労務

定額残業代(固定残業代)制に関する重要判決と時代の変化への対応

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介

監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士

  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

繁忙期などではどうしても残業が発生せざるを得ないこともあり、残業が発生した場合には、その残業時間に応じて残業代を支払うのが基本です。

ただ、会社として、個々の従業員の残業時間を把握して、いちいち残業代の計算の手間をかけたくはないと考えることもあるでしょう。特に、営業職や研究者、エンジニアなど労働時間を管理することが難しい職種では残業代の計算等が手間だなどと思われている方もいるかもしれません。

そのためか、近年、残業代の支払いを実際の残業時間によって支払うのではなく、「定額残業代(固定残業代)」として毎月定額で支払う制度を導入している会社が増えています。

しかし、定額残業代(固定残業代)の制度は、導入の仕方、内容を誤るとトラブルに発展し、会社にとって大きな損害となる可能性があります。

そこで、このようなトラブルを回避するために、定額残業代(固定残業代)を導入する際の注意点や、定額残業代(固定残業代)を導入するにはどうすればよいか、そもそも定額残業代(固定残業代)にはどのようなメリット等があるのか、などについて以下詳しく見ていきましょう。

目次

定額残業代(固定残業代)制の導入と懸念事項

まず、残業が発生した場合の割増賃金の計算については、労基法37条・労基則19条で計算方法が定められており、「通常の賃金の時間単価×時間外労働時間数×割増率」とされています。

つまり、時間外労働に対する割増賃金は、原則として、時間外労働の時間数に比例して支払われることが想定されています。

これに対して、定額残業代(固定残業代)とは、現実の時間外労働の有無や長短に拘らず、一定時間分の残業代金を予め定め、これを労働者に支給する制度とされています。

そのため、定額残業代(固定残業代)を導入すれば、一定時間分の残業をしていない場合にも、定額残業代(固定残業代)が支払われるため、労働者にはできるだけ早く仕事を終わらせて帰宅しよう、というインセンティブが働くのではないか、また、会社としても、残業時間の管理の手間が楽になるのではないかと考えて、定額残業代(固定残業代)を導入する会社が増えているようです。

以下、定額残業代(固定残業代)を導入するにあたってどのような点に注意しておくべきか、詳しく見ていきましょう。

未払い残業代請求における問題点

まず、残業代の未払いは、労基法37条により、会社には労働者の時間外労働等について残業代を支払う義務があるとされるため、労基法違反となります。

その上で、仮に労働者との間で残業代の未払いについて裁判になり、裁判所において残業代の未払いが悪質と判断された場合、本来の残業代の額と同額までの範囲で「付加金」という罰金のような金銭の支払いを命じられることがあります。

また、残業代については、在職中は「6%」、退職後は「14.6%」の「遅延損害金」がつきます。

このように、労働者と残業代の未払い等で裁判になってしまうと、「付加金」や「遅延損害金」の支払が加わり、本来の残業代の倍額以上の金銭の支払いを命じられる危険性がある点は十分に注意が必要です。

定額残業代(固定残業代)が無効とみなされた場合のリスク

残業代の未払いについては、会社にとって上記のとおりの危険性があるのですが、定額残業代(固定残業代)が無効とされた場合、会社にとって、支払うべきであった残業代以上にかなり増額された金銭の支払いを命じられるおそれがあるのです。

具体的には、定額残業代(固定残業代)が無効になると、残業代を一切払っていなかったことになってしまうため、割増賃金の算定基礎となる賃金に定額残業代(固定残業代)部分も加算されてしまうことに加え、上記でも触れた、罰金のような「付加金」や「遅延損害金」が上乗せされる可能性があります。

このように、定額残業代(固定残業代)が無効とみなされた場合のリスクはかなり大きく、その導入に当たっては、慎重に目的や内容等を検討していく必要があるものといえます。

