モラハラの証拠として有効なもの

離婚問題

モラハラの証拠として有効なもの

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介

監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士

夫(妻)から「モラハラ」を受け続け、離婚を考えている方は少なくないでしょう。
「モラハラ」とは、法律上明確な定義があるわけではないですが、「お前はバカだ」「家事もろくにできない」などと侮辱する発言や、「友人と会うことを禁止する」など異常な束縛、無視し続ける、細かくミスを指摘するなど、物理的暴力を振るうのではなく、精神的に相手を追い詰める等の家庭内におけるいじめのことをいいます。

ただ、モラハラ加害者は「モラハラ」をしている自覚がない者が多いため、離婚を切り出したとしても、拒否される可能性が高いといえます。そこで、相手と離婚するためには、「モラハラ」を受けている証拠を集めることが必要となります。
本記事では、離婚問題、ハラスメント問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、モラハラで離婚するために必要な証拠やその集め方、証拠を集める上での注意点、証拠がない場合の対処法などについて解説していきます。

モラハラ加害者と離婚したい場合は証拠を用意しておく

モラハラ加害者が離婚に合意してくれるならば、モラハラの証拠がなくても離婚することが可能です。
もっとも、調停を含めた話合いで合意に至らない場合には、訴訟において「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)等の法定離婚事由が存在することを証明する証拠が必要となります。法定離婚事由に該当する程のモラハラが認定される場合には、裁判によって離婚することが可能です。

もっとも、「モラハラ」は、家族間という閉鎖的な空間で行われたり、目に見えない暴言や態度で行われたりすることから、客観的な証拠を集めるのは困難な性質があります。また、裁判所で、モラハラの存在は認められたとしても、その程度等が「婚姻を継続し難い重大な事由」にまで至っていないと判断される可能性もありますので、離婚事由が「モラハラ」だけである場合には、当事者間の合意で離婚を目指すことが得策ともいえます。

もっとも、「モラハラ」についての証拠を集めておいた方が、当事者間の協議や調停での話し合いの際に相手方が言い逃れができず、話し合いを有利に進められる可能性がありますので、モラハラの証拠を収集しておくのは、離婚を目指すにおいて有効な手法といえますので、集められるだけ集めておくことをおすすめします。 「モラハラ」での離婚については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

モラハラを理由に離婚できる?

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モラハラの証拠として有効なもの

それでは、誰が見てもモラハラがあったとわかる「客観的な証拠」とはどのような証拠なのでしょうか?
モラハラの証拠として有効なものとして、以下のようなものが挙げられますので、ご確認ください。

モラハラの内容を記載した日記やメモ

モラハラの内容を書いた日記やメモは、モラハラを証明する証拠となり得ます。
この場合、手書きでも、パソコンやスマホ等のデジタル記録でもどちらでもOKです。モラハラを受けたらすぐに、日記やメモに日付と共に記録しておきましょう。また、手書きの場合は、改ざん疑い防止のため、消せないボールペンで書くのが望ましいでしょう。
また、LINEのkeepメモなどに日々のモラハラを記録しておけば、書き込んだ内容が日付や時間とともに残るため、有益です。

証拠になる日記の書き方

日記は簡単に作成できる方法ですが、作成者の主観を記載したり、作成者が虚偽の内容を記載することもできるため、客観性に乏しいというデメリットがあります。そのため、モラハラを受けたら、できる限り具体的な事実を記録する必要があります。例えば、以下のことを書いておくのが望ましいでしょう。

  • モラハラされた日時や場所
  • モラハラされた経緯やモラハラの具体的な内容
  • モラハラをされた時の感情
  • 当日起きたモラハラ以外の出来事など

また、モラハラの常習性を証明するためや、日記の信用性を上げるためにも、日記は1回だけでなく、継続して書くことが必要です。
なお、後から書き加えると、改ざんを疑われるおそれがあるため、一度書いた日記の内容は後から手を加えないよう注意しましょう。

モラハラの現場を録音・録画したデータ

モラハラの現場を録音・録画したデータは、モラハラを証明する証拠となり得ます。
日常的にモラハラが行われているならば、ICレコーダーやスマホなどを使って、会話を録音・録画しておきましょう。モラハラは突発的に起こることが多いため、事前に録音の準備をしておき、録音する際は相手に気づかれないよう工夫することが必要です。

