務時間内には終わらない分量の業務を命令された場合などには、自宅であっても使用者から明示的もしくは黙示に業務を行うよう命令されたといえるので、労働時間に含まれるでしょう。

ⅱの待機時間についても、使用者からの指示があればすぐに作業を始めなければならない等の事情があれば、待機中であっても労働から解放されておらず、使用者の指揮監督下に置かれていると言えるため、労働時間に含まれることになるでしょう。

時間外・休日・深夜労働の割増率

既にみたとおり、割増賃金には、①法定時間外労働に対するもの(時間外手当・残業手当など)、②休日労働に対するもの(休日手当など)、③深夜労働(午後10時から午前5時まで)に対するもの(深夜手当など)があります。

それぞれの割増率を再度確認しておきましょう。

まず、①時間外手当や残業手当などについての割増率は、通常の労働時間または労働日の賃金の25%以上です(ひと月60時間を超える時間外労働の部分については、通常の賃金の50%以上の割増が必要とされています)。

次に、②休日手当などの割増率は、通常の労働日または労働時間の賃金の35%以上です。 そして、③深夜手当などの割増率は、通常の労働日または労働時間の25%以上です(なお、時間外労働かつ深夜労働の場合には、割増率は、通常の賃金の50%以上(25%以上+25%以上)です)。

残業代の計算例(月給制の場合)

以上を踏まえて、残業代を具体的にどのように計算するか見ていきましょう。

Aさんの月給が30万円(手当込み)で、1日の所定労働時間8時間、1年の所定休日120日の場合で、時間外労働に20時間従事した場合の残業代を計算してみます。

月給制の残業代の基礎となる⑴基礎賃金、時間単価については、既に見た以下の計算式を用います。

【基礎賃金=月給÷(1日の所定労働時間×(1年の日数-1年の所定休日日数)÷12ヶ月)】

そこで、ここに当てはめると、

【Aさんの基礎賃金=30万円÷(8時間×(365日-120日)÷12か月)】
         =1836.7346・・・
         ≒1837円(小数点以下四捨五入)

そして、残業代については、これまで見てきたとおり、

【残業代=時間単価×時間外労働時間×割増率25%(ひと月60時間を超えた部分は50%)】

となるので、Aさんの残業代については、以下の計算式のとおりになります。

【Aさんの残業代=1837円×20時間×1.25(125%)
        =4万5925円

このように、上記例でのAさんの残業代は、4万5925円と算出するのです。

1か月あたりの平均所定労働時間

既に見てきたとおり、多くの労働者に採用されている月給制の場合、月ごとに休みの日の数が異なるなどして、毎月の所定労働時間は一定ではないものと思います。

そこで、月給制の場合には、ひと月当たりの平均労働時間を算出する必要があります。

この場合には、以下の計算式を用います。

【ひと月当たりの平均労働時間=1日の所定労働時間×(1年の日数-1年の所定休日日数)÷12ヶ月)】

*下線部分で、ひと月当たりの平均労働日数を計算しています。

このように計算したものを踏まえて、残業代を計算していくことになります。

特殊な労働形態における残業代の考え方

最近では、「週5日9時から18時までの所定労働時間」などのような画一的な労働環境ではなく、業種の違いやワークライフバランスを踏まえて、様々な労働形態が現れてきています。

例えば、これから見ていく、「変形労働時間制」や「フレックスタイム制」、「裁量労働制」はその典型例で、これらの制度を取り入れていく会社も増えてきています。

ただし、これら「変形労働時間制」や「フレックスタイム制」、「裁量労働制」においても、時間外労働が生じれば残業代を支払う必要があるのであり、どのような場合に残業代を支払う必要があるのかをしっかり確認しておく必要があります。

変形労働時間制の場合

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、一定期間の総労働時間が法定の範囲内であれば、特定の日や期間について法定労働時間を超える労働を許容し、その範囲内では時間外労働として取扱わなくてもよい(残業代を支払わなくてもよい)とする制度です。

具体的には、労基法上、労働時間の限度は1日8時間以内、1週間40時間以内とされており、1日8時間以上の労働に関しては基本的に割増賃金(残業代)を支払う必要があるのですが、例えば、1か月単位の変形労働時間制を採用していれば、繁忙期に1日9時間の労働時間を設定して閑散期には7時間に設定するといったように、1か月間全体で総労働時間が法定内になるよう調整して、労働時間を効率よく用いることができるのです。

