監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
不倫をしてしまった場合には、不倫当事者の配偶者から不倫の慰謝料請求、いわゆる不貞慰謝料の請求をされることがあります。
特に、ある日突然、当該配偶者やその配偶者が依頼した弁護士から書面が届き、中を開けてみると「不貞慰謝料として300万円を請求します。速やかに下記口座までお支払いください。」と書かれていた、などのこともあるかと思います。
本記事では、男女問題、離婚問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、このように、不倫をしてしまい不貞慰謝料を請求された、という場合にどのように対処すべきかなどについて、解説していきたいと思います。
目次
不倫慰謝料を請求されたら確認すること
まず、不貞慰謝料を請求された場合には、以下の5つの点を確認するようにしましょう。
①不貞行為を行ったのか(不倫をしていない場合には特に疑われる行為があったかどうか)
②不貞行為をいつしたのか、また、それがいつ発覚したのか
②不倫相手が既婚者であることを知っていたのか
③不倫相手の夫婦関係は破綻していなかったか
④自らの意思で肉体関係を持ったのか
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
慰謝料の支払いが必要ないケース
上記5点を確認していただき、その上で、そもそも慰謝料を支払うべきかどうかを検討していくことになりますが、まずは、慰謝料の支払いが必要といえないケースについて解説していきます。
不倫の事実がない
まず、当然ながら、①不倫の事実がない場合には、慰謝料を支払う必要はありません。
不倫、【不貞行為】とは、厳密には婚姻している相手と肉体関係を持つ、性交渉を行うことをいいます。そのため、肉体関係を持ったり、性交渉を行っていないケースでは慰謝料を支払う必要はないといえます。
ただし、性交渉を行っていなくても、裁判例では、「何度も2人きりでデートをしている」、「毎晩のように長電話をしている」、「キスなどの行為をしている」、「相手に好意を伝えたメールやメッセージを頻繁にしている」など場合に、性交渉を持った場合よりももちろん低額ですが、慰謝料請求を認めた例があるので、注意が必要です。
夫婦関係が破綻していた
次に、②不倫相手の夫婦関係が破綻していた場合も、慰謝料を支払うべきかどうか検討すべきでしょう。
不貞慰謝料が発生する背景としては、【不貞行為】によって夫婦関係を破綻させるためであり、その夫婦関係の破綻の責任を慰謝料として負わせるということにあります。
そのため、例えば、既に夫婦が別居して数年経過していたなど、【不貞行為】のときに、不倫相手の夫婦関係が既に破綻していた場合、重ねて破綻させることはできませんから、慰謝料を支払う必要がないのではないか、と考えることができます。
もっとも、夫婦仲が悪いなどではもちろんダメで、夫婦関係の破綻が認められるケースはそう多くはないため、注意が必要です。
慰謝料請求の時効を過ぎている
そして、③不貞慰謝料の請求が時効を迎えている場合にも、慰謝料を支払う必要がないといえます。
不貞慰謝料の請求権は、厳密には、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求権であり、加害行為と加害者を知ったときから3年を過ぎると損害賠償請求権は時効を援用すれば消滅することとなります。
そのため、あなた自身の不倫の事実が発覚してから、3年以上経過した場合には、不倫相手の配偶者から不貞慰謝料の請求がされても、時効の援用をするようにしましょう。
相手が既婚者だと知らなかった
最後に、④相手が既婚者だと知らなかった場合です。
上記で説明したとおり、【不貞行為】は、婚姻している相手と肉体関係を持つ、性交渉を行うことを言うので、相手が既婚者だと知らない場合には、【不貞行為】の責任を負わせられないのではないか、ということです。
具体的には、不貞慰謝料の請求は、不法行為に基づく請求と説明しましたが、不法行為が成立するためには故意または過失が必要であり、相手が既婚者であると知っていた、もしくは、知らなくても注意すれば既婚者であると気づけた、ということが必要と言えます。
そのため、相手が既婚者であることを知らなかった、かつ、注意しても既婚者であると気付けなかったと合理的にいえる場合には、慰謝料を支払う必要はないといえるでしょう。
不貞慰謝料を請求された際にやってはいけないこと
上記では、不貞慰謝料を請求された場合に、慰謝料を支払うべきかどうか検討すべきケースを紹介しましたが、次に、不貞慰謝料を請求された場合にやってはいけないことを紹介しますので、ご参照ください。
請求を無視する
まず、不貞慰謝料の請求を無視することは止めましょう。
不貞慰謝料の請求を無視し続けると、話し合う気がないとみなされて、不倫相手の配偶者から裁判を起こされることになる可能性が高いです。
裁判になれば、解決までさらに時間がかかるなどして心身ともに負担が大きくなるでしょうから、話し合いで解決できるように、請求を無視せずに、まずはこちらの言い分を伝えるようにしましょう。
開き直る・逆切れする
次に、不倫の事実があってなお開き直る・逆切れすることは止めましょう。
どのような事情があるにせよ、基本的には、【不貞行為】は不法行為に該当しうるものであるため、開き直るどころか、逆切れしてしまうと、到底解決することが出来なくなりますし、以下で述べるとおり、その態度を踏まえて慰謝料を増額されてしまうおそれがあります。
不貞慰謝料が高くなるのはどんな時?
