監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
離婚を決意したとしても、配偶者との協議により早期に円満に離婚を成立させられる方は実際には多くいるわけではありません。
そもそも離婚するのかどうか、離婚するとしても子供の親権はどうするのか、養育費はどうするのか、財産分与や慰謝料はどうするのか、など離婚の際に決めておくべきことは多く、どこかで対立してしまうと協議も進まず、離婚自体成立しないことも多いためです。
こういった場合、当事者間の協議は難しいとして、調停に移行する方もいます。
そこで、離婚に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、離婚調停について以下詳しく解説していきます。
目次
離婚調停とは
離婚調停とは、正確には、夫婦関係調整調停という夫婦関係について調整してもらう調停であり、離婚したいという申し出をして、離婚について裁判所を介して話し合いをしていくものです。
当事者間ではなかなか話し合いの折り合いがつかない場合、相手方と直接協議することが難しい場合などに、裁判所に間に入ってもらって、再度話し合いを進めていくのです。
調停というのは、あくまでも裁判とは異なり、どちらの言い分が正しい、慰謝料はどれくらいが適正な額なのかなどを判断してもらう場ではなく、調停委員が間に入ってあくまでも話し合いで解決を図るものです。
離婚調停のメリット・デメリット
離婚調停のメリットは、公平中立な立場である裁判所が間に入って、当事者は直接顔を合わせることなく協議を進めていくために、落ち着いて協議を進めることができるという点が挙げられます。裁判所の小部屋で、当事者が交互に調停委員に話を聞いて調整してもらうために、当事者間の協議よりも進展はしやすいことがあります。
他方で、離婚調停のデメリットは、1でも少し触れたとおり、どちらの言い分が正しい、慰謝料の額はいくらが適正なのかなど判断してもらうのではなく、あくまでも協議による解決を図るということで、当事者の一方が離婚を拒む、または慰謝料額などの条件が折り合わない場合には、調停は成立しません。裁判所も支払いを命じるなどの態度には出ませんので、調停に行けば離婚の問題も解決するというわけではないことにはご注意ください。
離婚調停の流れ
では、離婚調停はどのように始まり、どのように進んで終わっていくのか、離婚調停の流れについて以下解説していきます。
家庭裁判所に調停を申し立てる
離婚調停を始めるには、まず、家庭裁判所への調停の申し立てが必要です。
具体的には、離婚を求めたい相手方がいる住所地を管轄する家庭裁判所へ夫婦関係調整調停の申立書を提出する必要があります。
申立書等の必要書類一式については、近隣の家庭裁判所に用意されていますから足を運ぶのも一つですし、申立書であれば、以下の裁判所のリンクにも用意されていますから、ご参照下さい。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/index.html
調停開始
3.1のとおり、離婚調停の申立書等の書類を裁判所へ提出した後、裁判所が申立書の内容などを確認し、調停委員を用意する、日程を調整するなどして、調停を行う日を決めて夫婦を呼び出します。
申立てを行ってからおよそ1~2か月後に調停の初回の期日が決められ、呼び出されることが多いです。
調停当日は、裁判所で受付を済ませ、夫婦は別々の待合室で待機して、やがて担当の調停委員から裁判所の小部屋(調停室)へ呼び出されます。夫婦が交互に調停室に入り、一人ずつ調停委員に話を聞いてもらうことになります。
30分程度話したら、他方当事者へ交代し、また30分程度で交代する、というやり取りを3、4回ほど続けるということが一般的です。そして、調停の最後に、次の調停期日の日程を調整し、また、次の調停期日までの宿題・準備事項を示されて、調停期日を終えることになります。
調停終了
3.2のように調停期日を数回重ねて、離婚調停が成立または不成立で終了することになります。
以下、調停の成立、不成立の場合を具体的に見ていくとともに、そのほかに調停が終了する場合として調停の取下げの場合についても見ていきたいと思います。
調停成立
離婚調停の成立とは、調停での話し合いを重ねて、当事者が離婚自体の合意、また、親権・養育費などの離婚条件について合意した場合に、調停の中で離婚を成立させるというものです。