繁閑期のある会社は、会社で定める所定労働時間を繁忙期には長めに設定して閑散期には短く設定できる変形労働時間制を導入するとよいかもしれません。

ただし、変形労働時間制においても、時間外労働に対して残業代が発生することがあります。

そこで、この変形労働時間制における残業代の計算方法について、以下詳しく見ていきましょう。

変形労働時間制での残業代

変形労働時間制では、上記したとおり、一定期間の総労働時間を法定内に調整することができるのですが、その一定期間としては、①1週間単位、②1か月単位、③1か月以上の単位(多くは1年単位)の3つのいずれかで設定することになります。

まず、①1週間単位の変形労働時間制は、1週間のうち特定の曜日のみが忙しい場合に、1週間の中で労働時間を調整することができる制度です。労働者30人未満の、小売業・旅館・飲食店でなければ導入できない制度ですが、1週間の総労働時間が40時間を超えなければ、1日9時間働く日があったとしても残業代は発生しません。例えば、月曜から金曜までの5日間のうち、月曜と火曜は7時間、水曜は8時間、木曜と金曜は9時間働いた場合、合計では40時間の労働時間なので、木曜と金曜の労働に残業代は発生しないということになります。ただし、このような①1週間単位の変形労働時間制の場合でも、⑴1日10時間を超える労働をさせた場合や、⑵1週間の総労働時間が40時間を超える場合には、残業代が発生しますので、ご注意ください。

次に、②1か月単位の変形労働時間制は、1か月の中で、特定の曜日・特定の週のみが忙しい場合に、1か月の中で労働時間を調整することができる制度です。労働者があらかじめどの日やどの週に長時間労働に従事するのかを把握できるように、1か月の間の各日・各週の労働時間を事前に定めておく必要がありますが、1か月の総労働時間が法定の範囲内(1週間の平均労働時間が40時間以内など)であれば、1日8時間を超えたり1週間で40時間を超える労働時間があっても残業代は発生しません。例えば、1か月のうち、1週目と4週目の労働時間を50時間、2週目と3週目の労働時間を30時間と指定しておくことで、1週目と4週目で50時間働いても、2週目と3週目で30時間しか働かなかった場合、1週間の平均労働時間が40時間であるため、基本的に残業代は発生しません。ただし、このような②1か月単位の変形労働時間制の場合でも、⑴1日8時間以内、1週間40時間以内と定めた日や週において、時間外労働(1日8時間超、1週間40時間超)が生じた場合や、⑵1日8時間以上、1週間40時間以上と定めた日や週において、定めた労働時間以上の労働が生じた場合、⑶1か月単位で見たときに総労働時間が法定の範囲外である場合には、残業代が発生しますので、ご注意ください。

最後に、③1か月以上の単位の変形労働時間制は、1か月以上の期間(多くは1年)の中で、特定の季節・時期のみが忙しい場合に、その期間の中で労働時間を調整することができる制度です。②1か月単位の変形労働時間制と同様に、労働者がどの時期に長時間労働に従事するのか把握できるように、一定期間の各日・各週の労働時間を事前に定めておく必要があります。ただし、このような③1か月以上の単位の変形労働時間制の場合でも、⑴1日8時間以内、1週間40時間以内と定めた日や週において、時間外労働(1日8時間超、1週間40時間超)が生じた場合や、⑵1日8時間以上、1週間40時間以上と定めた日や週において、定めた労働時間以上の労働が生じた場合、⑶1か月以上の単位で見たときに総労働時間が法定の範囲外である場合には、残業代が発生しますので、ご注意ください。

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、会社が1日の始業や就業の時間を労働者が自分で自由に決めることができる制度です。ただし、いつでも完全に自由な時間に働いてもよいというわけではない場合が多く、この時間は必ず働かなければならないという時間帯(「コアタイム」といいます。)が決まっている場合があります。会社としても、労働者の管理のために、また、労働者間での連携のために、コアタイムを設けていることも多いでしょう。

フレックスタイム制では、労働者がどの日にどれくらい働くか自分で決めることができますので、その性質上、エンジニアやデザイナーなど個人作業が多い職種の方に導入されることが多いかと思います。

