接見禁止
ある日突然家族が逮捕され、留置されている警察署に行っても、「接見禁止のため、面会することができない」と警察官に言われ、会うことができず、困っている、、、というようなケースもあるかと思います。
このように、「接見禁止」の決定があった場合には、ご家族といっても面会することができないので注意が必要です。
そこで、刑事事件、刑事弁護に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、逮捕されてしまった家族に会えないのはなぜか、会うためにはどうしたらいいのか等、「接見禁止」について解説しますので、ぜひご参照下さい。
目次
接見禁止とは?
まず、「接見禁止」とは何かを見ていきましょう。
「接見禁止」とは、文字通り、「接見」が「禁止」されていることです。
「接見」とは、刑事事件を起こしたと疑われ、逮捕や勾留などの身柄拘束を受けている被疑者や被告人に、弁護士や弁護士以外の人が会うことをいうのですが、原則として、「接見」は許容されます。
もっとも、以下に述べるとおり、証拠隠滅のおそれがあることなどから、「接見禁止」をすることが相当であると判断された場合には、ご家族であっても、自由に会うことができません。
なお、被疑者や被告人は、接見交通権が憲法上保障されているため、「接見禁止」が付いていたとしても、弁護士とは制限されることとなく会うことができます。
接見禁止となるのはなぜか
「接見禁止」となるのは、検察官が申立てをして、裁判所がそれに対して決定を出すためです。
具体的に申し上げると、検察官が裁判所に対して勾留請求をする際、それと同時に「接見禁止」の申立てをします。
検察官からの申立てを受けた裁判官は、「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」といえる場合には、「接見禁止」の決定を出すことになります。
特に、被疑者・被告人が犯罪を否認している場合や、自白していたとしても組織犯罪・共犯事件である場合には、弁護士以外の者と面会した際に証拠隠滅を指示したり、口裏合わせを依頼したりする可能性が高いとされ、「接見禁止」の決定が出されることが多いです。
接見禁止の期間
次に、「接見禁止」の決定が出た後、どれくらい「接見禁止」が続くか、「接見禁止」の期間については、明確な基準があるわけではありません。
裁判所は、逃亡や罪証隠滅(証拠を無くしたり、証言する人を威迫して証言を変えさせたりする)のおそれがある場合に「接見禁止」の決定をだすので、起訴前の勾留期間中は「接見禁止」とされることが多いです。
他方で、起訴された後や捜査機関による捜査や証拠収集がある程度進んだ段階であれば、「罪証隠滅のおそれ」は相対的に低くなっているといえるので、「接見禁止」を解除されることも少なくありません。
接見禁止で制限されること
それでは、「接見禁止」では、どのようなことが制限されるのかについて、以下詳しく見ていきましょう。
弁護士以外との面会禁止
上記したとおり、「接見禁止」の決定が出ると、弁護士以外の人と面会することができなくなります。
もっとも、弁護士との面会は、憲法上保障されているため、「接見禁止」後も制限されることなく面会することが可能です。
手紙のやり取りの禁止
「接見禁止」の決定が出ると、弁護士以外の人との面会だけでなく、手紙のやり取りも禁止されます。手紙のやり取りを許してしまうと、被疑者・被告人から弁護士以外の人に罪証隠滅の依頼等が可能になり、面会を禁止させた意味が失われてしまうからです。
そのため、何かご家族から被疑者・被告人からお伝えしたいことがある、頼みたいことがある場合には、弁護士を通じて話をしてもらう必要があります。
生活必需品以外の差し入れ禁止
「接見禁止」の決定が出ると、衣類や寝具、洗面用具等の日用品、本、お金などの生活必需品に関しては、差入れが可能ですが、それ以外の物の差入れが禁止されます。
宅下げの禁止
「接見禁止」の決定が出ると、「宅下げ」も禁止されます。
被疑者・被告人に対して外部から物を渡すことを「差入れ」というのに対し、逆に被疑者・被告人の物を弁護士等が受け取ることを「宅下げ」といいます。
「接見禁止」の決定が出ると、弁護士以外の人は「宅下げ」を受けることができなくなります。
接見禁止でも弁護士は接見可能
何度もご説明しているとおり、「接見禁止」の決定が出た後も、弁護士であれば接見は可能です。
また、逮捕された後72時間以内は弁護士以外の人との面会はそもそも認められていないのですが、弁護士は、逮捕後72時間以内であっても、「接見禁止」の決定が出ていた場合であっても、自由に接見することができます。
これは、被疑者・被告人には、立会人なくして弁護人と自由に面会できるという「接見交通権」という権利が憲法上保障されていることから(憲法34条、刑事訴訟法39条1項)、弁護士は自由に接見することができるのです。
