勾留とは?勾留の流れや期間、対応策について
意図して、もしくは意図せずに、警察に「逮捕」された場合には、その後2~3日のうちに【勾留】という長期の身柄拘束手続きがとられることがあります。
もっとも、一般的には、警察に捕まり、警察署に被疑者として拘束されていることを「逮捕」として、「逮捕」と【勾留】については、明確に理解されていない方も多いのではないかと思います。
しかし、刑事手続においては、被疑者の身柄拘束は「逮捕」と【勾留】は明確に区別されています。
特に、大切なご家族が「逮捕」だけでなく、【勾留】された場合には、早期に弁護士に相談することが重要です。
そこで、本記事では、刑事事件を多数扱ってきた弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、【勾留】とは何か、などを解説しますので、ぜひご参照ください。
目次
勾留とは
そもそも、【勾留】とは何か、という点から解説します。
【勾留】とは、被疑者や被告人を、逃亡や証拠の隠蔽を防ぐという目的で、警察署の留置場などの刑事施設に拘束することをいいます。
「逮捕」のみの場合には、最大72時間で釈放されることになりますが、【勾留】された場合には、より長期間、刑事施設に収容されてしまうことになるため、【勾留】された場合の対応が重要となります。
勾留される要件
【勾留】される場合ですが、一時的とはいえ自由を奪う形になりますので、一定の要件がないと許容されません。
その【勾留】の要件とは、①勾留の理由及び②勾留の必要性があることですが、最終的には、裁判官が判断します。
まず、①勾留の理由は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ、以下の3つのいずれかに当たる場合を指します。
- 住居不定である
- 証拠隠滅のおそれがある
- 逃亡のおそれがある
そして、②勾留の必要性は、勾留のもたらす不利益を考慮すると勾留をすることが不相当ではないか、という観点から判断されます。
以下、①勾留の理由について詳しく見ていきましょう。
罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある
まず、①勾留の理由における「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」とは、文字通り、犯罪の嫌疑が相当程度あることです。
身体拘束をする以上、犯罪を行ったことを裏付ける事実、理由が必要とされるわけですが、【勾留】の段階では、おおよそ逮捕されて間がないので、全ての証拠が揃っていることまでは要求されません。
つまり、起訴して裁判にかける際に要求されるような、有罪の可能性が高いというものまでは要求されているわけではないということです。
住居不定である
①勾留の理由における、住居不定とは、定まった住居を有していない場合はもちろん、住居を本人が明らかにせず他の資料からも住居が分からない場合などです。
住居不定の人は、住居が不定であると、今後の捜査で必要なときに呼び出すのにも苦労をし、手続きを滞りなく進行させることが困難になるので、住居不定にあたる場合には【勾留】をして身体拘束することが認められます。
証拠隠滅のおそれがある
①勾留の理由における、証拠隠滅のおそれがある、というのは、被害者や目撃者に働きかける、証拠データを消去するなど、証拠に対して不正な働きかけをして、捜査や裁判手続きに影響を与えるおそれがあることをいいます。
証拠隠滅の対象は、証拠データの消去などの「物証」のみならず、被害者や目撃者の証言を変えさせるなどの「人証」も対象とされています。
被疑者や被告人の身柄を拘束しなければ、こういった証拠を隠滅する可能性が相当程度見込まれるかどうかが問題となります。
逃亡のおそれがある
①勾留の理由における、逃亡のおそれがある、というのは、文字通りですが、被疑者が刑事訴追や刑の執行を免れる目的で所在不明になることをいいます。
事案の軽重や前科・前歴の有無、執行猶予期間中であったかどうかなど、様々な事情を踏まえて判断されていると思いますが、例えば事案が比較的軽微で前科・前歴がなく、結婚し家族がいて定職にも就いているといった事情があれば、逃亡のおそれがないという判断に傾くでしょう。
勾留と拘留の違い
上記でも見てきましたが、【勾留】は、一定期間身体拘束をすることをいいますが、似たような表記をするものとして、「拘留」というものがあります。
