監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
同じ家に暮らす配偶者から日常的に「モラハラ(モラルハラスメント)」を受けるのは、非常に辛く、時に精神や身体に支障を来すおそれさえあります。
もっとも、直接の暴力等を受けてはいないことから、「自分さえ我慢すれば」、「私が悪いのではないか」や「そんなに酷いことをされているわけではないのではないか」等と、思ってしまうこともあるかと思います。
このようなモラハラでの被害について、放置していると、気づいた頃には離婚のために動く気力さえない状態になったり、病気になってしまうこともあり、大変危険な状態となってしまいます。
そのため、本記事では、離婚問題、ハラスメント問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、モラハラの配偶者の特徴や離婚する場合には、どのような点に注意する必要があるかについて紹介していきますので、ぜひご参照ください。
目次
モラハラ配偶者が離婚に応じない理由
一方の配偶者がモラハラをしている場合には、すんなりと離婚が成立するとは限りません。むしろ、モラハラ被害を受けている側から離婚を申し出ても簡単に応じてくれないことが多いので注意が必要です。
以下、具体的に見ていきましょう。
なお、モラハラにより離婚できるかなどについては、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
プライドが高い
モラハラを行うタイプの一般的な傾向として、プライドが高いということが挙げられます。
プライドが高いため、周りの目や世間体を気にしますし、自身の意に沿わないことをされると我慢ができず、より支配的になると考えられます。
そのため、プライドの高さ故に、配偶者から離婚を突き付けられた場合に、周りの目や世間体から離婚なんて応じられるはずがないと思ったり、自身の意に沿わない行動を取られることに耐えられず、絶対に離婚には応じないという強固な対応をしてくるのかもしれません。
自分に自信がない
モラハラを行うタイプの一般的な傾向として、自分に自信がないということも挙げられます。
上述したプライドの高さも、この自分への自信のなさからきている可能性もあります。
自分に自信があるのであれば、世間体や相手が自分の意に沿わないという程度のものに揺るぎませんし、相手を支配やコントロールしようとはしません。
自分に自信がなく、相手に依存して縋りつくために、離婚をつきつけられたときに、パニックに陥っているのかもしれません。
そして、自分自身が捨てられてしまうという事態に耐えられないため、離婚に応じないという態度をとると考えられます。
自分が正しく、離婚請求される理由がないと思い込んでいる
モラハラを行うタイプの一般的な傾向として、自分が正しいと思っていることが挙げられます。
モラハラを行うタイプは、上記のとおり、自分自身に自信がなく、プライドが高いため、外からどのように見られるかを気にして生きている人が多く、そのため社会的地位を得ている人が多いです。
社会的地位を得ていて、その外面の良さから第三者からは一定の信頼もされているため、そんな自分が間違っているはずがない、おかしいのはそっちだというように、自身が配偶者に対して支配的であり、配偶者を追い詰めていることにそもそも気づいていないという場合もあります。
モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段
それでは、上記したようなモラハラ加害者に対して、離婚を申し出ても、離婚してくれない場合にはどのようにすべきか、以下見ていきましょう。
証明できる証拠を集める
モラハラの配偶者が離婚してくれない場合には、しっかりと相手がしてきたことを客観的に証明できる証拠を集めておきましょう。
離婚の話になった場合に、モラハラがあったと単に主張するだけでは、水掛け論になります。
また、モラハラを行った側はそもそも自身が悪いことをしたという自覚さえなく、忘れている可能性もありますし、やった本人が記憶している行為と実際の行為がずれている可能性もあります。
客観的な証拠を集めておけば、モラハラ配偶者に客観的にどれ程ひどいことがあったのか突き付けることができますし、調停等になった場合に第三者に示すこともできます。
なお、モラハラにおける証拠については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
別居してみる
モラハラの配偶者と離婚したい場合、自身の精神的な安定のためにも別居することを検討されていはいかがでしょうか。
別居は、モラハラを行うような配偶者と物理的に距離が取れるという利点があります。
また、モラハラの配偶者が頑として離婚に応じず、やむを得ず訴訟となった場合に離婚を認めさせやすくなるという意味でも別居をおすすめします。
これについて、モラハラがあったというだけでは、婚姻関係が破綻していたとまではいえず、訴訟による離婚の要件を満たさないため、モラハラの事実のみで離婚をすることは困難です。ただ、別居期間が長期に渡れば、婚姻関係は破綻しているとして離婚が認められる可能性はあります。
なお、離婚案件における「別居期間」については以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
子供がいる場合
ただし、別居しようとしても、子供がいる場合には、子供の幼稚園や学校等の学区の関係や、そもそも一緒に連れて行ってしまったら後々「子の連れ去りだ」と言われるのではないかと、子を連れて別居することについて悩むところが多くあると思います。
ただ、モラハラをする配偶者は、子に対しても精神的な負担をかけたり、暴力を振るう可能性も否定できないといえますし、これまでモラハラを受けてきた側の親が子の主たる監護者であった場合には子をおいて出ていくことも問題だといえます。
この点については、非常に判断が難しいところといえますので、一度、弁護士等の専門家にご相談ください。
なお、子供がいる場合の別居については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
経済的に不安な場合
別居するとなると、別居するための引っ越し代等のお金がかかったり、別居後の生活費をどうしていくか等、様々な経済的不安が浮かんでくると思います。
これについては、引っ越し先について、もし実家に頼れるのであれば、実家に話を通しておいてしばらく実家に住む等して少しでも経済的な負担を減らしたり、モラハラ配偶者に対して婚姻費用の請求を行う等をすることをおすすめします。