定額残業代制が否定された場合の三重苦

定額残業代(固定残業代)に関する裁判例

定額残業代(固定残業代)に関してその有効性が争われることは多く、基本給に組み込まれた定額残業代(固定残業代)の有効性について判断を下した有名な裁判として、テックジャパン事件(最高裁平成24年3月8日判決)が挙げられます。

事件の概要

テックジャパン事件の概要としては、人材派遣会社に派遣労働者として勤務していた労働者Xが、平成17年5月から同18年10月までの期間における時間外労働に対する賃金と付加金の支払い等を求めて裁判を起こした事案です。

具体的には、当該Xの賃金については、基本給月額41万円とされていたのですが、契約上、月間総労働時間が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき追加で賃金を支払うが、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき賃金を控除する旨の約定がされていました(定額残業代(固定残業代)を組み込んだような基本給の内容です。)。

当該Xは、平成17年5月から同18年10月までの各月において、1週間当たり40時間を超える又は1日8時間を超える時間外労働をしていたため、退職する際に、未払い残業代等の支払を求めて訴えを提起しました。

裁判所の判断(事件番号 裁判年月日・裁判所・裁判種類)

原審は、Xは、本件雇用契約における給与の手取額が高額であり、標準的な月間総労働時間が160時間であることを念頭に置きつつ、それを20時間上回っても時間外手当は支給されないが、20時間下回っても基本給から控除されないという幅のある給与の定め方を受入れたものであり、Xの基本給には、月間総労働時間180時間以内の時間外労働に対する割増賃金が実質的に含まれていると判断しました。

しかし、最高裁は、以下のように判断して、原判決を破棄して原審に差戻しを命じました。

Xの契約によれば、月間の総労働時間が180時間以内の場合に時間外労働が行われても、基本給が増額されることはなく、月額41万円の全体が基本給とされており、割増賃金と区分されていなかった上、割増賃金の対象となる時間外労働の時間は、月によって相当大きく変動し得るものであることから、月額41万円の基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することができない。

そのため、月額41万円の基本給の支払を受けたとしても、その支払によって、月間の総労働時間が180時間以内の場合の時間外労働について割増賃金が支払われたとすることはできず、会社は、Xに対し、月間総労働時間が180時間以内の場合の時間外労働についても、月額41万円の基本給とは別に、割増賃金を支払う義務を負うものと解するのが相当である。

最高裁としては、当該契約において、①「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分との明確な判別ができること」(以下、「賃金と割増賃金との明確な判別」といいます。)を要求し、明確に判別できない場合には定額残業代(固定残業代)の有効性を否定するという判断を示しました。

重要視される補足意見

テックジャパン事件における法廷意見(多数意見)は上記のとおりですが、櫻井裁判官が、定額残業代(固定残業代)制について、以下のような補足意見を出しています。

便宜的に毎月の給与の中にあらかじめ一定時間(例えば10時間分)の残業手当が算入されているものとして給与が支払われている事例もみられるが、その場合は、その旨が雇用契約上も明確にされていなければならないと同時に、支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されるべきで、10時間を超えて残業が行われた場合には当然その所定の支給日に別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにされていなければならないと解すべきと思われる。

このように、補足意見では、上記①「賃金と割増賃金の明確な判別」に加え、②「給与等の中に固定残業代が含まれている旨が雇用契約上も明確にされていること」、③「支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていること」が必要としており、参考にすべきものといえます。

ポイントと解説

本判決のポイントとしては、最高裁が、基本給に組み込まれた定額残業代(固定残業代)の有効性について上記①「賃金と割増賃金との明確な判別」を要求した点でしょう。

そもそも、賃金の額や計算方法については、最低賃金法や労基法に反しない限り、当事者の合意で決められる事項であり、定額残業代(固定残業代)についても法で求められている割増賃金額を上回っているならば有効であり、割増賃金として適正に支払われているという扱いになるかと思われます。

ただし、本判決を踏まえると、①「賃金と割増賃金との明確な判別」が要求され、このような判別が出来ない場合には、定額残業代(固定残業代)制度の有効性自体が否定されかねないと思われます。

