離婚裁判の流れをわかりやすく解説

離婚問題

離婚裁判の流れをわかりやすく解説

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介

監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士

夫婦のどちらかが、「離婚したい」と思った時に、離婚や離婚条件について夫婦の話し合いによって合意することができれば良いですが、中には離婚について話し合いでは解決できない場合もあります。話し合いで解決できない場合には、最終的には「裁判」を提起する必要があります。
離婚裁判を申し立てることによって、夫婦間の合意ではなく、裁判官による判決で離婚や離婚条件が決まります。

この記事では、離婚問題、裁判手続に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が「離婚裁判」の手順などについて解説していきます。話し合いでは解決せず、裁判を提起しようかと考える方の参考になれば幸いです。

離婚裁判の流れ

離婚裁判の流れは以下のとおりです。

①家庭裁判所に訴状を提出
②訴状の送達・第1回期日の指定
③答弁書の提出
④第1回口頭弁論・その後複数回の期日
⑤当事者への尋問
⑥判決の言い渡し
⑦離婚届の提出
*なお、和解で解決するケースも多くあります。

それぞれの段階でそのようなことが行われるのか、次項で詳しく解説していきます。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

離婚裁判を提起する前に

離婚裁判では、原則として離婚裁判の前に離婚調停で話し合いを行わなければならないというルールがあります(これを「調停前置主義」と言います)。この離婚調停での話し合いで離婚についての協議がまとまらなかった場合に、離婚訴訟を提起することができます。

離婚調停は、家庭裁判所で行われるものの、あくまで夫婦の協議(=話し合い)が行われる場なので、離婚裁判に比べて柔軟な対応がなされており、さまざまな理由で申し立てることができますし、双方の合意ができれば後述する法定離婚事由が存在しない場合でも調停離婚が成立します。他方、離婚裁判において、裁判官が離婚を認めるためには、基本的には以下の5つの法的離婚事由のいずれかが必要となります。

【法的離婚事由】
①配偶者に不貞行為があった時
②配偶者から悪意で遺棄があった時
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

なお、不貞行為や悪意の遺棄など婚姻関係を破綻させた配偶者のことを「有責配偶者」と言います。
原則として有責配偶者からの離婚請求は認められていませんので、注意が必要です。

家庭裁判所に訴状を提出する

まず、離婚したい側が家庭裁判所に訴状を提出します。
提出先は、原則として夫婦のどちらかの所在地を管轄する家庭裁判所です。ただし、離婚調停を行った場所が夫婦どちらの所在地と異なる場所である場合(合意管轄で裁判所を決めた場合)は、裁判所の許可が出れば離婚調停を行った場所に提出することもできます。
必要書類等は次の項目で解説していきます。

訴状提出の際に必要な書類と費用

離婚裁判の申立てに必要な書類は以下のとおりです。訴状の書式は裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

  • 訴状(2部)
  • 夫婦の戸籍謄本のコピー(原本とコピー)
  • 調停不成立証明書
  • 請求内容によって必要となる書類
  • 年金分割を求める場合は、「年金分割のための情報通知書」および写し
  • 養育費を求める場合は源泉徴収等の収入証拠資料のコピー(2部)

なお、裁判費用は訴状に収入印紙を添付する方法で納めます。また、別途郵券が必要となります。金額については裁判所のホームページで確認することができます。

第一回口頭弁論期日の通知が届く

必要書類を提出し、離婚裁判の訴えが認められると、裁判所によって第一回口頭弁論期日が指定され、夫婦それぞれに訴状等の書類と期日呼出状が届きます。
第一回口頭弁論の期日は、訴状の提出から1ヶ月後に設定されることが多くあります。

被告が答弁書を提出

被告(訴えられた側)は、訴状を受け取ると第一回期日の1週間前までに、訴状に記載してある原告の主張に対し反論する答弁書を作成し、裁判所に提出することになります。事実確認が間に合わない場合は、争う旨だけでも記載した答弁書を提出しましょう。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

口頭弁論を行う

口頭弁論とは、お互いの言い分を主張し、争いがある部分について証拠を提出するための機会です。
第一回口頭弁論の期日として、訴訟提起から約1ヶ月後に指定されることが多いとされています。
二回目以降は月に1回のペースで行われることが多いです。
審理の流れについては次項で解説します。

審理の流れ

審理の流れは大まかに以下の流れで進みます。

①争点の整理
双方の中で同意している部分、争っている部分を整理します。

② 原告から証拠の提出
争点を整理した結果、争っている事実を証明する証拠の提出をします。

③ 被告からの証拠の提出
原告の主張を否定する証拠を被告(相手方)が提出します。

④ ②③について裁判官が納得するまで繰り返し
当事者双方が争っている事情について(不倫やモラハラなどがあったか等)、原告と被告双方の証拠を踏まえてどちらの主張が正しいかを裁判官が判断します。

なお、被告が答弁書を出さず、第一回口頭弁論にも来ない場合は、基本的に被告は原告の主張をすべて認めたということになり、訴状のとおりの判決がくだされるおそれがあります。

