アルコール依存症を理由に離婚できる?

離婚問題

アルコール依存症を理由に離婚できる?

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介

監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士

配偶者が一日中お酒を飲んでいる、お酒を飲んで暴れたりするといったアルコール依存症が疑われる場合、配偶者との離婚も考える方も多いのではないかと思います。 厚生労働省によれば、アルコール依存症とは、「アルコールを繰り返し多量に摂取した結果、アルコールに対し依存を形成し、生体の精神的および身体的機能が持続的あるいは慢性的に障害されている状態」をいいます。
こういったアルコール依存症の配偶者と婚姻関係を続けていくのはとても大変なことです。
そこで、アルコール依存症の配偶者との離婚を考えておられる方に向けて、本記事では、離婚問題に精通し、離婚案件を豊富に扱う弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、配偶者のアルコール依存症と離婚について解説していきたいと思います。

アルコール依存症を理由に離婚できるのか

まず、アルコール依存症の配偶者との離婚について、不貞・不倫や暴力ではないし、そもそも離婚できるのか、とお考えになる方も多いのかと思います。
そこで、アルコール依存症を理由に離婚できるのか、について解説していきます。

合意できればもちろん離婚できる

まず、大前提にですが、夫婦がお互いに離婚すること、離婚条件に合意していれば離婚届を書いて提出すれば離婚することができます。これを「協議離婚」といいます。
「協議離婚」の際には、大げさに言えば、離婚の経緯や理由などについて対立があっても、お互いが離婚について納得して離婚条件も合意して離婚届を書いて提出すれば離婚が成立します。夫婦それぞれ思うことはあるかもしれませんが、そもそも夫婦関係を継続できないと考えて、お互いが納得して合意して離婚するのであれば、離婚を認めましょう、という制度となっているといえます。
そして、当事者間の協議、つまり、「協議離婚」が調わない場合でも、家庭裁判所に「調停」を申し立てて離婚についての話し合いをすることができます。「調停」についてもあくまでも話し合いですから、「調停」の中で、離婚について条件を含めて同意できれば「調停離婚」として離婚は成立します。
なお、「協議離婚」や「離婚調停」については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。 協議離婚とは | メリット・デメリットや進め方 離婚調停とは|調停の流れと必要な準備

合意できず裁判まで発展した場合は…

例えば親権者が決まらないなど「協議離婚」もできず、また「調停」でも離婚についての話し合いがまとまらない場合には「裁判」で離婚の是非、親権者などを含めた離婚条件について判断してもらうことになります。
ただし、裁判において、離婚が成立するかどうかについては、民法770条1項に書かれている離婚事由が必要になります。具体的には、以下の5つの事由です。

①配偶者に不貞な行為があったとき
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

こうしてみると、アルコール依存症は①から④に直接当てはまるわけではありません。 そこで、アルコール依存症の程度などに加えて、その他の夫婦間の事情も踏まえて、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由と言えないかを検討します。
例えば、配偶者がアルコール依存症になり、酒を飲んで暴力を振るわれたりするなど、配偶者のアルコール依存症によって夫婦関係が破綻したといえる事情があれば、⑤に当てはまる可能性があります。
このようなケースでは、離婚問題に精通した弁護士に相談すべきでしょう。

離婚の同意が得られなければ別居してみる

アルコール依存症などを背景に、配偶者に離婚をしたいと伝えても離婚することに同意してくれない場合、特に、お酒を飲んで暴力を振るわれる場合などには、物理的に接触を避けるべく、別居することが考えられます。
別居の際には、こちら側が②悪意の遺棄と言われないように気をつける必要がありますが、正当な理由に基づく場合には問題ないケースも多いです。
加えて、アルコール依存症があることに加えて、別居が長期間に及べば、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由にあたると判断されるケースも多いので、被害に悩まれる方は、一度別居してみることを検討しても良いかもしれません。

アルコール依存症を理由にした離婚で慰謝料請求できる?

