監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
昨今メディアを騒がせる芸能人夫婦や事件化するような一般人夫婦の揉め事の発端は、“不倫”や“DV”など、第三者がみても離婚になってもおかしくなさそうな内容が多いかと思います。
しかし、一般的な夫婦の離婚理由の多くが“不倫”や“DV”なのかといえば、そうではありません。実は、それらを超える離婚理由としてあげられるのが、【性格の不一致】です。
このページをご覧の方の中には、「【性格の不一致】を理由に離婚できるものなの?」「お金や子供のことはどうなるの?」といった不安を抱えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。こういった不安を少しでも和らげることができるよう、離婚問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が目次の内容に沿って順番に解説していきますので、ぜひご一読ください。
目次
性格の不一致で離婚することはできるのか
結論からいえば、【性格の不一致】で離婚することは“可能です”。
“できます”ではなく、“可能です”としたことにはワケがあります。
離婚することに夫婦の合意があれば、理由を問わず離婚することができるでしょう。離婚の可否についてこじれるのは、どちらか一方が離婚を望まない場合、離婚条件で折り合わない場合などです。
以降、詳しくみていきましょう。
性格の不一致とは
【性格の不一致】は、日常生活のさまざまな場面で起こる些細なすれ違いの積み重ねです。日本における離婚理由No.1といわれています。
例えば、金銭感覚が違う、子供の教育方針が違う、神経質で何事にも口うるさい、反対に家族の問題ごとにはまるで無関心、といったことでしょうか。結婚する前には気づかなくとも、一緒に生活していくなかで初めて見えてくるものもあるでしょう。夫婦のどちらか一方、あるいは双方に、歩み寄りや思いやりの気持ちがなくなってしまったとき、離婚へと向かってしまうこともあります。
もっとも、離婚したい理由が【性格の不一致】である場合、夫婦の一方だけでなく双方がそのように感じ取っていることも考えられますので、お互いが離婚を望むのであれば、離婚のハードルはそう高くないでしょう。しかし、夫婦のどちらか一方が離婚を拒み、もしくは、条件面で折り合わずに裁判にまで発展した場合、雲行きが少し怪しくなってきます。
法律が定める離婚原因とは?
裁判で離婚を成立させるには、民法770条に定められている離婚理由(=法定離婚事由)があることを、裁判所に認めてもらわなければなりません。
法定離婚事由は、次の5つに分類することができます。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続し難い重大な事由
上記の5つに【性格の不一致】は含まれていないことから、単に【性格の不一致】を主張するだけでは、裁判で離婚を成立させることはできません。
そこで、【性格の不一致】を発端とする離婚問題が裁判にまで発展した場合には、【性格の不一致】が「5.婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、夫婦関係がすでに破綻しているものと主張していくことになります。
性格の不一致で離婚する場合に必要な要素
【性格の不一致】を理由に裁判で離婚の可否を争う場合、夫婦関係の破綻を証明する必要があります。では、どのような証明の方法があるのでしょうか。
夫婦関係が破綻した証拠を集める
何をもって夫婦関係が破綻しているといえるのかはケースバイケースですが、例えば、【性格の不一致】のほかに法定離婚事由の1~4に該当する事情があるケースや、【性格の不一致】がきっかけで、相手から暴言を浴びせられる、あるいは暴力を振るわれるようになったといったケースなどは、“証拠”がそろっていれば比較的認められやすいといえるでしょう。
後者の場合、実際に相手の暴言が記録されている音声データや動画、LINEやメールの文面、暴力によってできた傷あとの写真、診断書などのほか、暴言や暴力を受け始めてから離婚を決意するまでの経緯を詳細に記した日記などが有効な証拠となり得るでしょう。
長期間の別居を経る
前項であげたような決定的な証拠が用意できそうにないという場合には、長期間にわたり別居していることを証明していく方法もあります。夫婦には同居の義務(民法752条)がありますから、離婚を前提とした別居が長期化すればするほど、婚姻関係が破綻していて、回復の見込みもないと裁判所に認められる可能性があるのです。
長期間の別居を証明するには、別居の期間や居所を分けている証拠となる住民票や、別居先の賃貸借契約書等が考えられます。