調停の成立の際には、調停調書という書類に、離婚条件などを記載し、それを担当裁判官が当事者双方のそろった場で読み上げて、双方の最終確認を取り、調停を成立させます。
調停が成立した場合、その成立日に離婚が成立したという扱いになることが基本なので、この点にも注意しましょう。
調停不成立
離婚調停の不成立とは、調停での話し合いを重ねても、例えば、当事者の一方が頑として離婚に同意しない、もしくは、離婚に合意していても親権者をどちらにするか決まらない、慰謝料・財産分与の額などで双方の主張額に大きな隔たりがある場合など、離婚についての合意が成立する見込みがない場合に、調停の手続きを不成立という形で終えるものです。
また、離婚調停は出席が強制されるものではなく、出席しないという態度も話し合いに応じない態度とみて調停を不成立にすることもあります。
調停取り下げ
調停が終了する場合として、調停の取下げというものがあります。
調停を申し立てて始めったものの、例えば、当事者間で話の折り合いがついた、復縁したなどの場合には、調停の取り下げということができます。
取り下げにあたっては、相手方の同意は不要なので、申立人側でいつでも取り下げを行うことができます。
離婚調停の準備
次に、離婚調停にあたって、どのような準備をしておけばよいかを詳しく見ていきたいと思います。
申立書の作成前に確認すること
上記3.1のとおり、調停の申立書等の必要書類を作成して、裁判所に提出すれば離婚調停が始まっていくことになるのですが、申立てにあたって以下のような点を確認するようにしましょう。
- 離婚調停とともに、婚姻費用分担調停を申し立てるか
→離婚調停と婚姻費用分担調停は別手続きですが、同時に申立てを行う方も多いです。 - 離婚調停で何を申し立てるのか
→親権者の指定はどちらにするのか、養育費・慰謝料・財産分与はいくら請求するのか相当額で良いのか、年金分割も申し立てるのか、など何を調停の中で決めてもらいたいのかをはっきりしておくようにしましょう。 - 管轄の裁判所はどこか
→3.1のとおり、相手方の住所地を管轄する裁判所へ申し立てることが必要です。
申立書を作成する
4.1のとおり、離婚調停の際に何を申し立てるかなどが決めたら、次はいよいよ申立書の作成です。
申立書については、申立人、つまりあなたの情報と、相手方、つまり他方配偶者の情報、また、未成年の子供がいる場合の子供の情報を書くほか、4.1でも述べたように、何を申し立てるのかも記載するようにしましょう。
また、調停委員や裁判官は、なぜあなたが離婚調停を申し立てたのか事前情報は知らないため、調停員や裁判官になぜ調停を申し立てたのか、これまでの経緯なども書いておくと良いでしょう。
第一回調停期日までの準備
3.2のとおり、調停の申し立て後、1~2か月後に初回の調停期日が決められます。
そのため、申し立てた後は、初回期日に向けた準備をしておくようにしましょう。
例えば、調停委員に対して何を話すのか、どこまで話すのか、何か証拠があればそれも見せるのか、など事前のシミュレーションなどはしておくようにしましょう。
調停は、調停委員を介して話し合いを進めていくため、服装や証拠などを整えていくと、調停委員の印象も多少良くなるかもしれません。
調停期日ごとの準備
3.2のとおり、調停期日は、およそ30分交代で申立人、相手方の話を交互に聞いて進めていきますが、初回の調停期日で調停が成立することは非常に少ないです。
この場合には、次回の調停期日を決め、それまでに申立人・相手方双方に宿題・準備事項が設けられることになります。
また、調停委員からの宿題・準備事項だけではなく、相手方の言い分を踏まえて、どのようなことを準備・用意すべきかもご自身で考えて動いていけると良いでしょう。
調停の付属書類について
調停の申し立ての際には、3.1で見たような、調停の申立書だけでなく、事情説明書、(未成年の子供がいる場合には)子供に関する事情説明書、進行に関する照会回答書などの提出もしておくべきです。
これらは、今後の調停の進め方について調停委員や裁判官へ事前情報を提供するものであり、こういった書面の内容をなるべく充実して記載しておくことで、調停がよりスムーズに進みやすくなるためです。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停で聞かれること
では、離婚調停では、調停委員からどのようなことについて聞かれるのでしょうか。