上記で見たとおり、アルコール依存症を理由として離婚できる可能性があるものといえます。
そこで、次は、アルコール依存症によって離婚せざるを得なくなった、などとして、「慰謝料」の請求ができるかを気にされる方も多いのではないでしょうか。
そこで、以下では、「慰謝料」の請求について触れていきたいと思います。

アルコール依存症というだけでは慰謝料は認められにくい

配偶者のアルコール依存症のみを離婚の原因としている場合、離婚に際して「慰謝料」が認められることは容易ではありません。
なぜなら、アルコール依存症は病気であるため、必要なのは「慰謝料」の支払いではなく、治療といえますし、慰謝料請求の際には、配偶者に「不法行為」がある必要があり、アルコール依存症というだけでは不法行為とはいえませんので、配偶者が「アルコール依存症だから」という理由だけでは、慰謝料が認められないでしょう。
ただし、アルコール依存症がきっかけで暴力を振るわれている場合には、暴力が「不法行為」にあたりうるため、「慰謝料」が。このように、状況によっては慰謝料を請求できるケースもあります。裁判所に「慰謝料」の請求が認められるにはどうすべきか、以下、見ていきましょう。

モラハラやDVを受けているなら請求できるけど証拠が必要

上記したとおり、アルコール依存症によって、モラハラやDVを受けている場合、それ自体が「不法行為」となる可能性があります。
ただし、裁判所にも理解してもらう必要があるので、暴力が振るわれていることがわかる証拠など、例えば以下のような相手の「不法行為」を証明する証拠が必要となりますので、注意して集めるようにしましょう。

  • 暴力を振るわれている・暴言を吐かれている様子を録画・録音したデータ
  • 暴力によって負った怪我の写真
  • 診断書(怪我をした場合、精神疾患にかかった場合など)

アルコール依存症の配偶者に離婚慰謝料を請求する流れ

それでは、アルコール依存症の配偶者に対して、離婚慰謝料を請求する場合には、度のように進めれば良いのでしょうか。
これについてですが、「不倫・不貞」、「暴力」といった違う理由による離婚のケースと同様、次のような流れで進めていくのが一般的です。

①当事者間で話し合う(協議離婚)
②「離婚調停」で話し合う(調停離婚)
③「離婚裁判」で判断を下してもらう(裁判離婚)

このような各手続きの中で、離婚したい理由としてアルコール依存症を挙げて、相手に対して「慰謝料」を請求して、相手が応じるか、裁判で認められるかどうか、という流れで進むでしょう。

アルコール依存症が理由の離婚に関するQ&A

以下では、アルコール依存症が理由で離婚する場合に、よくある質問について回答していきます。

アルコール依存症の妻でも、離婚時に親権を獲得する可能性はありますか?

アルコール依存症は何も男性だけに起こることではなく、女性にも起こり得る病気です。
妻がアルコール依存症の場合、だから親権を取れないというルールはありません。アルコール依存症と一口に言っても、程度には個人差があるので、子育てに影響しない程度のものかどうかは問題になるかと思います。
ただし、親権者はまだ幼い子供と生活し、子供についての重要事項を決めることになるので、重度のアルコール依存症であれば親権の取得には不利になることは否めません。

アルコール依存症の配偶者からの暴力で離婚し、慰謝料を請求しましたが支払ってもらえません。義両親に支払ってもらうことはできますか?

離婚については夫婦間の問題であるため、離婚慰謝料を支払わなければならないのは離婚した本人です。そのため、基本的に、義両親に支払ってもらうことは困難でしょう。
その場合には、例えば、裁判において、相手に離婚慰謝料の支払いが認められた場合、配偶者本人の財産などから強制的に支払わせるような手続をとることも可能です。

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アルコール依存症の配偶者とスムーズに離婚するためには、弁護士にご相談ください

これまで見てきたとおり、配偶者がアルコール依存症だからといって、それだけで直ちに離婚できるわけではないこと、また、アルコール依存症のみで「慰謝料」がもらえるわけではないことはお分かりいただけたと思います。
しかし、アルコール依存症の配偶者のもとで生活を続けなければならないわけではなく、暴力等を回避すべく別居や離婚を検討すべき事情ではあると言えます。
弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は、離婚問題に精通し、これまで数多くの離婚案件を取り扱ってきましたので、ぜひご相談いただければ経験豊富な弁護士が、あなたの離婚をサポートします。

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介
監修:弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。