また、録音の際は、一部始終がわかるように、モラハラ前後の会話内容もすべて録音しておきましょう。モラハラの常習性の証明のため、1回だけでなく繰り返し録音しておくことも重要です。
なお、夫婦間の会話を相手の了承なく録音・録画したとしても、モラハラの証明が目的である限り、プライバシー侵害にはあたらず違法とはなりませんので、ご安心ください。

モラハラ夫(妻)から届いたメールやSNS、LINE

モラハラ夫(妻)から届いたメールやSNS、LINEのモラハラを証明する証拠となり得ます。日記やメモと違い、相手が一度送信したものを後から修正することが難しいため、比較的、信用性の高い証拠となります。削除せずに保存しておくようにしましょう。

例えば、相手のメールに「お前は無能だ」「料理も掃除もまともにできない」「土日は出かけてはいけない」「お前の両親や友人は皆クズだ」などの暴言が書かれていたならば、「モラハラ」の証拠として使える可能性があります。

メールやLINEのやり取り、SNSの投稿を保存する方法として、①印刷する、②画面ごとカメラで撮影する、③スクリーンショットして保存する、④クラウドなどを利用してサーバー上に保存する等が挙げられます。

医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴

モラハラを受けて、うつ病やパニック障害などの精神的な病が生じ、精神科や心療内科を受診した場合、医師の診断書や通院履歴は、モラハラによって精神的な損害を受けたこと等を証明する証拠となり得ます。

ただし、医師の診断書は、モラハラが原因で精神疾患を患ったことが証明できなければ、証拠力として弱いです。そのため、医師の診察を受ける際は、モラハラによって精神的な病が生じた事実を医師に詳細に伝え、その旨を診断書やカルテに記載してもらうことが大切です。

親族や友人等、第三者の証言

親族の集まりや、自宅に友人を招いたときに、夫(妻)が親族や友人がいる前で、モラハラ発言をしたのであれば、彼らの目撃証言もモラハラを証明する証拠となり得ます。
目撃証言は、「陳述書」という文書にして、調停や裁判の際に、裁判所に提出する方法もあります。
ただし、この場合には、裁判で証人として出廷する必要があり、モラハラ加害者や代理人から反対尋問を受ける可能性もあるため、協力を求める際にはこのリスクを説明しなければなりません。

警察・モラハラの専門機関への相談履歴

配偶者からモラハラを受け続けている場合は、我慢することなく、モラハラの専門機関(配偶者暴力相談支援センター、婦人相談所、女性センター、福祉事務所など)や警察署に相談するようにしましょう。これらの機関に相談すると、相談内容が記録として残されるため、相談記録がモラハラの有効な証拠となります。相談記録の開示請求を行い、そのコピーを入手すれば証拠として使用可能です。

なお、これらの相談記録は、離婚裁判で有力な証拠となるだけでなく、モラハラ被害者に対する接近禁止命令やシェルター利用の要件となるため、重要なものです。

証拠を集める上での注意点

モラハラの証拠を集める上での注意点として、以下の2点が挙げられます。

いつでも録音できるようにしておく

モラハラは言葉で行われることが通常であるため、証拠を集めるうえでは、録音するのが有益な手段といえます。また、録音を行うことで、相手の語調等も記録に残ります。
モラハラは突発的に行われることが多いため、モラハラが始まったら、すぐにICレコーダーやスマートフォンの録音を開始できるよう、準備しておくことが必要です。ただ、モラハラをされている最中に、モラハラ加害者の目の前で録音するのは困難ですので、あらかじめICレコーダーやスマートフォンをポケット等に入れておき、常時録音の状態にしておくのが望ましいといえます。

データのバックアップを取っておく

モラハラの録音データは、相手にばれて削除されてしまう危険があります。また、デジタルデータは機械の不具合で消えることもあるので、バックアップを取っておくことが重要です。CD‐RやSDカード、パソコンのHDなどに複数バックアップを取って、保存しておきましょう。