時間制限、回数制限なく面会できる
上記のとおり、弁護士は、被疑者・被告人と自由に接見できますが、特に、一般面会において、平日午前9時から午後5時まで、1日1回20分間の面会と制限されています。
しかし、弁護士による接見は、時間制限・回数制限なく、土日祝日においても接見することが認められています。
警察官の立ち合いはない
面会しようとしても、弁護士以外の人が面会する場合には、警察官の立ち合いが基本的には必須とされています。
しかし、弁護士との接見については、警察官の立ち合いなく、接見することができます。
そのため、被疑者や被告人は、警察官に聞かれたくないことを弁護士にだけは話すことができ、弁護士からの回答を得ることができます。
回数制限なく差し入れができる
「差入れ」に関しても、弁護士は、回数制限なく、「差入れ」を行うことができます。
しかし、一般の方が「差入れ」する場合、警察署によってルールは異なりますが、「差入れ」ができる回数は1日2回と制限されています。
接見禁止を解除する方法
それでは、「接見禁止」が出された後、それを解除するにはどのようにすべきかを見ていきましょう。
準抗告・抗告
「接見禁止」の決定が出ている場合には、まず、裁判官・裁判所に対して「準抗告」(被疑者段階)・「抗告」(被告人段階)を行い、「接見禁止」の決定を解除するよう求めることが考えられます。
裁判官・裁判所において、被疑者・被告人が「逃亡のおそれがある」だとか「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」ということで、「接見禁止」の決定を出したと思われるので、「逃亡のおそれはない」「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がない」と主張立証することに成功すれば、「接見禁止」を解除することができる可能性があります。
例えば、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」がないというために、被疑者や被告人、共犯者の捜査が終了していることや被疑者・被告人やその身内が被害者と何ら接点のないことを証明すること、罪証を隠滅しないという誓約をすることなどをアピールすることが考えられます。
接見禁止処分の一部解除申し立て
「接見禁止」の決定に対する「準抗告」や「抗告」が認められなかった場合には、「接見禁止処分の一部解除の申し立て」を行うことが考えられます。
全ての外部の者との接見を禁止するのではなく、家族等との接見だけは認めてほしい、ということで、かかる申立てが認められる場合もあります。
なお、法令に基づく申し立てではないため、裁判官・裁判所は、申立てに対して判断する義務は負っていないことに注意が必要です。
勾留理由開示請求
「接見禁止」の決定に対する解除というわけではないのですが、被疑者や被告人、弁護士は、裁判官に対して勾留の理由を開示するよう請求することができます。
これを「勾留理由開示請求」といいます。
勾留理由開示は、公開の法廷で行われ、被疑者・被告人は意見陳述をすることができます。
そのため、接見禁止の決定を受けている被疑者の場合、直接会話をすることはできませんが、家族等と法廷で顔を合わせることができます。
接見禁止になっても弁護士なら被疑者との面会や接見禁止解除の働きかけができます。
これまで解説してきたように、「接見禁止」の決定が出ると、逮捕された家族に会えず、弁護士以外の人が被疑者・被告人に接見することができなくなります。そうすると、会社はどうするのか、様々な手続きはどうするのかなどの意思疎通が取れなくなってしまいます。
しかし、このような状況においても弁護士であれば、被疑者・被告人と面会することができます。
また、「接見禁止」の決定に対する準抗告や抗告・接見禁止処分に対する一部解除申し立て等を行うことにより、弁護士以外の人と、被疑者・被告人が面会することができるようになる可能性もあります。
このように、「接見禁止」に対してどのように対応していくのか、などのご心配に対して、刑事事件や刑事弁護の案件に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士であれば、少しでもご依頼者の利益になる弁護活動を行うことができます。
お困りの方は、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
この記事の監修
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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。