どちらも読み方は「こうりゅう」ですが、内容は全くの別物です。
まず、【勾留】は、起訴もされておらず犯罪の嫌疑をかけられている捜査段階でなされるものであり、「拘留」は、有罪判決後に受ける刑罰の一つであり、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘束する刑罰をいいます。
勾留までの流れ
警察が被疑者を逮捕した場合、警察は48時間以内に検察官に送致しなければなりません。
そして、検察官は、警察官から送致を受けて24時間以内に、勾留請求をするかどうかを判断することになります。
つまり、警察官が逮捕し、検察官が勾留請求をするまでの時間は、72時間以内に行わなければならない、ということになります。
勾留請求
【勾留】については、検察官が裁判官に対して請求し、裁判官が判断します。
すなわち、検察官としては、被疑者を【勾留】することなくそのまま釈放すると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合に、裁判官に対して、被疑者を勾留するよう求めます。
検察官から裁判官へのかかる請求を「勾留請求」といいます。
勾留質問
検察官から、上記の「勾留請求」を受けた裁判官は、被疑者に対して、被疑事件を告げ、これに関する陳述を聴くという「勾留質問」を行います。
手続きとしては、裁判官が上記の勾留の要件を判断する重要な場面なのですが、被疑者が意見を述べられる時間は短く、端的に説明しなければなりません。
ただし、一般の方が、十分な法的知識を有しているわけではないので、適切に説明することは難しいでしょう。
そのため、弁護士に弁護人になってもらい、事前に意見書を差し入れてもらうなど、如何に勾留の理由や必要性といった要件を満たさないか説明を尽くしてもらうべきといえます。
勾留後の処分
上記のような流れを経て、【勾留】がされれば、最大20日間の間、捜査機関は、被疑者等に対する取調べ・捜査を行います。
検察官は、最大20日間の勾留期間で、被疑者を起訴するかどうかを決定することになります。
もっとも、検察官が被疑者を起訴したとしても、直ちに釈放されるわけではなく、被告人となった場合でも、逃亡や証拠の隠蔽を防ぐ必要性が高く、警察署の留置場などの刑事施設に拘束するべきであると判断されれば、起訴後に勾留されることになります。
後述するとおり、起訴前勾留と起訴後勾留があるのです。
釈放と保釈
上記説明の中で、「釈放」という言葉が出てきましたが、似たような言葉として、「保釈」というものがあります
「釈放」は、捜査機関が被疑者の身柄を解放することをいいます。
他方で、「保釈」は、起訴された後に、一定額の保釈保証金を納付し、被告人に対する【勾留】の執行を停止し、身体拘束から解放することをいいます。
勾留の期間
上記でも少し触れましたが、【勾留】されると、どれくらいの期間身体拘束されるのか見ていきましょう。
この点、起訴前勾留と起訴後勾留で異なるため、以下別々に取り上げます。
起訴前の勾留・勾留延長
起訴される前の【勾留】については、上記したとおり、検察官の「勾留請求」に対して、裁判官が【勾留】を許可する形で始まりますが、勾留期間は原則として10日間となります(刑事訴訟法208条1項)。
ただし、その後、検察官が、被疑者に対して今後も捜査を行う必要があると判断した場合には、追加で、最大10日間を勾留の延長を請求することができます。
その請求に対して、裁判官が勾留を延長するべきと判断した場合には、最大10日間の勾留が延長されることになります。
つまり、起訴前の勾留は、最大で20日間といえます。
起訴後の勾留
これに対して、起訴後の勾留は、公訴提起のあった日から2ヶ月間認められます(刑事訴訟法60条1項)。
ただし、その後も勾留の継続の必要がある場合には、1ヶ月ごとに更新することが可能です。 更新は原則1回ですが、例外もあります。
なお、被告人に対する「保釈」は、起訴後の勾留から認められることになります。
勾留の延長
上記でも述べたとおり、起訴前の【勾留】の期間は、原則として10日間とされておりますが、「やむを得ない事由」が存在する場合には、勾留の期間を最大10日間延長することができます。
勾留の延長の請求に対しては、「準抗告」という手段により争うことができます。
かかる「準抗告」については後でもう少し詳しく触れています。
勾留延長の「やむを得ない事由」
上記のとおり、勾留期間は、「やむを得ない事由」があれば延長が認められることとなります。