そのため、会社として、残業代は「基本給に含まれている」などという主張は、ほとんど通用しないのではないかと思われるので、注意すべきでしょう。

定額残業代(固定残業代)制が有効となるための要件

上記テックジャパン事件で見たとおり、定額残業代(固定残業代)については、当該契約において、①「賃金と割増賃金との明確な判別」が必要不可欠です。

また、定額残業代(固定残業代)が割増賃金として支払われたといえるために、②定額残業代(固定残業代)が労基法37条の要求する法定の割増賃金を下回らないことも必要となるでしょう。

さらに、補足意見で述べられていた、③給与等の中に固定残業代が含まれている旨が雇用契約上も明確にされていること、④支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていることも必要不可欠とまではいえませんが、可能であれば備えておくべきでしょう。

定額残業代(固定残業代)制に関するQ&A

「定額残業代(固定残業代)」と「みなし残業代」の違いを教えてください。

定額残業代(固定残業代)とは、これまで述べてきたとおり、現実の時間外労働の有無や長短に拘らず、一定時間分の残業代金を予め定め、これを労働者に支給する制度とされています。

みなし残業代は、一般的に、定額残業代(固定残業代)と同じ意味で用いられていることが多いです。

定額残業代(固定残業代)制を導入するメリットを教えてください。

定額残業代(固定残業代)制を導入するメリットとしては、(1)会社経営にあたっては、大きな部分を占める人件費について、残業代込みで人件費を予算化して経費を予測しやすくする点、(2)労働者については、時間意識を持たせ、仕事の能率を上げたり、給与の安定性をもたらす点があるかと思います。

特に、(2)について、定額残業代(固定残業代)制度を採り入れることで、個々の労働者がコントロールできない会社の業績や繁閑にかかわらず、労働者の収入の変動が少なくなり、労働者の労働環境を良くすることにつながるものかと思います。

上記のようなメリットがある一方で、定額残業代(固定残業代)制を導入するとしても、上記で見たとおり、①「賃金と割増賃金との明確な判別」、及び、②定額残業代(固定残業代)が労基法37条の要求する法定の割増賃金を下回らないこと、の確認は必須であり、その意味で、時間外労働の管理がなくなることはないといえます。

また、②から分かるとおり、定額残業代(固定残業代)を支払っておけばいくら残業させても良いという用い方も当然ながら出来ない点は十分に留意しておく必要があります。

定額残業代(固定残業代)が有効と判断されるために、就業規則にはどのように定めるべきでしょうか?

これまで見てきたとおり、定額残業代(固定残業代)が有効とされるために、①「賃金と割増賃金との明確な判別」、②定額残業代(固定残業代)が労基法37条の要求する法定の割増賃金を下回らないことが必要不可欠といえます。

そのため、就業規則(給与規程など)においては、(1)基本給と定額残業代(固定残業代)とを分けて記載すること、(2)定額残業代(固定残業代)の金額、何時間分の残業代を含むか、を明記すべきことは当然であり、その上で、(3)定額残業代(固定残業代)が割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであること、(4)実際の時間外労働割増賃金の額が、定額残業代(固定残業代)を上回った場合には「差額を支給する」旨も記載しておくべきものと思います。

また、有効性とは必ずしも関係ありませんが、(5)定額残業代(固定残業代)制度の導入目的(仕事の能率を上げる、意欲的に働く者へのインセンティブ等)も記載して、労働者にきちんと制度の趣旨・目的を伝えるようにし、労働者の労働環境を良くする点を周知できれば良いかと思います。

定額残業代(固定残業代)制の残業時間の上限について、法律上の規定はありますか?