このフレックスタイム制では、労働時間が長い日と短い日が出てくるため、一定の期間(「清算期間」といいます。)内での総労働時間を決める必要があります。

例えば、1か月を清算期間とし、1か月の総労働時間を160時間、コアタイムを13時~16時などと設定する形になります。

このフレックスタイム制では、清算期間があるために残業代の計算方法が通常の法規制と異なることがありますので、以下詳しく見ていきましょう。

フレックスタイム制での残業代

フレックスタイム制では、清算期間での総労働時間が決められて、その範囲内で自由に労働者に働いてもらうため、労働時間が1日単位や1週間単位ではなく、清算期間(例えば1ヶ月)単位などでカウントされるという特徴があります。そのため、あらかじめ決められた総労働時間の枠内に、実際の総労働時間が収まるのであれば、1日何時間働いても残業にならないため、残業代が発生しません。

また、仮に、あらかじめ決められた総労働時間を超えても、法定労働時間の範囲内である場合(例えば、1か月の総労働時間を160時間と定めて、法定労働時間内の170時間勤務した場合)でも、基本的には残業代は発生しません(ただし、当然ながら超過分の基本賃金は支払う必要があります)。

ただし、清算期間ごとに、⑴清算期間内における法定労働時間を超えて働いた場合、⑵(清算期間が1か月を超える場合には)1か月の労働時間につき週平均50時間を超えた場合、残業代が発生します。また、⑶法定休日に働いた場合には、働いた全ての時間が残業時間(法定休日労働時間)になりますし、⑷深夜労働の場合にも、割増賃金を支払う必要がありますので注意が必要です。

裁量労働制の場合

裁量労働制とは

裁量労働制とは、事前に会社との間で決めた時間(「みなし労働時間」といいます。)を働いたとみなす制度で、実際に5時間しか働いていない場合でも8時間働いたとみなされ、逆に10時間働いたとしても8時間働いたとみなされます。

裁量労働制の場合、フレックスタイム制のように、労働者は自分の好きな時間に出勤し、好きな時間に退勤することが可能ですが、フレックスタイム制と異なり、実際に働いた時間に応じた給料が支払われるわけではない(実労働時間が長かろうと短かろうと、賃金等は変わりません)という点が特徴です。

裁量労働制は、長時間労働の温床になりかねないため、①仕事のやり方や時間配分を労働者に委ねてしまった方が良いだろう19の業種(弁護士や公認会計士、TVプロデューサーやディレクター、システムエンジニアなど)について専門業務型の裁量労働制と、②会社を挙げて行うような重要なプロジェクトの内容を考えたり、新しく参入する事業を検討したり重要な業務に従事している場合の企画業務型の裁量労働制との2つに限定されています。

この2つの裁量労働制を導入するとしても、①専門業務型の裁量労働制では、労使協定を締結した上で、労働基準監督署へ届け出る必要がありますし、②企画業務型の裁量労働制では、労使委員会を設置して、労働基準監督署へ届け出るほか、労働者本人の同意も必要になるなど、その要件は厳格であり、どちらも会社が勝手に決めて導入することはできませんので、ご注意ください。

裁量労働制での残業代

裁量労働制では、上記したとおり、短時間働いても長時間働いても、事前に会社との間で決めたみなし労働時間を働いたとみなす制度です。

そのため、裁量労働制では、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)の法規制が適用されないような仕組みであり、みなし労働時間がそもそも8時間以内であれば、残業代は基本的に発生しません。

しかし、①みなし労働時間がそもそも8時間を超えている場合には残業代が発生しますし、その他にも、②午後10時から午前5時間での深夜勤務をした場合、③法定休日に労働をした場合には割増賃金が発生します。

出来高払制(歩合制)の残業代の計算方法について教えてください。

出来高払制(歩合制)とは、売上などの成果に応じて賃金が計算される制度をいい、基本的には固定給+歩合給が労働者に支払われることになります。

この出来高払制(歩合制)で支払われる歩合給は、あくまでも成果を上げたことに対する報酬であり、時間外労働に対する残業代とは別ですので、出来高払制(歩合制)でも、労働者が時間外労働をすれば、残業代は発生します。