なお、“長期間”とは、婚姻関係に対して“長期間”といえるかどうかがポイントとなります。そのため、婚姻期間やその他夫婦が抱える事情ごとに判断が異なりますが、裁判例を参考にすると、裁判で認められ得る別居期間としては、3年~5年程度が一つの目安といえるでしょう。
性格の不一致での離婚の進め方
【性格の不一致】での離婚は、相手との“話し合い”がうまくいくかどうかが最大の肝になります。無事離婚することで合意できれば「協議離婚」が成立しますが、話し合いがうまくいかなければ「離婚調停」を申し立て、今度は調停委員を挟んで再度話し合いを行います。
裁判は、これらの“話し合い”がどうにもうまくいかなかった場合の最終手段であり、裁判所がさまざまな要素から離婚の可否を検討します。しかしながら、【性格の不一致】をもって夫婦関係の破綻を証明するのは難しいケースが多いため、いきなり裁判等まで進むのではなく、離婚の解決事例が豊富な弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士へ相談されることをおすすめします。
離婚の切り出し方やタイミング
離婚を切り出したとき、相手側にも思い当たる節があるような決定的な“何か”がある場合とは違い、【性格の不一致】で離婚したい場合には、相手にも冷静に受け止めてもらい、お互いの意見をきちんと交換できる話し合いの場を持つことが大切です。
自分の気持ちを言葉にしてうまく相手に伝えることが難しいという方は、一度文章に書き起こしたり、手紙やメールなどで伝えてみたりするというのも手です。
このとき、相手を攻撃するような言葉を書き並べることは望ましくありません。相手の神経を逆なでして話し合いの場が持てなくなると、最終目的である「離婚」が遠のくおそれがあるからです。例えば、「そちらの気持ちも尊重したいので、1回話し合いをしましょう」と申し出るくらいのスタンスが理想です。
また、冷静な話し合いが期待できない場合、“第三者”を介入させることも効果的です。第三者とは、双方の共通の友人、親、そして仮に裁判に発展した場合にも強い味方となる弁護士等があげられます。
そして、離婚を切り出すタイミングですが、なるべく早く切り出すべきものの、住環境や子供を取り巻く環境等が変わるおそれもあるため、当事者や子供の転機となるタイミングが適しているといえます。例えば、退職金や年金分割の影響を考えたタイミングとすることや、子供の精神的ダメージ、氏の変更等の影響を考えて、進学・卒業、あるいは成人するタイミングとすることなどが考えられます。
もちろん、自身や子供が暴力をうけているケースなど、タイミングを計っている猶予がない場合は一刻も早く離婚準備を進める必要があるでしょう。
性格の不一致と離婚後の子供の親権について
幼児や学生など、まだ働いて収入を得ていない、経済的自立ができていない子供がいる夫婦は、父母のどちらが「親権」をもつのか必ず決めてからでないと、離婚することができません。なお、基本的に「親権」の決定において離婚理由は影響しません。そのため、仮に裁判で争うことになった場合に、【性格の不一致】を理由に離婚を切り出すと不利になる、といったようなことはありません。
また、「親権」は、これまでの監護実績や、「親権」を獲得した場合の、今後の養育環境等を考慮して、子供にとってより良い選択となるよう検討すべきです。裁判でもこういった基準で判断される傾向にあるため、例えば別居期間を経て離婚する場合、子供を取り巻く環境が安定しているとして、子供と一緒に暮らしていた親が有利になる可能性があります。
ただし、相手の了承を得ていない等、勝手に子供を連れだして別居を始めた場合などには、かえって親権者としての資質を問われるおそれがあるため、注意が必要です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
性格の不一致での慰謝料請求について
【性格の不一致】は誰にでも生じ得るものであり、一方的な暴力や不倫などとは違い、夫婦のどちらか一方が圧倒的に悪い、と言い切ることはできないでしょう。赤の他人同士が婚姻するわけですから、そもそも性格が一致しているとはいえないとさえ考えられます。そのため、【性格の不一致】のみを理由に裁判で「慰謝料」の請求が認められることは相当難しいといえます。
他方で、【性格の不一致】をきっかけに相手が暴力や不倫に走った場合には、その旨を証明することができれば「慰謝料」を請求できる可能性があります。
また、「協議離婚」での取り決め内容は夫婦の合意次第なので、請求した相手が承諾すれば、「慰謝料」あるいは「解決金」の名目で、相手にお金を支払ってもらうことも可能です。
よくある質問
性格の不一致で離婚しても財産分与を受け取ることは可能ですか?
