監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
DV被害を受けている方の中には、「家を出たら相手を怒らせてしまうかもしれない」「子供のことが心配」などの不安から、別居をためらってしまう方もいるでしょう。
しかし、DVは時間の経過とともに被害が深刻化するおそれがあり、心身の健康や判断力に大きな影響を及ぼすこともあります。身の安全を確保するためにも、別居して加害者と距離を置くことが重要です。
この記事では、DVから逃げるための別居の進め方について詳しく解説していきます。
DVを受けたら早期に別居すべき理由
DVを受けている場合は、できるだけ早く別居して加害者と距離を置きましょう。
DV被害が長期間続くと、恐怖心や精神的な支配によって正常な判断が難しくなり、「自分が悪いのではないか」と思い込んでしまうことがあります。
また、本当は離婚を望んでいるのに、自分の気持ちが分からなくなり、離婚すべきかどうか判断できなくなるケースも少なくありません。
まずは安全な環境を確保し、冷静に今後の生活や離婚について考えられる状態をつくることが大切です。
DV被害者が別居するメリット
DV被害者が別居する最大のメリットは、加害者による暴力や精神的な支配から一時的に離れ、安全な生活を確保できることです。
物理的に加害者と距離を置くことで、常に相手の顔色をうかがう必要がなくなり、心身の負担の軽減が期待できます。
また、DVは法定離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性がありますが、さらに別居を継続することによって、離婚できる可能性が高まります。
DVの種類
DV(ドメスティック・バイオレンス)には、殴る・蹴るといった身体的暴力だけでなく、以下のようなさまざまな形態があります。
- 精神的DV 例:暴言や無視などによって精神的に追い詰める
- 社会的DV 例:外出や交友関係を制限する
- 経済的DV 例:生活費を渡さない
- 性的DV 例:性行為を強要する
DVは目に見える暴力だけでなく、被害者の心や行動、生活をコントロールする行為も含まれます。「殴られていないからDVではない」と決めつけず、まずは相手の行為がDVにあたるかどうかを確認しましょう。
DVを受けても別居に踏み切れないパターン
DV被害を受けていても、すぐに別居に踏み切れるとは限りません。
さまざまな理由から、現状を維持してしまうケースもあります。
DVの加害者が怖い
DV被害者の中には、「別居を切り出したら相手の暴力がひどくなるかもしれない」といった恐怖から、別居に踏み切れない方も少なくありません。
しかし、加害者が怖いと感じるほどの支配や暴力が続いているのであれば、なおさら早めに距離を置くことが重要です。
一人で行動することに不安がある場合は、警察や配偶者暴力相談支援センター、弁護士などに相談し、安全を確保したうえで別居を進めることをおすすめします。
DVの深刻さに気付けない
加害者から繰り返し暴言を浴びせられたり、自分を否定されたりするうちに、感覚が麻痺してDVの深刻さに気付けなくなってしまうことがあります。
特に、被害が長期間続くと、このような状態に陥りやすくなります。
DVは身体的暴力だけでなく、精神的な支配や行動の制限なども含まれる不法行為です。
第三者に相談することで、初めて被害の深刻さを認識できる場合もあるため、一人で抱え込まずに信頼できる人や専門家に相談してみましょう。
別居に相手の承諾が必要だと思い込んでいる
DV被害者の中には、長期間の支配や暴力を受けることで洗脳状態になり、「相手の許可がなければ別居できない」と思い込んでしまう方もいます。
しかし、DVから身を守るための別居であれば、必ずしも相手の承諾は必要ありません。
むしろ、別居を切り出すことで暴力や嫌がらせが激しくなるおそれもあるため、安全確保のために避難することを優先すべきです。
一人で判断するのが難しい場合は、弁護士や支援機関へ相談しながら別居を進めましょう。
子供の環境や将来への影響が不安
子供がいる場合、子供の環境や将来への影響を心配して、別居をためらう方もいます。
しかし、子供自身が直接DV被害を受けていなくても、家庭内で暴力や暴言が繰り返される様子を見ることは、大きな精神的負担となります。
また、親が怯えながら生活する姿を見続けることで、子供の心身の成長に悪影響を及ぼすおそれもあるでしょう。子供のためにも、まずは安全な環境で安心して生活できるよう、別居を検討することが大切です。
お金や仕事がない
DVを受けても別居に踏み切れないパターンには、お金や仕事がないという経済的な不安もあります。
別居しても、婚姻関係が続いている間は、収入の少ない配偶者は相手に対して婚姻費用を請求できます。とはいえ、DVによる別居の場合は、「相手と十分な話し合いができない」「請求しても支払われない」などのケースが少なくありません。
婚姻費用が期待できない場合は、生活保護や各種公的支援の利用を検討するほか、実家や親族の支援を受けることも選択肢の一つです。
DVから逃げるための別居の進め方
DVの証拠を集める
DVが原因で別居を考えている場合は、まず証拠を集めることが重要です。
相手のDVを証明する証拠には、以下のようなものが挙げられます。
【例】
- 怪我の診断書
- 通院記録
- 傷跡の写真や動画
- 暴言や脅迫を受けている録音データ
- 暴行を受けている状況の動画 など
これらはDV被害の証拠として活用できる可能性があるため、別居だけでなく、離婚や慰謝料請求、保護命令の申立てなどの際にも役立ちます。
証拠はできるだけ早い段階から継続的に収集しておくとよいでしょう。
別居先・引越し日を決める
別居を決意した後は、安全に避難できる別居先を確保し、引越し日を決めます。
別居先としては、実家や親族宅、信頼できる友人宅のほか、自治体や支援団体が運営するDVシェルターなどが考えられます。
