寄与分の請求に時効はある?特別寄与料の期限についても解説!

相続問題

寄与分の請求に時効はある?特別寄与料の期限についても解説!

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介

監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士

相続、遺産分割の場面で寄与分という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
寄与分とは、後述するように、被相続人の生前に被相続人の財産の維持・増加に努めた寄与者の功労を、遺産分割において反映させるものであり、遺産を分配する際に重要なものとなります。

そこで、本記事では、相続問題、遺産分割問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、寄与分及び2019年7月1日に新設された特別寄与料の請求について、時効等の請求時の注意点や請求の流れについて詳しく解説を行います。

まずは知っておきたい「寄与分」の意味

寄与分とは、法定相続人が、被相続人の事業を手伝ったり、被相続人の面倒を看ていた等、被相続人の財産の維持・増加に特別な働きかけをした場合、相続財産の分配を決める際に、その寄与を行った分について考慮されるというものです。

例えば、給与などの支払いを受けずに親の事業を手伝って、売上に貢献し、財産の拡大に貢献していたような場合に、その者の遺産の取り分を多くする、というイメージを持ってもらえれば分かりやすいかと思います。

寄与分が認められるための要件

寄与分が認められるためには、複数の条件があります。
その条件とは、以下の4つの条件となります。

①法定相続人であること
上記で解説したとおり、法定相続人(民法で相続人と認められた者)である必要があります。

②被相続人の財産が維持・増加していること
相続人が被相続人の事業を手伝ってきたとしても、被相続人の財産が維持され又は増加している必要があります。

③財産の維持・増加と因果関係があること
相続人の行為によって被相続人の財産の維持・増加があったという、結果に対する関連性が必要です。

④期待を超える貢献があること
親族同士は、一定程度は生活をする上で助け合うことが想定・期待されるため、寄与分として認められるためには、その想定・期待を超える貢献である必要があります。

なお、寄与分については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

寄与分とは

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寄与分に時効はあるのか?

寄与分の請求に時効はありません。そのため、自身が被相続人に対して特別な寄与を行ったのが随分前であったとしても、寄与分の主張を行うことは可能です。
もっとも、寄与分の主張は基本的に遺産分割協議の中で行っていくことになるところ、遺産分割協議が成立した後に、寄与分の主張を行っても意味を持ちません。
そのため、寄与分の請求に時効はないと言っても、実質的には、遺産分割の合意が成立するまでの間に請求しなければならないということになります。

昔の寄与分が認められにくいのは本当?

随分前に行った被相続人への寄与についても、寄与分の主張をすることは可能ですが、あまりに年月が経過してしまうと、寄与分があったことを証明する証拠が散逸してしまって立証が困難となります。

そうなると、寄与分の主張はできたとしても、それを立証する証拠がない以上、その主張が認められにくくなってしまうのです。そのため、寄与分の主張を行いたいのであれば、証拠が残っている早期の段階で行うことをおすすめします。

「特別寄与料」には期限があるため注意!

寄与分とは異なるものとして、特別寄与料という制度が2019年7月1日施行の改正民法により創設されました。これは、共同相続人ではない人が、被相続人の介護を行ったなど、特別の貢献をした場合に請求できる金銭のことをいいます。

特別寄与料が認められるためには、複数の条件があります。
①相続人以外の被相続人の親族であること
②無償で療養監護、その他の労務を提供したこと
③被相続人の財産の維持・増加していること
④特別寄与者の行為と被相続人の財産の維持・増加との間に因果関係が認められること
といった条件を満たすことが必要です。

なお、特別寄与料の主張は、後述のとおり、寄与分と異なり、消滅時効や除斥期間があるため、注意が必要となります。

特別寄与料の消滅時効

特別寄与料の主張は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内に行う必要があり、それを過ぎてしまうと消滅時効により権利が消滅します。
なお、「消滅時効」とは、権利者が一定期間権利を行使しないことによって、相手方から時効を主張(援用)されるとその権利が消滅することをいいます。
そのため、自身が特別寄与者であったとしても、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内に権利の行使を行わない場合、時効を援用されると、権利が消滅してしまうことになるので、注意しましょう。

特別寄与料の除斥期間

また、特別寄与料には、上記の「消滅時効」のほかに、「除斥期間」も設けられています。
「除斥期間」とは、その期間が過ぎてしまうと請求する権利が消滅してしまう期間を意味します。これは「消滅時効」と異なり、相手方からの援用は必要ないとされています。
相続の開始から1年間の除斥期間を経過すると権利が消滅するという除斥期間が設けられており、権利行使をせずに1年が過ぎてしまえば、完全に権利を失うことになるので注意しましょう。

