監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
DVとは、Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス)の略称で、一般的には「家庭内暴力」と認識されており、DV加害者が配偶者や子供などに対して、身体的暴力・精神的暴力・性的暴力・経済的暴力をふるうことを指します。こうしたDVは、家庭内における深刻な問題でもあり、離婚を考える理由ともなり得るでしょう。
では、果たして、DVを理由に離婚することはできるのでしょうか?
このページでは、相手のDVが原因で離婚するために知っておくべきことについて、離婚問題,DV問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が詳しく解説していきまので、ぜひ最後までお目通しください。
目次
DV加害者と離婚する方法
DV加害者と離婚するためには、以下のような流れに沿って事を進めていくのがよいでしょう。
①自分や家族の身を守るために別居する
②離婚に向けてDVの証拠を集める(別居後に証拠集めが難しい場合には,①の時点から集めておくべきです)
③収集した証拠をもって、具体的な離婚手続きに進む
それぞれの段階について、詳しくみていきます。
まずは身を守るために別居する
まずは、自分や子供の身を守ることを最優先に別居しましょう。
DVの精神的・身体的被害をこれ以上受けないようにするため、別居による物理的距離を置く必要があります。この別居期間は、離婚手続きを進めるうえでも有効的ですので、一刻も早く検討すべきです。
また,訪問してくるおそれもあるため別居先も教えないようにしましょう。
接近禁止命令の発令を検討する
別居と同時に、接近禁止命令の発令を検討するのも有用です。
接近禁止命令とは、裁判所が決定する保護命令の一種で、6ヶ月の間、DV加害者はDV被害者の身辺に近づくことが禁じられる法的措置です。これに違反すれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることとなります。
裁判所が決定するということで、もちろん裁判所への申立てが必要となり、また接近禁止命令を認めてもらうための証拠が要されますので、ご注意ください。
DVシェルターは一時的にしか使えない
一刻も早くDV加害者のもとから逃げ出そうとしても,転居先が見つからない場合には,DVシェルターを利用する場合もあるでしょう。
DVシェルターとは、DV被害者をDV加害者から隔離し、保護することを目的とした施設をいいます。利用するには、お近くの警察署や福祉事務所、配偶者暴力相談センターに問い合わせをします。
ただし、注意点として、緊急性が認められないと入れなかったり、一時的にしか利用できなかったりすることが挙げられます。あくまでも身を守るための緊急一時避難先として利用し、その後別居に向けた住居探しを計画的に進める必要があります。
DVの証拠を集める
別居をして身の安全を確保できたら、離婚に向けてDVの証拠をそろえましょう。
この点、別居してからだと得にくい証拠もありますので、できればDV被害を受けている最中から計画性をもって集めることを意識しておくのが重要です。
有用とされる具体的な証拠について、具体的にみていきましょう。
診断書
診断書やカルテ、通院歴がわかるような処方箋や領収書などは、DVの実態を立証する強固な証拠となり得ます。「身体的暴力により怪我の治療をした」「精神的暴力により心療内科を受診した」などの事実は、離婚や離婚慰謝料の請求、親権獲得においても有利にはたらきます。
診断書の内容も、単なる傷病名だけではなく、症状の程度や治療の期間、診察時の証言など、第三者がみてもわかるように、できるだけ細かく記載してもらうことが重要です。
怪我の写真
身体的暴力を受けて怪我をしてしまった場合には、負傷した箇所を写真に撮っておくのも有用です。
写真は、DVの事実を証明する客観的な証拠となり得ます。
有効な証拠となるよう、写真上で日付や時間がわかるようにしておきましょう。
また、手軽にスマホで撮影したくなりますが、加工を疑われるおそれがあります。できれば、使い捨てカメラなどを用意して撮影することをおすすめします。
音声・動画
DVが行われている最中の音声や動画のデータは、より強固な証拠となります。
しかし、DV中の録音・録画は、相当のリスクが伴いますので、あくまでも“可能であれば”との認識でいましょう。
DVを受けたことが記載してある日記
DVを受けたことを記載してある日記も、証拠として提出できます。
いつ、どこで、どんな、どのくらいなど、できるだけ詳細がわかるように記録していれば、他の証拠と併せてDVの事実の客観的な裏付けとなり得るでしょう。
ただし,客観的な証拠とは言い難いため,強い証拠とはいえないことは留意しておくようにしましょう。