ただし、これらの媒体自体を相手に発見されて、捨てられてしまう可能性もあります。そのため、できれば、クラウドサービスなどを利用して、ネットワーク上のフォルダにもデータを保存しておくのが万が一の備えとして安心です。

どうしてもモラハラの証拠が集められないときは

色々手を尽くしたものの、どうしてもモラハラの証拠が集められないときの対処法として、以下の方法が挙げられます。

  • 別居する
    別居期間が長くなるほど、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると裁判所から判断され、離婚が認められる可能性が高まります。離婚が認められる別居期間は、夫婦の個別事情により異なるため一概に言えませんが、約3~5年と考えられます。
    ただし、相手に何も言わず出ていかないようにしましょう。悪意の遺棄であるとして、離婚の際に有責配偶者となるおそれがあるからです。出ていく際は、置き手紙やメール等で別居の意思を伝えることが必要です。
  • 弁護士に相談する
    離婚問題に精通した弁護士に相談してみましょう。証拠がない場合に、どのように対処すればよいのか、法的・実務的知識にもとづいたアドバイスを受けることが可能です。

別居についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

離婚前の別居で知っておきたいポイント

モラハラの証拠集めに関するQ&A

モラハラの証拠集めについて、よくある質問をご紹介します。

モラハラの証拠として無断で録音することは犯罪にならないのでしょうか?

モラハラをされている現場を相手の同意なく、無断で録音することは、「秘密録音」にあたりますが、犯罪にはなりません。秘密録音とは、会話中に、一方が他方に断りもなく録音することをいいます。
そのため、無断で録音データを収集していたとしても、ほとんどの場合問題なく、モラハラの証拠として採用されています。会話内容をメモしているのと変わらないと理解していただければ問題ないことは分かっていただけるのではないかと思います。
ただし、別居中の夫婦が、相手の住んでいる自宅を盗聴したり、夫婦の一方が自宅に一人でいる際に盗聴したりすると、不法行為等の違法行為であるとして損害賠償請求される可能性もあるので注意が必要です。

日記や録音データ等の証拠は、どのくらいの期間集めると良いのでしょうか?

日記や録音データ等の証拠は、できる限り多く、長期間にわたって集めるのが望ましいといえます。
モラハラが長期間にわたって、常習的に行われているほど、悪質なモラハラと判断され、裁判による離婚や、慰謝料の請求が認められる可能性が高まるからです。
また、日記やメモについて、長期に渡って継続的に書かれたものの方が、裁判所が虚偽の記載でないとの心証を持つ可能性があるため、この点からも長期間にわたって集める方が望ましいといえます。
なお、可能な限り証拠を集めたうえで、決してご自身だけで判断せず、手持ちの証拠で足りているのか一度弁護士に判断を仰ぐことをおすすめします。

子供の証言はモラハラの証拠として認められるでしょうか?

子供の証言でも証拠になり得ますが、「モラハラ」とはどういうものであるのか、ある程度判断できる年の子供の証言であることが必要となります。ただし、子供の負担や将来への影響を考えると、小さな子供に証言させることは、慎重に考えるべきです。裁判所も子供が証言することに対しては消極的な姿勢をもつ傾向にあります。
できれば、成人であって、夫婦と利害関係のない第三者からの証言を収集するのが望ましいでしょう。

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モラハラで離婚をするにはどうすればよいのか、インターネットで色々と調べられていることと思います。
ただし、どのような離婚方法を取ればよいのかは、夫婦それぞれの状況によって異なりますので、インターネットサイトだけ見て、解決策を見出すことは困難でしょう。

モラハラで離婚したい場合、上述したモラハラの性質や、そもそもモラハラ単独では法定離婚事由に該当することが困難であることから、その状況の中で、離婚についてより適切な解決策を考えるためにも、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人ALG神戸法律事務所には離婚問題、ハラスメント問題に経験豊富な弁護士が多く所属しております。ご来所頂けましたら、これまで得た経験やノウハウに基づき、ご相談者様にとってベストな解決策をアドバイスさせていただきます。
また、モラハラ加害者と直接交渉したくない場合は、弁護士が代理で相手と交渉することも可能です。
お一人で悩まれず、ぜひ弁護士法人ALG神戸法律事務所にご相談ください。

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介
監修:弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。