監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
ある日突然、裁判所から別居した妻(夫)が「離婚調停」を申立てたから出席するようにと通知が届くことがあります。
突然の通知に驚かれるかたも多いかと思いますし、自分としては離婚したくないという思いがあったり、「離婚調停」とは何か、など非常に迷われることも多いかと思います。
そこで、本記事では、離婚案件、離婚調停を多く扱い、精通している弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、「離婚調停」を拒否すること、その注意点などについて解説していきたいと思いますので、ぜひご参照ください。
目次
そもそも離婚を拒否することはできるのか
そもそも、妻(夫)から離婚を申し出られたときに、拒否してもよいのでしょうか。
「協議離婚」、「調停離婚」、「裁判離婚」が何であるかを解説し、拒否する場合にはどうするのかを以下の表にまとめました。
離婚の種類 | 解説 | 拒否の仕方 |
---|---|---|
協議離婚 | 裁判所を通さずに、夫婦間での話し合いをして、合意(協議)で離婚するもの | 相手に離婚するつもりはないと伝えて離婚を拒否する |
離婚調停 | 裁判所の「調停」という手続きを利用して、調停委員という第三者を介して話し合いにより離婚を合意して離婚するもの | 「調停」は基本的に話し合いなので調停委員を介して離婚するつもりはないと伝えて離婚を拒否する |
離婚裁判 | 協議や「調停」などの話し合いでは合意による離婚が成立しないため、裁判所の離婚判決により離婚が成立するもの | 離婚事由がないことを主張立証して棄却判決を求めていくなどして離婚を拒否する |
拒否が難しいケース
それでは、拒否が難しいケースはあるのでしょうか。
「協議離婚」や「調停離婚」の場合、話し合いであるため、妻(夫)から離婚を申し出られたとしても、ご自身で離婚したくないと拒否していれば離婚が成立することはありません。
ただし、「裁判離婚」の場合、裁判官が離婚させるべきと判断すれば、いくらご自身で拒否しても、最終的には判決が出されて離婚が認められてしまうこともあるでしょう。
そのため、「裁判離婚」の場合には、裁判官が判断するということを意識する必要があります。
離婚調停の拒否について
それでは、「離婚調停」については、拒否をすることはできるのでしょうか。
上記でも少し触れましたが、「離婚調停」は話し合いですので、離婚するつもりはないと拒否の意を調停員に伝えれば、離婚は成立しません。
それでは、離婚調停を拒否することにデメリットはないのでしょうか、以下見ていきましょう。
拒否した場合のデメリット
そもそも出席しない、出席しても離婚拒否のみ主張するなど、拒否といっても程度・レベルがあると思いますが、離婚調停を拒否したからといって、相手が離婚意思を翻す可能性は高くなく、むしろ、話し合いが無理であると余計に離婚意思を強めるおそれがあります。
また、「離婚調停」を欠席し、こちらの考えを一切伝えないことにもメリットはありません。
さらに、「離婚調停」への欠席を繰り返せば、当事者に話し合う気がなく合意の可能性がないものとして、裁判所は早期に「離婚調停」を不成立とすることになります。
そうすると、相手が「離婚訴訟」を提起して、離婚が成立する時期が早くなってしまうおそれすらあります。
欠席する場合の連絡方法
離婚調停が申し立てられると、裁判所からいつ調停が開かれるかという日程が記載された呼出状が届きます。この呼出状には、担当書記官の名前が記載されていますので、以後、欠席などの事務連絡は、この担当書記官宛てに行うこととなります。
離婚の話し合いに応じるつもりはあるけれど、指定された期日に都合がつかない場合、事前に裁判所に電話をして今回の期日は日程が合わないため欠席するが次回期日には出席したい旨や期日を変更して欲しい旨を伝えましょう。
離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる
「離婚調停」が不成立となった場合、次は「離婚裁判」が提起される可能性が高いでしょう。
「離婚裁判」では、裁判所が、法律に基づき、離婚請求が認められるかどうかを判断しますが、要はこの夫婦はもう破綻しているかどうかを判断するとお考え下さい。
そうすると、「離婚裁判」に欠席を続けるなどの拒否の姿勢を取った場合、離婚を争う意思がない、だとか、夫婦関係は破綻しているものとして、裁判所が離婚を認める判決を出す可能性が高くなるでしょう。
離婚調停での財産分与の拒否はできるのか
「財産分与」とは、夫婦が婚姻中に築き上げた財産を、離婚に伴って夫婦間で清算するというもので、一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。
「財産分与」は離婚に伴うものですから、離婚自体を拒否している場合には、「財産分与」も拒否していることになります。
他方で、「離婚調停」は、離婚に関する諸条件を協議する場でもあるので、離婚に同意していても、「財産分与」で合意できないこともありえます。
この場合でも、財産分与を拒否する、折り合わないことで、「離婚調停」が不成立となった場合は、「離婚訴訟」が提起されることになるでしょう。
通帳開示を拒否する場合
「財産分与」の拒否の姿勢として、通帳の開示を拒否するケースも見られます。
つまり、「財産分与」のための資料として相手方が通帳の開示を求めてくることに対して、拒否するということです。
離婚そのものを拒否する場合、「財産分与」も拒否しているでしょうから、通帳の開示も必要がないという理由で拒否することはできるでしょう。
ただし、「離婚裁判」の場合はもちろん、「離婚調停」の段階でも「調査嘱託」という方法で相手から通帳を持っている金融機関に問い合わせてこちらの取引履歴を開示させられる可能性はあります。
離婚調停の拒否に関する質問
「離婚調停」の拒否に関してよくある質問について取り上げたいと思います。
離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?
「離婚調停」を拒否していても、別居期間が長期間に渡ると、客観的に夫婦関係が破綻していると判断され、裁判になれば「裁判離婚」が認められる可能性が高くなります。
そのため、相手から別居したいと言われた場合は、別居すると話し合いが滞ることもありますので、別居に至らないように落ち着いて話をすべきです。例えばですが、法律上夫婦には同居義務があることなどを伝え、落ち付いて話し合うなどすべきでしょう。
離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?
「離婚調停」で離婚を拒否する意思を明確にしても、相手は離婚を求めているわけですから、話し合いが成立することはないでしょう。
また、話し合う姿勢がないことに相手としては離婚の意思をさらに強めることになるおそれもあります。 そのため、2、3回調停が行われた後、調停は不成立となり、離婚を求める相手が「離婚訴訟」を提起する可能性が高いでしょう。
相手との復縁を望むなら、裁判所に「夫婦円満調停」を申し立てて、夫婦関係の継続に向けて話し合うというのもひとつの方法かと思います。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください
「協議離婚」で夫婦間の話し合いをしたけれども協議が調わず、また、「離婚調停」も不成立に終わったとしても、「離婚裁判」の段階で基本的には離婚事由がないと離婚は認められません。
しかし、これまで見てきたとおり、単に拒否の姿勢を示すだけでは話し合いにならず、協議や調停を拒否し続けると不利益を被ることになるおそれもあります。
離婚についてどのように進めていくべきか、「離婚調停」を拒否したいと考えている場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は、これまで数多くの離婚案件を経験しており、どのように進めていくべきかアドバイスできるかもしれませんので、ぜひ一度ご相談をお待ちしております。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)