警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
DVに関する相談事は、警察や配偶者暴力相談支援センターなどに連絡するのも一つの手です。
専門の公的機関に相談することで、的確なアドバイスやサポートを受けられるうえに、各所への相談記録は、そのままDVを立証する証拠となります。
生命の危機や子供への危害がせまっている場合は特に、DVシェルターも視野に入れつつ、専門の公的機関を積極的に利用するべきでしょう。
経済的DVを受けている場合
経済的に追い詰める経済的DVを受けている場合は、その状況が客観的にわかるような証拠が有用です。
一例を紹介しますので、参考になさってください。
- 家計が苦しいことがわかる家計簿
- 生活費が振り込まれなくなった預金通帳
- 借金の内容がわかる郵便や明細書
- 浪費の事実がわかるクレジットカードの利用明細
- 経済的DVの事実をつづった日記
離婚の手続きを進める
証拠が十分にそろったら、いよいよ離婚の手続きを進めます。
一般的な離婚方法は、【協議】にはじまり、【調停】、【裁判】と段階をふみます。
ただし、相手がDV加害者ともなると、協議や調停は現実的にむずかしいケースが多く、最終的に裁判で決着をつけることもあります。
裁判では、公平な判断をしてもらえますので、今までそろえた証拠をもって主張・立証を行うこととなります。
相手が離婚してくれない場合
「話し合いをしてもねじ伏せられてしまう」
「話し合うことすらできない」
「外面がいいため調停委員が相手寄りになってしまう」
どれもDV加害者を相手とすると、いわゆる外面が良い方も少なくなく,モラハラやDVなどの事案において起こりうる特有の事情といえます。
どんなに証拠がそろっていても、自分一人で立ち向かうには限界があるでしょう。せっかくそろえた証拠が無駄になることは何としても避けたいところです。相手が離婚に応じてくれない場合は、離婚問題,DV問題に精通した弁護士に依頼して、間に入ってもらうことをおすすめします。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVで離婚するときは慰謝請求ができる
DVの事実を立証する証拠があれば、離婚する際に慰謝料を請求できる可能性があります。
おおよそ【50万~300万円】が相場となりますが、この開きは、被害の程度や期間の長さによって変わってくるためです。
重要なのは、慰謝料の請求を認めてもらうために、DVが連続していたこと,それによって重大な被害を受けたことなどの悪質な内容について、客観的に具体的に証明できる証拠を用意することです。
親権をDV加害者にとられる可能性はある?
親権をDV加害者にとられてしまう可能性は、なきにしもあらずです。
親権の決定では、子供の福祉を最優先に、子供の年齢、今までの監護実績、経済的安定など、あらゆる側面が総合的に判断されます。DV加害者が親権を取得するケースは少ないものの,事情によっては、DV加害者であっても親権者となる場合もあるのです。
子供がいる場合は、離婚と同時に親権獲得も視野に入れた主張・立証を行う必要があります。
DVで離婚した場合でも面会交流はしなければいけない?
「面会交流をすることで、またはしないことで、子供の福祉がどうなるか」が重要です。
このため、必ず面会交流について定めなければいけない決まりはありません。
相手がDV加害者で、子供に危害が及ぶおそれがあるのなら、子供を守るために面会交流を拒否することも可能です。
ただし,基本的には,面会交流は子供の成長のために重要と考えられているため,面会交流を拒否する際には,きちんと拒否をする理由や根拠を提示できるようにしましょう。
DV加害者と離婚したい場合は弁護士にご相談ください
DVの被害に悩まれ離婚を決断するに至るまでに、壮絶な思いをされてきたことでしょう。
その決断を揺るぎないものにするためにも、ぜひ離婚問題,DV問題に精通した弁護士にご相談ください。
離婚問題,DV問題に精通した弁護士は、DV被害に遭い離婚を悩まれている段階から、ご依頼者さまに寄り添ってサポートすることができます。離婚に向けた有力な証拠収集のアドバイスや、相手との協議や調停もご依頼者さまに代わって交渉したり、出頭したりすることも可能です。
裁判に発展したとしても、複雑な手続き関係から安心して一任できますので、精神的にも身体的にもご依頼者さまの負担がぐっと減るでしょう。
まずは、弁護士法人ALGに、不安なご状況をお聴かせください。
弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は,これまで離婚やDV,モラハラなどで悩まれる方にアドバイスをし,サポートをして数多くの件を解決に導いてきました。
ご一緒に解決の糸口を見いだし、全力でサポートできる体制を整えてお待ちしています。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)