では、「やむを得ない事由」とはどのようなことを指すのでしょうか。
この点、事件の困難性、あるいは、証拠収集の遅延若しくは困難等により勾留期間を延長して更に調べるのでなければ起訴若しくは不起訴の決定をすることが困難な場合を指すとされています。
例えば、捜査を継続しなければ検察官が事件を処分できないこと、10日間の勾留期間内に捜査を尽せなかったと認められること、などを踏まえて判断されます。
勾留中の面会
では、【勾留】されてしまった場合に、外部の人と面会できるのでしょうか。
これは、接見禁止処分が付いているかどうかで変わると言えます。
すなわち、接見禁止処分が付いていない場合は、弁護士以外のご家族も面会や差し入れができますが、面会の回数や人数、時間等に制限があります。
また、警察官が面会室の中や扉を開けた外で話を聞いているため、実際、なんでも話せるという環境ではありません。
他方で、接見禁止処分がなされている場合には、弁護士以外の者とは面会(接見)ができません。
勾留を回避するためには
上記したとおり、逮捕されてから72時間以内に、検察官は「勾留請求」するかどうかを判断し、その後裁判官が勾留決定をすることになります。
したがって、そもそも【勾留】を避けるためには、逮捕後速やかに弁護活動を行わなければなりません。
弁護活動としては、例えば、検察官に対して勾留請求をするべきでないという意見書を提出したり、裁判官に対して勾留を却下するべきであるとの意見書を提出したり、裁判官の勾留決定に対して異議を申し出る、などです。
早期に弁護士に相談し、依頼して、弁護活動をしてもらうことにより、【勾留】を避けることができ、より早期に身柄を解放させることができる可能性が高まります。
勾留決定に納得がいかない場合の対応
裁判官が行った勾留決定に対して不服がある場合には、どのような対応が取れるのでしょうか。
この点、勾留決定に対して不服があるとして、裁判所にその取り消し又は変更を求める不服申し立てを「準抗告」といいます(刑事訴訟法429条1項)。
また、勾留決定自体に不服はないものの、勾留の必要性が無くなったことを理由に、勾留の取り消しを求めることを、「勾留取消請求」といいます。
こういった請求が正当であると判断された場合には、被疑者を身体拘束から解放することができます。
ただし、裁判所の勾留決定に対する「準抗告」や「勾留取消請求」は、とてもハードルが高く、刑事弁護の経験豊富な弁護士に任せるべきでしょう。
勾留された場合の弁護活動について
【勾留】された場合には、どのような弁護活動を進めていくべきなのでしょうか。
まず、【勾留】されたとしても、不起訴処分を獲得することができれば、早期に身体拘束から解放されることになります。
不起訴処分の獲得にあたって重要な点は、被害者の方との示談です。被害者との間で示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
また、起訴後に【勾留】されている場合には、「保釈」をすることによって、身体拘束から解放させることができます。
そして、一般的に接見禁止処分がなされているでも、弁護士は被疑者に面会することができるので、いろいろなアドバイスを受けることができます。
【勾留】されていたとしても、弁護士に依頼している場合には、様々な弁護活動を行うことができるのです。
勾留を回避したい、釈放・保釈してほしい場合は、早急に弁護士へ相談を
ある事件で逮捕されてしまったが、【勾留】を回避したい、【勾留】されてしまったが、早期に釈放・保釈してほしいという方は多いと思います。
時間制限があるとはいえ、【勾留】によって、身体拘束を受けることになれば、会社を休まざるを得ず、仮に不起訴となっても、解雇される等、これまでと同じ日常を送ることができなくなる可能性があります。
なるべく早期に身体拘束から解放されるためには、知識のみならず、迅速な対応が不可欠です。
この点、弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は、これまで数多くの刑事事件を取り扱ってきましたので、逮捕されてしまった、【勾留】されてしまった、という方、またそのご家族は、なるべく早く弊所までご相談ください。
この記事の監修
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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。