では、どのようにして残業代を計算するかというと、出来高払制(歩合制)について残業代の計算の基礎となる基礎賃金・時間単価の計算方法は、労基法施行規則19条6号に「その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額」と規定されています。

例えば、出来高払制(歩合制)での1か月分の支給額が40万円で、所定労働時間170時間、時間外労働を30時間した場合には、40万円÷(170+30)=2000円という基礎賃金・時間単価の計算方法になるということです。通常の残業代では、支給額を「所定労働時間」で割って基礎賃金・時間単価を算出するのに対し、出来高払制(歩合制)では、支給額を「総労働時間(所定労働時間+残業時間)」で割って基礎賃金・時間単価を算出するので注意しましょう。

こうして基礎賃金・時間単価を算出すれば、既に見た以下の計算式を用います。

【残業代=時間単価×時間外労働時間×割増率25%(ひと月60時間を超えた部分は50%)】

定額残業代(固定残業代)制による残業代の計算

定額残業代(固定残業代)制とは、あらかじめ一定の時間外労働等を想定し、その時間外労働等に対する残業代を、毎月定額で支払うものです。ただし、定額残業代(固定残業代)を支払っているからといって、いくら働かせても定額以上の残業代を支払わなくても良いというわけではありません。

そのため、この定額残業代(固定残業代)制をとったとしても、想定を上回る時間外労働等に対しては、定額残業代(固定残業代)とは別に残業代を支払う必要があります。

定額残業代(固定残業代)における残業代の計算方法については、定額残業代を基本給に組み込んでいるか(組込型)、基本給とは別の手当等で支給されるか(手当型)によって異なることがあります。

それは、組込型の場合、基本給部分と定額残業代(固定残業代)部分とが区別できないとされ、基本給+定額残業代(固定残業代)の総額で基礎賃金・時間単価を算定される可能性があります。例えば、20時間分の定額残業代(固定残業代)込みの給与として30万円(実質は、基本給25万円+定額残業代(固定残業代)5万円)と定められていた場合、かかる30万円全体をもとに所定労働時間で割って、基礎賃金・時間単価を算出されてしまう可能性があるのです。

対して、手当型の場合には、基本給とは別に、定額残業代(固定残業代)の支給があるため、基本給をもとに基礎賃金・時間単価を算定され、定額残業代(固定残業代)では不足しているという場合に、追加で残業代を支払う必要が出てくるものと思います。例えば、基本給25万円、20時間分で定額残業代(固定残業代)5万円を支給するとされているところ、30時間働いた場合には、まず、25万円を所定労働時間で割って基礎賃金・時間単価を算出し、時間外労働30時間と割増率25%を掛けて算出した残業代を見て、5万円を超えた範囲において追加で残業代を支払うということになると思います。

定額残業代(固定残業代)や定額残業代(固定残業代)における残業代について、以下の記事で詳しく述べていますのでご参照ください。

定額残業代制に関する重要判決と時代の変化への対応
定額残業代制が否定された場合の三重苦

7 残業代の計算に関するQ&A

計算した残業代に端数が出ました。どのように処理すべきでしょうか?

基礎賃金・時間単価やそれをもとに計算した残業代に円未満の端数が生じた場合、円未満を四捨五入してください(50銭未満の端数→切り捨て、50銭以上1円未満の端数→切り上げ)。

労基法上も、このような処理が認められています。

残業代の計算を30分単位で行っており、30分未満は切り捨てて計算しています。法的には問題無いでしょうか?

たとえ1分であっても労働時間に含まれますので、30分未満は切り捨てといった、四捨五入のような計算は許容されていません。例えば、とある1日における労働時間の管理として、8時間10分の労働時間を8時間とカウントすることはできません。

労基法上では、企業の事務処理を簡単にするため、「1ヶ月単位」で時間外労働等の合計時間を見る場合には、30分未満の端数が出たら切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げることができるとされているだけです。

割増賃金の基礎となる「1時間当たりの賃金」には賞与も含まれますか?

既に触れましたが、賞与は、労働者の個人的な業績や事情に基づく支給であるため、1時間当たりの基礎賃金・時間単価には含まれません。ただし、ここで除外される賞与とは、あくまで、あらかじめ支給金額が決まっていないものをいいます。

そのため、年俸制などの給与体系を採用し、月給としての給与部分と賞与部分とを合計した金額を年俸として定めている場合には、あらかじめ賞与の支給金額が決まっているといえるので、1時間当たりの基礎賃金・時間単価から除外することはできません。

割増賃金の割増率について、会社が引き下げることは可能ですか?

