相続人調査の重要性と調査方法

相続問題

相続人調査の重要性と調査方法

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介

監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士

近しい方が亡くなると、故人の財産を誰がどのように引き継ぐのかという相続の問題が生じます。
故人の葬儀等の供養を終え、故人との別れを惜しむ間もなく、相続の問題は押し寄せてきます。
相続の際、故人の財産を引き継ぐのは相続人であることが多く、相続の際に、【相続人調査】は必須な手続といえます。
そこで、相続の際に必須となる【相続人調査】の注意点などについて、相続問題、遺産分割問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、以下解説したいと思います。

相続人調査の重要性

相続の際に、【相続人調査】は必須な手続といえます。
例えば、遺産分割協議については、相続人全員で協議をする必要があり、相続人が一人でも欠けていた場合には、遺産分割協議は無効となり、やり直しが必要になります。
また、遺産分割協議に先立って、凍結された故人の口座から預貯金を払い戻しする際にも、相続人全員の同意が求めることになります。
このように、相続の際に、【相続人調査】は必須であり、まず、相続人が誰か、そしてどこにいるのかなどの情報収集は忘れずに行うようにしましょう。

相続人調査の方法

では、その【相続人調査】をどのようにするかについてですが、まずは、①戸籍を集めることになります。
生まれてから死亡するまでの故人の戸籍を全て漏れなく集める(故人の死亡が記載された戸籍から順に遡る)ことで、結婚したのか、子供はいるのか、親は誰なのか、兄弟姉妹は誰なのかが分かることになります。
そこから、子供の戸籍や親の戸籍、兄弟姉妹の戸籍等を見て、相続人となる方を確定していきます。
相続人の確定が済んだ場合には、相続人の相関図・関係図(生年月日や死去している場合には死亡日なども記入)を作成すると良いでしょう。

相続人調査に必要になる戸籍の種類

【相続人調査】においては、上記したとおり、故人の死亡が記載された戸籍から順に遡っていく必要がありますが、生まれてから死亡するまでの故人の戸籍を漏れなく集めることが必須です。
ただ、相続人の確定のためには、それだけでは足りません。相続人の方が亡くなるなどして代襲相続が起こる場合もありえるので、相続人の方が生きているのかなど相続人の方の戸籍も集める必要があります。
では、戸籍については、どのような種類のものがあるのか以下詳しく見て聞きましょう。

戸籍謄本

『戸籍謄本』とは何かに触れる前に、「戸籍」が何なのかを見ていきましょう。
「戸籍」には、生まれたことや結婚したこと、亡くなったことまで個人の一生が記録されており、身分関係(夫婦、親子などの関係)や本籍地などが記載されています。結婚の際の婚姻届やパスポート、相続の際に「戸籍」が必要となることから、見覚えのある方もいらっしゃるかと思います。
そして、『戸籍謄本』とは、『戸籍全部事項証明書』ともいいますが、「戸籍」の原本の情報全ての写し(コピー)です。そもそも、『謄本』とは写し(コピー)を指します。
紙で戸籍を管理していた時代には、『戸籍謄本』という名前で呼ばれていましたが、平成16年頃に「戸籍」が電子化されてからは、『戸籍全部事項証明書』と呼ばれるようになりました。
【相続人調査】においては、この『戸籍謄本』が必須になりますので、覚えておくようにしましょう。

除籍謄本

上記で見た戸籍謄本と似たものとして、『除籍謄本』というものがあります。
まず、『除籍』というのは、死亡・転籍(本籍地をかえること)や結婚等により戸籍に入っていた人がいなくなり、閉鎖された戸籍のことを指します。
そのため、『除籍謄本』とは、すでに閉鎖された戸籍の情報の写し(コピー)です。戸籍に記載されている全員が、本籍地の変更(転籍)をしたり、婚姻や死亡等の理由で戸籍からいなくなったことで戸籍が閉鎖された場合に、その記録として残っているのが除籍謄本です。
【相続人調査】において、故人の出生までさかのぼる場合に、この『除籍謄本』が必要になることが多いので、覚えておくようにしましょう。

改製原戸籍

上記の戸籍謄本、除籍謄本などを取り寄せる際によく出てくるものとして、『改正原戸籍』というものがあります。
『改正原戸籍』というのは、法改正が行われ様式が変わる以前の「戸籍」のことを指します。
「戸籍」については、その歴史の中で、法改正や電子化などによって様式・フォーマットが変わっており、その様式・フォーマットが変わる前の古い戸籍のことを「改製原戸籍」と呼びます。
簡単に言えば、『改製原戸籍』は「旧型の戸籍」というふうにとらえると分かりやすいかもしれません。

相続人調査に必要な戸籍は1つだけではない

【相続人調査】においては、すでに述べてきたとおり、故人の出生~死亡までのすべての「戸籍」が必要になりますし、各相続人の「戸籍」も必要になるため、必要な「戸籍」は1つだけではありません。
なぜなら、「戸籍」は、婚姻や転籍、法改正などにより新しい「戸籍」が作られ、前の「戸籍」で抹消された事項は新しい「戸籍」には引継ぎされないため、前の「戸籍」へさかのぼっていく必要があります。