100時間という長時間の残業を前提とした定額残業代(固定残業代)の制度を無効とした裁判例があります。

例えば、マーケティングインフォメーションコミュニティ事件(東京高裁平成26年11月26日判決)では、おおむね100時間もの時間外労働に相当する営業手当について、割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分についての区別が明確となっていないことのほか、36協定の延長限度額に関する基準において月45時間が労働時間の上限と定められていることに照らし、100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものであること等を理由として、営業手当の支払が割増賃金の支払であることを否定しました。

時間外労働を行わせるには労基法36条における通称36(サブロク)協定を締結することが必要であり、この36協定では、原則、月45時間が時間外労働の限度とされていることが、この裁判例では考慮され、定額残業代(固定残業代)において残業時間が45時間を超えるべきではないとされたものと思われます。

そのため、定額残業代(固定残業代)制においても、想定する残業は、月45時間以下にすべきといえるでしょう。

給与明細書で定額残業代(固定残業代)の金額を明記することは、残業代の支払いとして有効となりますか?

給与明細書に、定額残業代(固定残業代)の金額だけを明記しておくだけでは足りないと思われます。 これまで見てきたとおり、定額残業代(固定残業代)が有効とされるために、「賃金と割増賃金との明確な判別」が必要不可欠といえます。

そのため、定額残業代(固定残業代)を支給する場合は、「残業手当」「時間外勤務手当」等、それが割増賃金であることが給与明細書の記載から直ちに分かるよう記載しておくべきです。割増賃金であることが明白な名目・内容で支給することにより、労働者の納得も得られやすくなり、それが残業代の支払であるか否かといったトラブルを回避することができます。

他方で、「営業手当」等、その名目から割増賃金あるとは推認できないものについては、日本ケミカル事件(最高裁判決平成30年7月19日)が参考になり、労働契約の内容を具体的に検討して、当該手当が定額残業代(固定残業代)として払われていると評価できること、それと実際の時間外労働に対する残業代と定額残業代(固定残業代)に大きな乖離がないことが必要になると思われます。そのため、就業規則(賃金規程等)に当該手当が割増賃金である旨明記したり、労働契約書にその旨明示しておかなければ、定額残業代(固定残業代)が割増賃金であると認めてもらえないこともあるでしょう。

そのため、給与明細には、定額残業代(固定残業代)の金額だけでなく、「残業手当」「時間外勤務手当」等、まずは、割増賃金であることが分かるような記載をしておくべきです。

雇用契約書に定額残業代(固定残業代)について明記していなかったのですが、後から記載しても問題ないでしょうか?

まず、労基法第15条により、一定の労働条件について書面で明示することを会社に義務付けられており、当然ながら、始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇や、賃金の決定、計算・支払い方法、賃金の締切り・支払いの時期などの条件の明示が求められており、雇用契約書等への記載は必須です。

そもそも、定額残業代(固定残業代)制を導入したけれども、契約書に明記していなかった場合には、就業規則に定額残業代(固定残業代)の記載があり、周知できていたか、給与明細書等でどのように表記していたかをまず気にするべきです。その上で、契約書の記載内容の変更についてきちんと労働者に説明をし、納得を得てから記載を変更し、説明を受けたことの同意書や場合によっては新しい契約書の取り交わし等をすべきでしょう。

法定の割増賃金が定額残業代(固定残業代)を上回った場合、その差額分はいつまでに支払う必要がありますか?

労基法37条により、時間外労働で働いた分は、法定の割増賃金を支払う必要があるとされています。

そのため、法定の割増賃金が定額残業代(固定残業代)を上回った場合、法定の割増賃金に充つるまで差額を精算する必要があり、これは基本的に当月分の給与の支給の際に精算すべきです。

これは、残業代を含めた賃金が、労基法24条の「賃金全額払いの原則」により、支払うべき時期に全額を精算することが要請されているためです。

仮に、残業代の支払の遅滞が生じた場合には、既に見てきたとおり、「付加金」や「遅延損害金」を付して支払わなければならなくなるリスクがあることも注意すべきです。

法定の割増賃金と定額残業代(固定残業代)の差額を支払わない場合、罰則などはあるのでしょうか?