寄与分を主張するためのポイント

上述したとおり、自身に寄与分が認められるべきとして、寄与分の主張を行いたいのであれば、できるだけ早い段階で行うことをおすすめします。
寄与分は、主張しただけで簡単に認められるものではないことから、その主張の根拠となる証拠を集めることが重要になります。そのため、証拠の散逸によって、証拠収集が困難となる前に行うことがよいといえます。
また、寄与分について適切な主張を行うことや有効な証拠を集めるには、法的な知識が不可欠であるため、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。

寄与分を請求する流れ

寄与分の請求は、まず、遺産分割協議の中で行います。
遺産分割協議における当事者間の話し合いで、寄与分を考慮した遺産分割がまとまった場合には、遺産分割協議書等の書面の作成を行って遺産分割は終了しますが、遺産分割協議における話し合いでまとまらない場合には、遺産分割調停を申し立てて、裁判所における遺産分割調停の中で調停委員を交えて当事者間で協議を行うことになります。そして、遺産分割調停の中でも話がまとまらない場合には、寄与分については、「寄与分を定める調停」という調停を別途申立てなければならない点は注意しましょう。

さらに、「遺産分割調停」や「寄与分を定める調停」でも話し合いがまとまらず不調停となかった場合には、審判となり、当事者間の合意ではなく、最終的に裁判官が判断を下すことになります。 遺産分割調停や遺産分割審判については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

また、寄与分が認められるケースについても以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

遺産分割調停とは 遺産分割審判とは 寄与分とは

よくある質問

寄与分、特別寄与料に関連してよくある質問を紹介させていただきます。

遺産分割協議後に寄与分を主張することはできますか?

原則として、遺産分割協議後に寄与分の主張を行うことはできません。
そもそも、寄与分とは遺産分割の際に、自身の寄与を考慮して遺産を多くもらうというものであるところ、一旦遺産分割協議が成立すると、原則として遺産分割協議をやり直すことはできないためです。従前の遺産分割協議が、寄与分を考慮せずまとまってしまった以上、それを覆すことは困難であることはお分かりいただけるものと思います。
もっとも、例外として、遺産分割協議のやり直しについて相続人全員の同意がある場合等、遺産分割協議のやり直しが認められる場合があるため、そのような場合であれば、再度遺産分割協議を行う中で主張することは可能です。

なお、遺産分割協議のやり直しについては、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

遺産分割のやり直しに期限や時効はあるのか?

特別寄与料の時効を延長することは可能ですか?

特別寄与料の時効の延長は、消滅時効である相続の開始及び相続人を知った時から6か月という期間内に、時効の完成猶予等に該当する事情があれば可能です。
もっとも、上述したとおり、特別寄与料の請求期限については、相続開始の時から1年間という「除斥期間」も設けられているところ、「除斥期間」については、時効の完成猶予等の事情があっても、期間の延長はできませんので、最長で相続開始のときから1年間となります。

夫の親(被相続人)を介護した妻にも寄与分は認められますか?

特別寄与料の請求ができる人の範囲は、相続人以外の被相続人の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)ですので、夫の親を介護した妻は三親等内の姻族に該当することから寄与分が認められる可能性があります。
特別寄与料を認める制度は、このように、寄与分が認められない(寄与分は法定相続人にしか認められないため、夫の親を介護した妻には認められません。)相続人以外の親族に対して、不公平の是正が行えるように創設されました。

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寄与分はできるだけ早い段階で主張することをおすすめします。まずは弁護士にご相談下さい。

寄与分や特別寄与料は、被相続人の生前に、被相続人の財産の維持・増加に努めた寄与者の功労を、遺産分割において反映させるものであり、自身が寄与者であるならば、しっかりと主張していくことが必要となります。
もっとも、上述したとおり、寄与分の主張には時効がないと言っても、実質的には遺産分割の成立前に主張する必要がありますし、また、証拠収集等を念頭におくと、なるべく早い段階から主張した方が良いといえます。
また、特別寄与料の請求については、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内または相続開始の時から1年以内という厳しい期間制限が設けられていますので、迅速に対応する必要があります。

そのため、寄与分や特別寄与料について、適切且つ迅速に対応するためには、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。弁護士法人ALG神戸法律事務所には、相続問題、寄与分の問題に精通する弁護士がおりますので、寄与分にお悩みの方は是非一度ご相談ください。

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介
監修:弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。