前科とは?生活への影響など
“前科”と聞くと、多くの方が“罪を犯したことのある人”という目で見てしまいます。
そのため、前科がつくと就職や結婚などに大きな影響を及ぼすというイメージを持たれている方が多く、刑事事件のご相談でも「前科がつかないようにするにはどうしたらいいか」と心配される方が多くいらっしゃいます。
本記事では、前科の理解を深め、少しでも前科に対する疑問などを解消できるように、詳しく解説していきます。ぜひご参考になさってください。
前科とは
前科とは、「過去に罪を犯し刑事裁判にて有罪判決を受けた経歴」を指します。
被疑者(罪を犯したと疑われる者)が起訴されると、裁判官より略式命令または判決にて刑罰を言い渡されます。
日本の刑罰は、現時点で“6種類の主刑”と主刑と一緒でないと科すことができない“付加刑”が規定されており、判決にて死刑を除くこれらの刑罰が確定すると前科がつきます。
少年事件の場合は、家庭裁判所で行われる少年審判の結果、保護処分となれば前科がつくことはありません。しかし、刑事処分が相当であると判断され検察官に送致された後、刑事裁判にて有罪判決を受けた場合には成人と同じように前科がつく可能性があります。
前科と前歴の違い
前科と前歴は、それぞれ以下の意味を指します。
- 前科:有罪判決を受けた経歴
- 前歴:捜査機関の捜査対象となった経歴
2つの大きな違いは、“有罪判決を受けたか否か”という点にあります。
前歴は、あくまで捜査機関の捜査対象となった「記録」として残るものであるため、日常生活に大きな支障を及ぼすことはありません。
前科の記録は残るか
前科がついた事実自体が消えることはありません。
前科がつくと市区町村で保管されている犯罪人名簿に記載されます。
しかし、罰金刑以上の刑を受けずに一定期間を経ると、犯罪人名簿からは削除される場合があります。
犯罪人名簿とは
犯罪人名簿とは、全国の市区町村自治体が罰金刑以上の有罪判決が確定した人の情報を記載した帳簿であり、市区町村自治体にて厳重に管理されています。
前科のある人は各種資格を制限される場合があるため、前科を的確に把握できるようにという目的のもと、運用されています。
犯罪人名簿は「前科者リスト」とも呼ばれており、非常にプライバシー性の高いものであることから、情報公開されていません。
犯罪人名簿から削除されるとき
犯罪人名簿は、全国の市区町村自治体にて事務手続きや選挙権を管理するときに使用される内部資料ですが、刑の言い渡しの効力が消滅した際には使用されなくなり削除されます。
これは、刑法第27条及び第34条の2にて定められています。
【刑法第27条】
刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
【刑法第34条の2】
拘禁刑以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
インターネット上に情報が残る可能性はある
犯罪人名簿は、刑の言い渡しの効力が消滅すれば削除されますが、逮捕や有罪判決の情報などがインターネット上に残る可能性があります。
現代はネット社会と呼ばれ、実名報道や個人を特定する情報などがインターネット上に蔓延しており、削除されずに残っている情報を完全に消すことは難しいでしょう。
このような情報については、サイトの運営側に依頼することにより削除できる可能性もあるため、お悩みの方は弁護士にご相談されることをおすすめします。
前科がつくことによる生活への影響
就職に不利になることがある
「就職の際に前科を申告する必要があるのか」という質問をよく耳にしますが、積極的に前科を申告する必要はありません。
しかし、企業に提出する履歴書に記入項目として“賞罰を記載する欄”が設けられていることがあります。
この場合は、賞罰を記載しなければ経歴詐称となるため、注意しなければなりません。
面接で前科の有無を聞かれたにも関わらず虚偽の申告をした場合も同様です。
また、前科がある場合は職業が制限されるため、以下のような職業に就くことはできません。
<制限される職業>
議員、警察官採用、裁判官、検察官、弁護士、教員、医師、薬剤師、看護師、建築士、公認会計士、税理士、行政書士 など
前科は離婚の理由になるか
前科があることが、直ちに離婚事由となることはないでしょう。
しかし、次のような場合は離婚事由として認められやすいため、離婚が成立する可能性があります。
- 強制性交等罪のように犯罪行為自体が不貞行為に当たる場合(民法770条1項1号)
- 前科の内容が「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する場合(民法770条1項5号)など
ローンは組めるか
前科があることで、ローンが組めないということはありません。
ローンを組む場合、金融機関は「個人信用情報機関」へ問い合わせを行い、ローンを組む人の年収などを確認して、ローン審査を行いますが、この信用情報に、前科・前歴の有無は記録されていません。
生活保護や年金はもらえるか
生活保護や年金については、いずれも法律により“受給要件”が定められています。
受給要件に前科の有無は含まれていないことから、前科があったとしても生活保護や年金を受給することができます。
海外旅行はできるか
前科がある場合、旅券法第13条によりパスポートの発給が制限されることがあります。
また、パスポートの発行が認められても、渡航先の入国審査によっては入国できないおそれがあります。
【旅券法第13条※対象者】
(1項2号)
死刑、無期若しくは長期2年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
(1項3号)
拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
前科は回避できるのか
不起訴処分となれば前科はつかない
不起訴処分とは、検察官が被疑者を起訴しないと決定したことを指します。
被疑者が犯人でないことが明らかなときや犯罪を証明する証拠が乏しいときなどは、「嫌疑なし」または「嫌疑不十分」と判断され、不起訴処分となります。
不起訴処分となれば、前歴はつきますが前科がつくことはありません。
日本の刑事裁判における有罪率は99.9%と非常に高い数値を誇っており、起訴された場合はほぼ100%の確率で有罪判決となります。
前科がつかないように不起訴処分を獲得するためにも、早期に弁護活動を行う必要があります。
不起訴処分には示談の成立が重要
被害者がいる場合は、“被害者との示談成立の有無”が非常に大きな考慮要素となります。
被害者と既に示談が成立している場合、検察官はこれを考慮し、不起訴処分と判断する可能性が高いです。
仮に起訴されていても、刑が軽くなる可能性もあります。
しかし、被疑者が身柄拘束されていれば、示談のために動くことはできません。
また、起訴されるかどうか判断されるまでに残されている時間も決して多くありません。
そのため、早期に弁護士へ相談・依頼し、弁護士に被害者との示談交渉を行ってもらうことが必要不可欠です。
前科がつくのを回避するには、弁護士へご相談ください
前科がつくことにより、日常生活において様々な不利益を受けるおそれがあります。
しかし、不起訴処分を得ることで、前科がつくことを回避することができます。
不起訴処分を得るためには、弁護士による示談交渉や証拠の収集などの“弁護士活動”が必要です。
弁護士であれば、これまでの豊富な経験や知識から、しっかりとサポートすることができます。
前科についてお悩みの方は、弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。
この記事の監修

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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。