既に述べたとおり、労基法37条で、法定の割増賃金を支払うことが要請されており、定額残業代(固定残業代)を上回る時間外労働をした場合には、当然ながらその差額の精算が必要になります。

そのため、差額の精算を行わない場合には、労基法37条の違反となり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の対象となります。

もちろん、たった一回の違反で直ちに刑事罰まで受けることは考えにくいですが、労基署から是正するよう求められても何ら是正せずに違反を繰り返すような場合は、最終的に刑事責任まで問われる危険性もあるので、十分に注意するようにしてください。

派遣社員へ定額残業代(固定残業代)制の導入する場合、労働条件の明示は派遣先企業が行うことになるのでしょうか?

労働者派遣とは、派遣会社が雇用する労働者(派遣労働者)を、派遣先企業に派遣して、派遣先企業の指揮命令の下に就業させる形態です。

そのため、派遣労働者の雇用関係は、派遣元との間で結ばれますが、派遣先企業との雇用契約は基本的にないことになります。そうすると、派遣社員へ定額残業代(固定残業代)制の導入する場合、労働条件の明示は派遣会社(派遣元)が行うことになるでしょう。

定額残業代(固定残業代)制の金額は明示していませんが、「基本給に1か月15時間分の残業代を含む」と記載しています。残業代の支払いとして認められますか?

定額残業代(固定残業代)については、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分との明確な判別ができるかが重要になりますので、金額も明示しておくべきでしょう。

ただし、定額残業代(固定残業代)の時間を超えて残業した従業員もいるなど、定額残業代(固定残業代)の金額と時間数については、各従業員の残業状況によって異なることがあるでしょうから、給与明細書に記載することをおすすめします。

定額残業代(固定残業代)制を廃止する際に、労働者の同意は必要ですか?

定額残業代(固定残業代)制の廃止については、労働者にとって、現実の収入が減る面があるものと思います(残業していなくても定額残業代(固定残業代)はもらえていたなど)。

そのため、定額残業代(固定残業代)制の廃止の場合には、労働条件の不利益変更にあたりうるものとして、労契法9条にあるように、基本的に労使間の合意のもとで行う必要があるものと思います。

労契法10条にあるように、たしかに、変更の合理性、就業規則の周知等の条件を充たせば、労働者との合意が得られていなくても、労働条件の不利益変更は可能であるのですが、会社側としては、労働者に説明を尽くして、まずは労働者の同意を得られるようにすべきでしょう。

定額残業代(固定残業代)と実際の残業代との差額を翌月以降に繰り越すことは可能ですか?

既に述べてきたとおり、労基法37条により、時間外労働で働いた分は、法定の割増賃金を支払う必要があるとされており、かつ、労基法24条において、「賃金全額払いの原則」として、支払うべき時期に全額を精算することが要請されているため、基本的に当月分の給与の支給の際に精算すべきです。

仮に、残業代の支払の遅滞が生じた場合には、既に見てきたとおり、「付加金」や「遅延損害金」を付して支払わなければならなくなるリスクがあることも注意すべきです。

労務管理は時代の変化へ柔軟に対応する必要があります。定額残業代(固定残業代)制に関する労使トラブルを回避するためにも、弁護士に依頼することをお勧めします。

これまで見てきたとおり、定額残業代(固定残業代)制を導入するメリットとしては、(1)会社経営にあたっては、大きな部分を占める人件費について、残業代込みで人件費を予算化して経費を予測しやすくする点、⑵労働者にとっては、定額残業代(固定残業代)制度を採り入れることで、個々の労働者がコントロールできない会社の業績や繁閑にかかわらず、労働者の収入の変動が少なくなり、労働者の労働環境を良くすることにつながるものである点が挙げられます。

しかし、他方で、これまで見てきたとおり、導入に当たっての注意点やリスクなども多くあります。具体的に定額残業代(固定残業代)制の導入を検討されている企業の方は、一度、労務管理に精通した神戸法律事務所の弁護士にぜひご相談ください。

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介
監修:弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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