離婚理由はどうであれ、夫婦が離婚するときには「財産分与」を行います。
【性格の不一致】という理由だけでは、相手に「自分の財産をびた一文でも渡したくない!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、名義の如何を問わず、婚姻期間中に形成した財産は“夫婦の財産”として扱われ、基本的にはそれを折半することになります。
なお、折半することに納得がいかない場合や、明らかにどちらか一方が財産形成に大きく貢献している場合には、話し合って分与割合を変更することは可能です。
離婚裁判で相手が離婚を拒否し続けた場合、離婚は認められないのでしょうか?
裁判で離婚を成立させるには、離婚をしたいと主張する側が、【性格の不一致】が法定離婚事由に該当し、夫婦関係が破綻していることを立証する必要があります。つまり、夫婦関係の破綻を立証することができれば、相手が離婚を拒否して裁判に出廷しなかったとしても、真っ向から争うにしても、離婚が成立することになります。
もっとも、【性格の不一致】のほかに不倫等の事実がある、長期にわたり別居をしているといった事実があるなどの他の夫婦関係の破綻の事情がない限り、【性格の不一致】のみで裁判で離婚が認められることは難しいと言わざるをえません。
性格の不一致で離婚した場合のデメリットはありますか?
夫婦の主張が「離婚したい」vs「離婚したくない」の対立構造となっており、どちらも譲らない場合には、話し合いはどこまでいっても平行線となります。したがって、調停や裁判など、裁判所の手続を利用して争うことが想定されるため、自ずと離婚成立までの期間が長期化することが考えられます。
また、上記5でも説明したとおり,【性格の不一致】が理由というだけでは、基本的に慰謝料は発生しません。そのうえ、婚姻期間が短かったり、相手に資力がなかったりすると、財産分与や養育費を請求しても、離婚後に安定した生活を送れるだけのお金を確保することができないおそれがあります。
それどころか、あまりに揉める場合には、「離婚したい」と主張する側が解決金を支払うことで離婚を成立させるというケースもあります。
【性格の不一致】に対して我慢できるボーダーラインは人それぞれですが、【性格の不一致】が本当に離婚するだけの理由に値するのかどうか、慎重に検討すべきでしょう。
性格の不一致で離婚したい場合は弁護士にご相談ください
夫婦だけでなく、人間関係において誰にでも生じ得る【性格の不一致】。性格や価値観のズレを感じての離婚ですから、話し合いがこじれることも安易に想定できます。また、お互いが強く離婚を望んでいたとしても、離婚条件をめぐって争われるおそれがあります。
話し合いを長引かせたくない、早く新しい生活をスタートさせたいと考える方は、問題がこじれる前に、弁護士の介入によってどのような解決ができる可能性があるのか、一度相談してみることは非常に有用な手段です。
また、離婚当事者にとって【性格の不一致】は、これまで築いてきた“家族”という関係を断ちたいと思ってしまうほどの重大な離婚理由ですが、裁判所は法に則って判断するため、感情論ではなく、論理的な主張を組み立て、必要な証拠等をそろえる必要があります。
加えて、同じような事案でも判断が分かれるケースがあるため、どんなタイミングでどんな主張をしていくかといったテクニックやノウハウも必要となります。つまり、裁判の経験値等も問われるため、離婚手続が裁判にまで発展した場合、残念ながらご自身だけで解決するのは難しいといえるでしょう。
このような場合には、離婚事案や法的手続に明るい弁護士の力を頼ることが、目指す解決への近道になるかもしれません。
弁護士法人ALGには、さまざまな離婚事案に対応すべく、過去の解決事例をもとに、お困りの方へ最善のアドバイスができるような体制が整っております。まずはお電話にて、受付スタッフがお客様のご不安やお悩みをお伺いいたしますので、どうぞ気兼ねなくお問合せください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)