なお、「婚姻費用」の請求については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
弁護士等、第三者に相談する
モラハラの配偶者と長期間接していると、共依存となる可能性もあり、自分自身でもモラハラをされているのかということ自体気づけない可能性もあります。
そのため、少しでも「あれ?もしかしておかしいのかな?」と思うことがあれば「私が悪いから仕方ない」等と思わず、信頼できる友人等に相手の言動がおかしくないか相談してみてください。
また、弁護士等の専門家に相談することで、相手の言動の異常性や、その事実を踏まえてどのように対応すべきかなど一緒に考えていくことができますので、相談していただければと思います。
モラハラ夫と離婚の話し合いをする際の注意点
それでは、モラハラをする夫がいる場合を想定して、まずは、夫婦間で離婚についての話し合いをしようと考えている方に向けて、話し合いをする際の注意点について詳しく見ていきましょう。
相手の一時的な態度に騙されない
相手は、あなたと別れたくないという一心で、強く怒ってみたり、びっくりするくらい優しくなったり、泣いて謝る等してきます。
ただ、これは、本当に一時的なものであることが多いです。
その瞬間は本心で謝っているかもしれませんが、それは、どうにか離婚せずに済むようにしたいという動機でしかないため、長くは続きません。
時間が経てば、またモラハラが再開するおそれも十分に予想できるため、このような相手方の一時的な態度には注意が必要です。
話し合いは第三者に介入してもらう
モラハラの配偶者と長期間一緒にいた場合、支配被支配の関係性ができあがってしまっており、共依存化している等、双方の長年の関係性から当事者同士での話し合いが困難となってしまっている可能性も高いです。
最悪、双方の感情が昂ぶってしまった場合に、暴力等に及んでしまうことも否定できないため、身体の安全のためにも当事者のみで話し合いを行うことは得策とはいえません。
そのため、話合いを行う際は、第三者に介入してもらうことをおすすめします。
法的な道筋が必要であればその専門家である弁護士、心理的な介入が必要なのであれば医師やカウンセラー等に相談することをおすすめします。
第三者がモラハラ配偶者の外面の良さに騙されてしまうことも…
上述したとおり、モラハラの配偶者は世間体を気にする傾向があることから、社会的地位が高く、外面が良い傾向にあります。
そのため、第三者に介入してもらったとしても、その第三者がモラハラの配偶者の外面に騙されてしまう可能性は否定できません。
そのため、介入を依頼する第三者は、モラハラを行う人の傾向を知っている人や、弁護士や医師等の専門家を選ぶことをおすすめします。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚してくれないモラハラ配偶者との離婚に成功した事例
モラハラを理由として離婚についての話し合いをしても、相手が応じてくれないケースも多いです。
そのような相談を弊所でも受けることは多く、そういったケースの解決事例としては、まずは別居を行ってもらったた上で、弊所の弁護士をつけて、相手方に対して婚姻費用を請求する調停及び離婚調停を申し立て、調停の場で第三者を介して話合いを継続させたことで、相手方は、こちら側の強い離婚意思を知って、復縁することを諦めたことで、離婚に応じた事例等が挙げられます。
この場合、別居期間が、訴訟で婚姻関係が破綻していると認められる期間よりも短期間であり、訴訟となれば離婚が認められないものであっても、相手方が諦めて、弁護士が入ったことで修復は不可能であると諦めて離婚に合意することで離婚することができたといえます。
モラハラ離婚に関するQ&A
それでは、モラハラの離婚についてよくある質問と回答を取り上げたいと思います。
うるさく言うのは私のためだと言ってモラハラを正当化し、離婚してくれません。離婚できないのでしょうか?
結論として、相手方が離婚に合意すれば離婚はできます。もっとも、相手方が離婚に応じない場合には、このモラハラの事実のみでは離婚は困難です。
上述したとおり、相手方が協議や調停で離婚に応じない場合には、訴訟をする必要があります。
もっとも、訴訟による離婚は、婚姻関係が破綻していることが認められないと、認められません。
これについて、モラハラの事実のみで婚姻関係の破綻が認められることは困難であるため、数年間別居するなどする必要があります。
相手のモラハラに耐えられず不倫したことがばれました。それでも離婚してくれない場合、どうすればいいでしょうか?
結論として、あなたからの離婚の請求ができなくなる恐れがあります。
あなたにとっては、モラハラに耐えられずに行った不貞だったとしても、裁判となった際に、裁判官が「そうはいっても、不貞したのはそっちだから、有責性はあなたにあるでしょ」と考える可能性は十分にありますし、あなたが有責配偶者とされるおそれがあります。
そうなってしまった場合には、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められていません(例外的に認められる場合にも、ハードルが著しく上がる)ので、ますます離婚することはが困難となります。
「有責配偶者」の離婚については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
有責配偶者との離婚について
モラハラ配偶者が離婚してくれない等、お困りの場合は弁護士へご相談ください
これまでご説明したとおり、モラハラを原因として離婚をする場合には、モラハラの配偶者に対して、こちらの強い離婚意思を伝えるためにも、しっかりと証拠を集めた上で、調停等を行っていく必要があります。
もっとも、相手方がそれでも離婚に応じない場合には、訴訟を行う外ないところ、訴訟においてモラハラを理由とする離婚はなかなか認められない傾向にあります。
そのため、モラハラで離婚を考えている場合には、証拠の集め方、別居のタイミング、調停での主張方法など、しっかりと計画を立てていくことが重要となります。
これらの計画は、ただ闇雲に立てるのでは意味がなく、法的な知識等も駆使して具体的に考えていく必要があるため、法律の専門家である弁護士に早い段階で相談することをおすすめします。
弁護士法人ALG神戸法律事務所には、離婚問題、ハラスメント問題に精通した弁護士が在籍しておりますので、一度お気軽にご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)