それでは、不貞慰謝料が高く認定されてしまうおそれがある場合とはどのような場合か、以下5つのケースを紹介しますので、ご参考になさってください。
自分から誘った場合
まず、①自分から【不貞行為】をするように誘った場合については、慰謝料額が高くなるおそれがあります。
自分から【不貞行為】を誘った場合には、不倫相手の夫婦の婚姻関係が破綻するきっかけを積極的に作ったとして、その悪質性を評価され、不貞慰謝料が増額される傾向にあります。
反省していない場合
次に、②あなたが反省していない場合です。
不倫相手の夫婦の婚姻関係を破綻に追い込んでも何も反省している様子がない場合には、その悪質性を評価され、不貞慰謝料が増額される傾向にあります。
それまで夫婦円満だった場合
そして、③不倫相手の夫婦が【不貞行為】がなされた前まで円満だった場合にも慰謝料が高額になるおそれがあります。
【不貞行為】は、夫婦関係を破綻させる点に違法性を見出すため、既に壊れかけている夫婦関係を壊したのではなく、円満だった夫婦関係を壊したということで、その悪質性が評価され、不貞慰謝料が増額される傾向にあります。
妊娠・出産した場合
さらに、④【不貞行為】によって妊娠・出産した場合にも慰謝料が高額になるおそれがあります。
上記③にも関連しますが、【不貞行為】は、夫婦関係を破綻させる点に違法性を見出すため、【不貞行為】によって妊娠・出産することは夫婦関係を破綻させることが明白であるということで、その悪質性が評価され、不貞慰謝料が増額される傾向にあります。
不倫が原因で離婚した場合
最後に、⑤【不貞行為】が原因で離婚した場合にも慰謝料が高額になるおそれがあります。
上記③④にも関連しますが、【不貞行為】は、夫婦関係を破綻させる点に違法性を見出すため、【不貞行為】によって不倫相手の夫婦の婚姻関係を破綻させたことであれば、その悪質性が評価され、不貞慰謝料が増額される傾向にあります。
請求された金額が払えない場合の対処法
それでは、不貞慰謝料を請求された場合に、請求された金額が払えない場合はどうすべきか、以下その対処法を2点ご紹介いたします。
減額交渉する
まずは、請求された額からの減額交渉をするという手段です。
不貞慰謝料の最初の請求額としては、300万円~500万円程度であることが多いですが、実際に、その程度の慰謝料額を回収することは困難であるケースが多いです。
そのため、請求された額を支払えなくても、減額交渉をすることは有効でしょう。
分割払いの交渉をする
次に、分割払いの交渉をするという手段です。
請求された額から減額をしてもなお慰謝料額は低額ではないケースもあります。その場合に、本来であれば一括にて支払うべきところですが、その支払いの余裕がない場合には、その旨も伝えて、分割払いの交渉をすることは有効といえます。
請求された不貞慰謝料の減額事例
弊所では、不貞慰謝料の請求をされた方からのご依頼で、請求額からの減額実績も多数あります。
例えば、不貞慰謝料として300万円請求されたケースでも、【不貞行為】当時、夫婦関係が円満ではなく悪く離婚協議をしていたことや、【不貞行為】について、不倫相手から誘ってきたことなどを反論して、50万円まで減額したケースがあります。
もちろん、減額できる額については、ケースバイケースですが、不貞慰謝料を請求された場合には、いち早く弁護士に相談すべきでしょう。
不貞慰謝料を請求されたら弁護士にご相談ください
以上、不貞慰謝料の請求された場合の対処法などを解説してきましたが、突然不倫の事実を突きつけられ、多額の慰謝料を請求された場合、平常心を保てず慌てて、ご自身に不利な言動、対応をしてしまい、さらに事態が悪化する可能性があります。
このような場合には、まずは、弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は、これまで多数の男女問題、離婚問題を解決してきた実績と経験がありますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)