生まれてから死亡するまでの戸籍すべてが必要

【相続人調査】においては、何度も言うとおり、故人の出生から死亡までの「戸籍」が必須です。
例えば、「戸籍」の筆頭者であるAさんに相続が発生したため、Aさんの相続人である子は何人いるか調べようする場合、結婚等によりAさんの「戸籍」から出ていった子たちは、Aさんの死亡が記載されている最新の「戸籍謄本」には記載されていないでしょう。
また、例えば、Aさんが現在の妻とは再婚である場合、前妻との間の子については、離婚時にその子が母親の「戸籍」に入ったケースなどでは、前の婚姻時の「戸籍」までさかのぼらないとその子の存在を把握することはできません。
このように、相続人となる子や兄弟はこれで全員なのかと確認するために、故人の出生から死亡まで「戸籍」をさかのぼる必要があるのです。

亡くなった人に子がいた場合

故人に子がいた場合、その子は法定相続人になります(民法887条1項)。
また、配偶者がいる場合には、配偶者も法定相続人になります。
そのため、この場合、故人の戸籍(配偶者の戸籍も兼ねているはずです)、子の戸籍(結婚して新しく戸籍を作っている場合など)は必須です。
なお、故人に子がいないと思っていた場合でも、遺言による認知(民法781条2項)がされている場合や、離婚した前妻との間に子がいる場合、婚外子を認知している場合、養子縁組をしている場合等もありますので、4.1のとおり、故人の戸籍については出生から死亡まで全て取りそろえるようにしましょう。

亡くなった人に子がいなかった場合

故人に子がいなかった場合、故人の直系尊属(親、祖父母)が相続人となり、直系尊属がいないときは被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
ただし、故人の子が、故人より先に死亡していていた場合、相続人の欠格事由に該当する場合や排除された場合には、故人の孫(故人の子の子)が代襲相続人となります。
故人に配偶者がいる場合、配偶者も法定相続人になります。

この場合、故人の戸籍、直系尊属の戸籍、配偶者の戸籍が必要になります。 なお、故人の兄弟姉妹について、故人よりも先に死亡していた場合、相続人の欠格事由に該当する場合、排除された場合には、その子が代襲相続人となります。

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抜け漏れなく戸籍を取得する方法

故人の戸籍をもれなく収集するには、故人の死亡したときの戸籍から過去に遡っていくようにしましょう。故人が、他の戸籍から転籍した場合、離婚・婚姻等により新たに戸籍が編成されていた場合、戸籍が改製されていた場合等には、1つ前の本籍地の記載を手がかりに、1つ前の本籍地の市区町村役場から戸籍を取得することにより、戸籍を過去に遡っていきます。
つまり、

①死亡したときの戸籍謄本(除籍謄本)を取得する
②①の戸籍の中から「1つ前の本籍地」が記載されている箇所を見つける
③見つけ出した「1つ前の本籍地」の戸籍謄本を取得する
④②と③を繰り返す

という方法で、漏れなく戸籍を収集するようにしましょう。

戸籍を取得出来たら記載内容を確認する

戸籍を取得した場合、戸籍に書かれている内容をきちんと確認しましょう。
特に、「出生」、「認知」、「養子縁組又は離縁」、「婚姻又は離婚」など法定相続人の範囲に影響を及ぼす記載や、戸籍が作成された原因やいつ戸籍が編成されたかという日付は確認すべきです。
後者については、改製などにより戸籍が作成されているときは、その前の記録が分からないため、当該戸籍はいつからいつまでの期間を対象としている戸籍であるのかの確認は必須です。

古い戸籍は確認が困難なことも

最新の横書きの戸籍ではなく、過去の縦書きの戸籍ですと、解読が難しいケースも多いです。過去の戸籍に遡っていくと、縦書きの戸籍で手書きの戸籍もあり、手書きの場合、現在とはつかわれている漢数字の表記が違うなどしており、内容を読み取るには慣れが必要です。
解読に難渋する場合、戸籍を管理する市町村役場の職員に確認することが最善です。

相続関係相関図を作成したら相続人調査完了

上記のように、必要な戸籍をすべて取り寄せたら、それらの戸籍から誰が法定相続人となるのかを民法の規定(配偶者がいれば配偶者、その他に、子がいるか、子がいないなら直系尊属は生きているか、兄弟姉妹は誰がいるかなど)に照らし確認します。
その上で、その内容を『相続人関係図』にしておくべきでしょう。
そして、この『相続人関係図』が作成出来たら、相続人調査は完了となります。

相続人調査をしっかり行うことで後々のトラブル回避にもつながります。弁護士へご相談下さい

「誰が相続人になるか」は、日常的な法律知識として多くの方がご存じです。
しかし、いざ親族が亡くなり、自分が相続人の立場になってみると、戸籍の収集が大変だったり、相続人の範囲が分からなくなる、という事態が発生するケースも散見されます。
相続人が一人や二人のケースで、かつ相続について争いが生じないような場合でも、相続財産を引き継ぐためには、戸籍を集めておく必要があります。
また、相続人が複数人いたり、相続に関して争いが発生している場合、遺産分割協議の前提となる相続人に漏れがあると、それまで行ってきた協議等がすべて無駄になってしまう恐れがあります。
そもそも、相続手続を進めようとしても、相続放棄等をすべきか、遺産分割協議をどのように進めるべきかなど検討を要する事項も多いため、戸籍の収集はなるべく速やかに行うべきといえます。
いずれにしても、相続が発生すると相続人調査(戸籍の収集)は必須です。
遺産に関する手続を少しでもスムーズに進めるためにも、相続人の確定に戸惑ったときは、相続問題、遺産分割協議問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士にぜひ御相談ください。

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介
監修:弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。