引越し日は、相手が不在の日時を選び、できる限り接触を避ける工夫も必要です。
自宅に戻ることが危険な場合は、決して一人で行動せず、支援機関や警察に相談しながら進めましょう。
別居後の生活について計画・確認する
別居後の生活を安定させるためには、事前に生活設計を立てておくことも大切です。
別居後に必要となる家賃や食費、子供にかかる費用などを確認し、収入とのバランスを把握しておきましょう。
自身の収入だけで生活することが難しい場合には、児童扶養手当や生活保護などの公的支援制度の利用も検討します。
安心して別居生活を始めるためにも、利用できる支援制度については、事前に調べておくことをおすすめします。
別居の準備をする
DV被害から逃れるための別居では、相手に気付かれないよう慎重に準備を進めることが重要です。
通帳や印鑑、身分証明書、マイナンバーカード、子供の母子手帳など、生活に必要なものはできる限り持ち出せるよう準備しておきましょう。
荷物が多くなりそうな場合は、相手が不在の間に運び出したり、事前に少しずつ親族宅へ送ったりする方法も考えられます。
ただし、荷物の持ち出しが相手にバレたり、危害が及んだりするリスクがある場合は、無理に進めないようにしましょう。
別居を切り出す(または告げずに別居)
DVの程度によっては、別居を事前に切り出さずに避難した方が安全な場合もあります。
別居の意思を伝えたことをきっかけに、相手の暴力や嫌がらせがエスカレートするおそれがあるためです。身の危険がある場合は、無理に話し合いを行う必要はありません。
ただし、突然いなくなったことで相手が警察へ捜索願を出す可能性も十分に考えられます。
そのため、「しばらく連絡を控える」「安全な場所へ避難している」といった内容の置手紙を残すことも検討しましょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVで別居した後に離婚を考えるときの4つの注意点
①別居理由を証拠化しておく
DVが原因で別居する場合は、「なぜ別居に至ったのか」を後から説明できるよう、証拠を残しておくことが重要です。
特に、診断書や怪我の写真、録音データ、LINEやメールのやり取りなどは、DVの事実を裏付ける証拠となります。
離婚調停や慰謝料請求、保護命令の申立てなどの場面で、客観的な証拠として役立つでしょう。別居後に証拠を集めるのはかなり難しくなるため、同居中に可能な範囲で確保しておくことをおすすめします。
②子供と一緒に暮らしたい場合は子供を置いていかない
別居後も子供との生活を希望する場合は、子供を置いていかないようにする必要があります。親権や監護権を判断する際には、別居後にどちらが子供を監護しているかが重視される傾向があるためです。
現在は共同親権制度が導入されていますが、DVが行われた事案では単独親権が認められる可能性もあります。そのため、相手を恐れて子供との生活を諦めるのではなく、子供とともに生きる将来も見据えながら慎重に準備を進めましょう。
③別居先を相手に知られないようにする
DV加害者の中には、別居後も執拗に連絡を続けたり、相手の居場所を探したりする人もいます。そのため、別居先はできる限り相手に知られないようにし、安全を確保することが大切です。
相手が執着するタイプであれば、「保護命令の申立て」も検討した方がよいでしょう。
保護命令とは、裁判所が加害者に対して、被害者への接近や連絡などを禁止する制度です。
利用を希望する場合は、警察や配偶者暴力相談支援センターのほか、弁護士へ相談することをおすすめします。
④住民票の異動は慎重に行う
相手が配偶者であるうちは、住民票の異動を慎重に行う必要があります。
離婚前の夫婦の場合、住民票や戸籍を取得できることから、相手に居場所を知られてしまうおそれがあるためです。
DV被害者については、住民票や戸籍の閲覧制限を申し出られる制度があります。
制度を利用すれば、相手に住所を知られるリスクを軽減できます。
安全を確保するためにも、早めに市区町村役場へ相談しましょう。
DV被害の相談窓口・支援窓口
DV被害の相談窓口や支援窓口は、国や自治体などで用意されており、一つに絞られているわけではありません。
例えば、「DV相談ナビ(#8008)」では最寄りの相談機関を案内してもらえます。
また、「DV相談+(プラス)」では、電話だけでなく、チャットによる相談も可能です。
なお、緊急性が高い場合は警察へ連絡し、まずは身の安全を確保しましょう。
危険を感じたときは我慢せず、早めに支援を求めることが大切です。
DV被害や別居を弁護士に相談するメリット
DV被害や別居を弁護士に相談するメリットは、相手と直接やり取りする負担を軽減できる点です。また、離婚や親権、婚姻費用、慰謝料などの問題についても、状況に応じた適切な見通しやアドバイスを受けられます。
さらに、証拠の集め方や保護命令の申立てなどについてサポートを受けられる点もメリットの一つです。不利な条件で離婚の話が進んでしまわないよう、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
DVから逃げるために別居をご検討の方は弁護士法人ALGへご相談ください
配偶者からDV被害を受けている場合は、ご自身や子供の安全を守るためにも、早めに別居を検討しましょう。
しかし、別居したいと思っていても、進め方や証拠の確保、離婚の手続きなどについて不安を抱えている方もいらっしゃるはずです。
そのような場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士であれば、状況に応じた適切な法的サポートが行えます。
DV被害や別居、その先の離婚についてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