割増率について、労基法で定められている割増率を下回ることはできません。労基法は、労働者保護のために最低限の基準を定めたものであり、これを下回る合意等を無効にする効力を持ちます。

そのため、会社と労働者との間で労基法の割増率を下回る労働契約を締結することはできませんし、仮に、締結したとしても無効となります。

割増賃金の割増率について、会社が引き上げることは可能ですか?

上記した通り、労基法では、労働者ほどの観点から最低限の基準を定めたものであり、それを下回る合意等を無効にするだけです。

そのため、労基法の基準を超える場合には、就業規則や個別の労働契約で割増率を引き上げても何ら問題はありません。

残業代に上限を設けることは可能ですか?

残業代に上限を設けることはできません。労基法上、法定時間外労働に対して残業代を支払うように定められており(裁量労働制は例外です)、法定時間外労働の分だけ、残業代を支払う必要があります。

そのため、残業代に上限を設けたとしても、労働者から残業代を請求されれば、会社としては支払う必要があります。

この点、定額残業代(固定残業代)制を残業代の上限を設けるものと誤解している方もいますが、すでに説明したとおり、残業代の上限を設けるものではありません。

給料が最低賃金を下回っている場合、残業代は賃金ベースと最低賃金のどちらで計算すべきですか?

給料が最低賃金を下回っている場合、残業代を計算するもととなる基礎賃金や時間単価は、最低賃金で計算すべきでしょう。

最低賃金法において、最低賃金を支払わない使用者に対して、50万円以下の罰金を科すことができる旨規定されておりますので、給与が最低賃金を下回っている時点で、この危険性を認識しましょう。

一時間あたりの基礎賃金などの計算は最低賃金で計算し、残業代を計算することとなります。

欠勤を残業代で相殺することは可能ですか?

欠勤を残業代で相殺できるかというのは、例えば、週5日勤務、1日の所定労働時間が8時間である場合(合計週40時間労働)に、1日欠勤した穴埋めとして、残る4日間にそれぞれ10時間勤務させて(合計週40時間労働)、残業代を支払わなくても良いか、という質問に置き換えられると思います。

賃金・給与は、労働者の労働の対価として支払うものであり、労働者が、欠勤や遅刻・早退等で労働していない場合には、その分の賃金・給与を支払わない・カットするという対応を取ることができます(ノーワークノーペイの原則)。

しかし、労基法上、法定時間外労働には割増賃金として残業代を支払うように規定されておりますので、この労基法を無視して会社が一方的に欠勤を残業代で相殺することはできません。

そのため、上記例の場合、会社としては、1日分の給与を控除し、合計8時間分の時間外労働に対応する残業代を支払う必要があるのであり、基本的に欠勤を残業代で相殺することはできません。

遅刻した時間を補うために行った残業についても、割増率が適用されるのでしょうか?

遅刻した時間を補うために行った残業については、いつ残業させたか、遅刻した時間数と残業した時間数がどれくらいかによって、割増率が適用されるかが変わるといえます。

例えば、①始業が9時、就業が18時(うち休憩1時間)としている会社において、始業に1時間遅刻した労働者に対して、遅刻当日に1時間残業させた場合(当該労働者は、10時~19時まで勤務)には、残業代を支払う必要はないといえます。残業代については、法定時間外労働に対して支払われるものであり、遅刻した時間数と残業した時間数が対応している限り、法定時間外労働がないためです。

これに対して、②上記例で、始業に1時間遅刻した労働者に対して、遅刻当日に2時間残業させた場合(当該労働者は、10時~20時まで勤務)には、法定時間外労働として1時間分の残業代を支払う必要があります。

また、③上記例で、始業に1時間遅刻した労働者に対して、遅刻した日の翌日など別の日に1時間残業させた場合には、明らかに法定時間外労働が生じているため、残業代を支払う必要があります。これは、上記で見たとおり、欠勤と残業代を相殺できないのと同じ考え方です。

残業代の計算を誤り多く払い過ぎてしまいました。返してもらうことは可能でしょうか?