4.2でも少し触れましたが、調停委員や裁判官は、夫婦のこれまでの経緯、あなたが離婚調停を申し立てるにいたった事情などは事前に分かりませんので、以下のような事情をまずは確認されることが多いです。
- 結婚するに至った経緯・時期
- 子供が生まれた時期・子育てに関する事情
- 夫婦関係が悪化した経緯・事情・時期
- 離婚調停を申し立てるに至った経緯・これまでの協議の状況
離婚調停にかかる期間や回数
離婚調停にかかる期間や回数は、ケースによって当然異なりますが、基本的には、期間としては4~7か月、回数としては3~5回程度で調停成立もしくは不成立になっていることが多いかと思います。
3~5回程度調停を重ねた場合、どこに争点があるのか、その争点について当事者双方の考えはどのようなものか、どこかで折り合いがつきそうかなどある程度見通しがつくためです。
離婚調停で決めておいたほうがいいこと
4.1で見たとおり、離婚調停の申し立ての際に、何を申し立てるかを事前に考えておきましょう。
裁判所は、当事者からの申し立てがあったことを中心に調停での話し合いを進めていくためです。
何を申し立てるかについて、改めて整理すると、以下のように整理できます。
①子供に関すること(未成年の子供がいる場合)
- 親権者 → 離婚後に、どちらが子供の親権者となるか
- 養育費 → 非親権者から親権者がいくら養育費をもらうか
- 面会交流 → 非親権者と子供との離婚後の交流について回数・時間などどのように決めるか
②財産に関すること
- 慰謝料 → 慰謝料を請求するか、慰謝料を根拠づけるどのような事情があるか
- 財産分与 → 夫婦の共有財産は、どのような内容のものがどの程度あるか
- 年金分割 → 夫婦の婚姻期間中の年金の分割を求めるか
離婚調停に欠席したい場合はどうしたらいい?
離婚調停を欠席する場合にはどうしたらよいでしょうか。
例えば、離婚調停を申し立てて、日程を決めたものの、初回の調停期日、突然子供が熱を出して調停に行けなくなった、もしくは、調停の相手方として呼び出されたが、仕事の都合でいけないなどのケースもあるでしょう。
この場合、まずは、担当する裁判所へなるべく早く連絡を入れるようにしましょう。
調停については、基本的に担当する裁判所、調停の事務担当の職員(事務官・書記官)が決められているので、この方に連絡を入れるようにしましょう。
無断で欠席をした場合には、調停委員からの印象も悪くなる可能性もありますから注意が必要です。
離婚調停が成立したら
離婚調停が晴れて成立すれば、それですべて終了というわけではありません。
以下に述べるような注意点があるので、全て手続きが完了するまで気を抜かないようにしましょう。
調停調書の確認
まず、調停調書の内容等の確認をするようにしましょう。
3.3.1でも触れましたが、調停が成立した場合、調停調書という書類に、離婚条件などを記載し、それを担当裁判官が当事者双方のそろった場で読み上げて、双方の最終確認を取り、調停を成立させます。
この調停調書は後日、裁判所から郵送されるのが基本です。
調停調書が届いたら、誤字や誤記、内容に誤りがないかなどを確認しましょう。多少の誤記や誤字であれば、早めに裁判所へ連絡すれば修正・訂正に応じてくれることがあります。
離婚届を提出する
また、離婚届を提出しなければならないことにも注意しましょう。
3.3.1でも少し触れましたが、離婚調停の成立の日に離婚自体も成立したと扱うことが基本なのですが、これはあくまでも裁判所で決めたことにすぎず、早期に戸籍等にも反映させる必要があります。
そこで、調停での離婚成立後10日以内に、離婚届を提出するよう求められています。
この場合、調停で離婚が成立しているため、離婚届に提出する側(多くは妻側)の署名押印をして(夫の署名押印は不要)、調停調書(戸籍提出用)を併せて市町村長の役所へ提出するようにしましょう。
なお、10日という期間制限については、期間を過ぎても無効等にはなりませんが、場合によっては過料に科される可能性があるため注意しましょう。
その他、提出すべき書類
上記のほかにも、①氏に関する手続きがあります。
多くは妻側に起こるのですが、婚姻に伴って改姓があった場合、離婚の成立により、旧姓に戻るのが基本です。ただし、改姓した姓を離婚後の名乗り続けたい場合、「婚氏続称」の手続きも取るようにしましょう。
例えば、鈴木●●さんが山田□□さんと結婚して、山田●●さんになった場合、離婚すれば、鈴木●●さんに戻るのですが、婚氏続称の手続きを取ることで、山田●●と名乗り続けられるということです。
