監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
遺産分割協議が成立してしまった場合、その内容に不服が生じたとしても、原則として遺産分割協議のやり直しを行うことはできません。
しかし、例外的に遺産分割協議のやり直しが認められる場合があります。
そのため、本記事では、相続問題、遺産分割問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、どのような場合にやり直しができるのか、またその際の注意点はどのようなものが考えられるのかについて解説を行います。
目次
遺産分割はやり直しができるのか
遺産分割協議が成立してしまえば、その後にやり直しを行うことは、原則できません。
一旦、合意して遺産分割協議が成立した以上、その合意内容に従って財産の帰属が決まるため、そのやり直しを認めると法的な安定性が害され、紛争の蒸し返しになってしまうからです。
もっとも、例外として、
①相続人全員の同意がある場合
②遺産分割協議に無効・取消事由があった場合(一部の相続人が参加していないなど)
③遺産分割協議後に他の遺産が見つかったときに、その財産が当初から判明していれば、従前の遺産分割は行わなかったといえる場合
には、遺産分割の再協議が可能となるものといえます。
なお、遺産分割協議については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
遺産分割協議とは遺産分割後に他の財産が見つかった場合
上記③に関連して、遺産分割協議後に他の遺産が見つかった場合、基本的には新たに見つかった相続財産についてのみ協議を行います。そのため、遺産分割協議後、単に他の遺産が見つかっただけであれば、従前の遺産分割協議のやり直しはできません。
もっとも、上記③のとおり、他に判明した遺産が、遺産分割協議の当初から見つかっていたならば、従前の遺産分割協議を成立しなかった等の事情がある場合には、遺産分割協議の錯誤取消しや無効等の主張を行うことで、再度遺産分割協議を行える可能性があります。
遺産分割のやり直しを行う場合に期限や時効はある?
後述する取消権のように消滅時効が存在するものを除き、相続人全員の同意に基づいて再度遺産分割協議を行う等の場合には、遺産分割のやり直しを行うことについて期限や時効はありません。
取消権には時効があるので注意が必要
遺産分割協議を行った際に、錯誤や詐欺、脅迫があったことを理由に、遺産分割協議の取消しを主張する場合、取消権は、取消の原因となった状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知ってから5年以内に行使しなければ消滅してしまうため、注意が必要です。
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遺産分割をやり直した場合の注意点
遺産分割を再度やり直す場合の注意点について、以下解説します。
やり直し前に第三者へ譲渡していた場合
遺産分割協議後、遺産分割のやり直しを行う前に、第三者へ遺産の譲渡がなされた場合、原則としてその財産は第三者から取り戻すことはできません。当該第三者からすれば、遺産分割のやり直しという偶然の事情によって財産をはく奪されるいわれはないためです。
ただし、例外として、第三者が、詐欺の事実等を知った上で譲り受ける場合等には、認められることもありますが、非常に珍しい事例といえます。
不動産の名義が変わった場合
遺産分割協議をやり直したことで、不動産の名義人が変わった場合には、不動産登記の名義変更が必要となります。
従前遺産分割協議に基づいてなされた不動産登記を抹消し、再度なされた遺産分割協議で定まった内容に従った相続登記をする必要があります。
そして、所有権抹消登記や相続登記などを行う際に、登録免許税の額がかかります。
なお、「相続登記」については以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
相続登記とは課税対象となる場合がある
遺産分割協議のやり直しを行う場合、新たな処分行為となり、税務上はある相続人から他の相続人への財産の譲渡もしくは無償の譲渡が行われたとして、所得税又は贈与税が課されるおそれがあります。
1度目の遺産分割が当初から無効であったかどうかについては、民法の規律により判断することになりますが、あくまでも課税段階では、税務署が判断することになりますので、注意が必要です。
遺産分割をやり直す際の期限について弁護士にご相談ください
遺産分割協議が一旦成立した後に、遺産分割協議のやり直しを行うことは簡単なことではありません。
上述したとおり、全ての相続人の同意を得る必要があることや、それ以外の方法であれば、無効等の事情を適切に主張しなければならない等、様々な障壁・ハードルがありますし、また、やり直すとなっても、第三者との関係や税務上の問題等も生じるおそれもあります。
そのため、遺産分割協議のやり直しを行いたいと考えられた場合には、まずは、相続問題、遺産分割分割問題に精通した弁護士法人ALG神戸法律事務所の弁護士にご相談されることをおすすめします。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)