残業代の計算を誤って残業代の過払いが生じた場合、会社は、当該労働者に対して、不当利得として、過払金の返還を求めることは可能です。計算間違えなど会社側に不注意がある場合であっても、返還請求できるとされています。ただし、当該労働者が残業代の過払いがあると知らずに、ギャンブルなどに使用してしまっていた場合には、返還を求めることができなくなります。

また、残業代の過払い分と、今後労働者に支払う給与や残業代の支払いとを相殺することも原則できません。給与は、労働の対価として、全額支払われることが原則とされているためです。

ただし、①残業代の過払い分を賃金から控除するという内容の労使協定がある場合や、②労使協定がない場合でも、残業代の過払い分の控除(相殺)の「時期、方法、金額等」からみて「労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合」には、後に支払われる賃金から相殺することができるものと解されていますが、ケースバイケースの判断になりますので、労使協定がない場合には、相殺は控えるべきでしょう。

時給制の残業代の計算方法について教えてください。

すでに述べましたが、時給制において、残業代の算定のもととなる基礎賃金・時間単価については、そのまま時給を用います。

そのため、時給制における残業代の計算方法としては、以下の計算式に当てはめて算出します。

【時給制の残業代=①時給額×②時間外労働の時間数×③割増率25%】

日給制の残業代の計算方法について教えてください。

すでに述べましたが、日給制において、残業代の算定のもととなる基礎賃金・時間単価については、

【日給制における基礎賃金・時間単価=日給÷1日当たりの所定労働時間】

として算出します。

そのため、日給制における残業代の計算方法としては、以下の計算式に当てはめて算出します。

【日給制の残業代=①日給制における基礎賃金・時間単価×②時間外労働の時間数×③割増率25%】

出来高払制(歩合制)の残業代の計算方法について教えてください。

出来高払制(歩合制)について残業代については既に説明したとおりですが、通常の残業代の場合と計算方法が異なる点に注意が必要です。

通常の残業代では、支給額を「所定労働時間」で割って基礎賃金・時間単価を算出するのに対し、出来高払制(歩合制)では、支給額を「総労働時間(所定労働時間+残業代)」で割って基礎賃金・時間単価を算出します。

こうして基礎賃金・時間単価を算出すれば、以下の計算式に当てはめて算出します。

【残業代=基礎賃金・時間単価×時間外労働時間×割増率25%】

年俸制の社員に対する残業代は、どのように計算したらいいでしょうか?

一般に、年俸制とは、賃金額・給与額を年単位で決定する制度をいいます。

例えば、一定時間の定額残業代(固定残業代)を織り込んで、年間の賃金額・給与額を決めて、年●●●万円などと労働者との間で合意することが考えられます。

このような年俸制であったとしても、時給制や日給制、月給制などのように、法定時間外労働が生じれば残業代を支払う必要があります。

では、年俸制において、残業代をどのように計算するかというと、まず、残業代の算定のもととなる基礎賃金・時間単価については、以下の計算式に当てはめて算出します。

【年俸制における基礎賃金・時間単価=年俸÷12か月÷1か月あたりの所定労働時間】

こうして年俸制における基礎賃金・時間単価を算出すれば、

【残業代=基礎賃金・時間単価×時間外労働時間×割増率25%】

という、これまで見てきた計算式に当てはめればよいです。

残業代の計算方法で不明な点があれば、労働問題に強い弁護士にご相談ください。

以上でみてきたように、フレックスタイム制、定額残業代(固定残業代)制や、裁量労働制、出来高払い制(歩合給)など様々な働き方に応じた残業代の計算の方法があります。

既に述べてきたように、残業代は、労働者にとって強い関心事であり、問題が発覚したときには、多くの労働者から多額の残業代を請求されたり、また、残業代も支払ってくれていない会社なのだということで労働者が会社から離れていきかねません。

そのため、残業代について、正しく計算されて支払われているかを今一度ご確認ください。残業代の計算にご不明な点やご不安な点があれば、労務管理に精通した弁護士に相談されることをおすすめします。

また、フレックスタイム制や定額残業代(固定残業代)制、裁量労働制等の働き方を採用している会社では、それらの働き方がそもそも制度として有効に設定できているかも重要ですので、この点についても確認するべきでしょう。これらの制度の導入の際にも、労務管理に精通した弁護士に相談されることをおすすめします。

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