また、②子供に関する手続きもあります。
離婚届を提出したとしても、子供の戸籍は夫の戸籍に入ったままであるため、妻側が離婚後の自分の戸籍に子供を入れたい場合には、家庭裁判所にて氏の変更許可の手続をし、入籍の手続きを取る必要があります。
さらに、③年金分割の手続きもあります。
年金分割は、離婚後2年以内に手続を取らないといけないので、忘れずに行うようにしましょう。
いきなり離婚裁判をしたくても、まずは調停が必要
これまで離婚調停についてみてきましたが、中には、到底話し合いで解決することは無理だから、いきなり裁判したいと考える方もいるかと思います。
ただ、以下に述べるとおり、離婚について基本的にはいきなり裁判を起こすことはできません。
調停前置主義とは
裁判をいきなり起こすことができない、ということに強く関連するのが調停前置という考え方です。
調停前置とは、簡単に言えば、離婚や離縁など身分関係に関連する手続きなどは、人間関係の調整なども伴うため、いきなり裁判で解決するのではなく、まずは話し合いで解決すべきということで、裁判の前に調停での話し合いを求めるものです(「調停」を裁判の「前」に「置」く、ということです。)。
調停前置主義の例外
ただし、上記調停前置にも例外があり、「裁判所が事件を調停に付することが相当ではないと認めるとき」には調停前置は緩和されます。
もっとも、調停前置の例外は、相手方が行方不明で調停を申し立てられない場合、相手方が精神障害等で調停では解決できない場合、相手方が調停に応じないことが明らかな場合など限定されています。
調停を取り下げて訴訟できる場合もある
また、調停前置というのは、上記10.1のとおり、離婚や離縁などは、人間関係の調整を伴うため、まずは調停で話し合いをすることを求めるものであったのですが、調停前置は実質的な観点から判断されることもあります。
例えば、調停を4回ほど進めて相手方の態度が硬直して折り合いがつかないとして取り下げた場合、調停の不成立とは異なるのですが、実質的には、調停での話し合いを経たとして、調停前置を緩和して、調停取り下げ後の裁判を認めるということもあります。
弁護士に依頼するメリット
これまで見てきたような離婚調停を弁護士に依頼するメリットとしては、離婚調停を有利に進められる可能性があることが挙げられます。
離婚調停では、調停委員が間に入って離婚に関する話し合いを進めるので、あなたの希望する条件で離婚という解決をめざすのであれば、まずは、調停委員に、あなたの言い分を正しく理解してもらい、共感してもらうということが重要になります。逆に、調停委員の理解・共感が得られないと、調停委員が相手方をうまく説得することは期待しにくくなります。
また、離婚調停の際の時間や精神的負担の軽減が挙げられます。
日々、仕事をしながら家事・育児をしながら、並行して離婚調停の準備をしなければならないことの負担は予想以上に大きいため、場合によっては重要なポイントを看過したり、余計に時間がかかることがあります。この点、弁護士に依頼すれば、申立書等の必要書類を作成し、次回期日までの準備も整理したり、離婚条件も適切に整理してくれるでしょうから、当事者の方の負担は大きく減るといえます。
実際に、離婚調停の事件で弁護士が代理人として就いているケースは増加しており、もはや半数以上弁護士が就いているのではないかと思います。その意味で、調停では弁護士を就けずに、裁判になったら弁護士を就けるという考え方では通用しないようになってきているのでしょう。
離婚調停を希望するなら弁護士にご相談ください
これまで見てきたとおり、離婚調停は、あくまでも話し合いの手続きであるものの、何を申し立てるか、申立書等の必要書類の準備、期日当日の立ち振る舞い、期日間での準備、調停成立後の諸手続きなどやるべきことは予想以上に多いです。
この点については、弁護士に依頼することで、調停手続きを有利に進めたり、時間・精神的な負担を軽減させることも期待できるのですが、どのような弁護士に依頼しても良いわけではなく、離婚調停の経験を十分に積んだ、離婚に精通した弁護士に依頼すべきです。
弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は、離婚協議や離婚調停、離婚裁判など離婚に関連する多くの手続きに携わってきた経験と実績を数多く備えていますので、お困りの方はぜひ一度弊所にご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)