事実の認定については以下で詳しく解説していきます。

離婚裁判における事実の認定

離婚裁判の事実の認定では証拠を提出します。
例えば、不貞行為の証拠として以下のようなものが挙げられます。

  • 探偵会社からの報告書
  • ラブホテルへの出入り写真
  • 不倫を認める、疑わせるメール・LINEのやりとり など

また、事情を知っている家族や友人、調査をした探偵に証言をしてもらう事もあります。
双方の証言や証拠が尽きれば本人尋問に入り、当事者が被告・原告の弁護士や裁判官から質問を受け、回答することで裁判官が判決を下します。

証拠調べ

口頭弁論期日等で裁判官から和解をすすめられてもなお、当事者間で和解ができない場合、裁判所において当事者尋問や証人を呼んで尋問が行われる可能性があります(これは「人証調べ」の一部です。)。
本人尋問や証人尋問について、詳しくは次の項目で解説します。

本人尋問や証人尋問

本人尋問や証人尋問の流れは以下のとおりです。

【原告本人尋問】

  • 原告の弁護士から原告に質問(主尋問)
  • 原告の弁護士から被告に質問(反対尋問)
  • 原告の弁護士から再度原告に質問(再主尋問)
  • 裁判官から原告に質問がある場合もある(補充尋問)

【被告本人尋問】

  • 被告側の弁護士から被告に質問(主尋問)
  • 被告の弁護士から原告に質問(反対尋問)
  • 原告の弁護士から再度原告に質問(再主尋問)
  • 裁判官から被告に質問がある場合もある(補充尋問)

離婚裁判の判決

口頭弁論が終わると、判決が出るまでには約2ヶ月ほどかかります。判決内容が記載された書面は双方当事者に送達されます。離婚が認める判決が下ると、離婚が成立しますが、役所に届け出を行わなければ戸籍に反映させることができないため、別途離婚届を掲出しなければならないことに注意が必要です。
なお、離婚裁判は判決が下される以外にも様々なパターンがあります。詳しい解説は次の項目で解説します。

和解を提案されることもある

離婚裁判を進めていると、その途中で裁判官から和解を勧められることも多いです。
和解の手続きは裁判が進行している最中でもいつでも可能です。

裁判官の提示する和解案で問題がないと判断する場合は、和解案を受け入れた方が、和解を受け入れた段階で「和解調書」が作成され離婚が認められるので、通常の判決を待つより早く離婚することができます。また、和解が成立した場合には、判決と異なり、控訴ができなくなるため、その点からも紛争の長期化を防ぐことができます。

早期に終わらせたいのであれば、裁判官からの和解案を受け入れるのも良いでしょう。

訴えの取下げにより裁判終了

原告が、訴えの取り下げを行うことで、裁判を終了さることもできます。
ただし、訴えの取り下げを、被告が答弁書等準備書面が提出したあとに行いたい場合には、被告の同意を得ることが条件となります。
なお、訴えの取り下げを行った場合、最初から裁判が係属していなかったことにされますので、裁判が始まる前の状況に戻るだけで、離婚が認められたことにはならないので注意が必要です。

判決に対して控訴できる

離婚裁判で負けてしまった場合、その判決に不服があれば高等裁判所に控訴することができます。
控訴は判決の送達を受けてから2週間以内に行わなければなりません。

判決後の流れ

判決で離婚が認められると同時に離婚が成立します。原告は離婚が確定した日から10日以内に以下書類を本籍地か住所地の市区町村に提出します。

  • 離婚届(相手方証人の署名・捺印は不要)
  • 判決確定証明書
  • 判決の省略謄本

離婚裁判にかかる期間

離婚裁判は早くて半年、長くて3年ほどかかることがありますが、具体的な事実によって期間は異なります。たとえば、親権や財産分与など、離婚条件で激しく争う場合は期間が延びる傾向にあります。

よくある質問

離婚裁判のよくある質問に答えていきます。

離婚届けを提出した後に必要な手続きにはどのようなものがありますか?

離婚裁判に勝訴し、離婚届と必要書類を提出すれば離婚は成立しますが、離婚には様々な手続きがあります。

婚姻により氏を変更した側が、離婚後も婚姻時と同じ氏を名乗りたいとき
離婚届を提出してから3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出します。

子供の親権をとる場合
子供の氏を親権者と同じにする手続き後、親権者の戸籍に入れる手続きをします。

その他手続き
氏や住所変更があった場合には銀行、カード類、公共料金などを変更する必要があります。

離婚できたことにほっとしてしまう気持ちは分かりますが、手続きには期限もあるため、まずはそれぞれの手続きを済ませてしまいましょう。

離婚に合意しており養育費のみ争う場合はどのような流れで離婚裁判は進みますか?

離婚裁判の中で、附帯処分として、養育費の請求を行うことは可能です。
また、養育費のみ争う場合には、まずは「調停」を行って、その中で合意に至らなければ自動的に「審判」に移行することがあります。
一般的には養育費は「養育費算定表」を用いて、お互いの収入により決定するのが基本です。そのため、ある程度は自分の払う(受け取る)養育費の額が推測できます。
調停調書や判決等で養育費が決まった場合、その後養育費が未払いとなった際に、給与の差押えなどの強制執行を行うことが可能です。
なお、養育費の強制執行については、以下の記事でも解説しておりますので、ぜひご参照ください。

養育費の強制執行について

離婚裁判が不成立になってしまったら離婚は諦めるしかありませんか?

離婚裁判が不成立で確定した場合は、同じ理由で直ちに離婚裁判を起こしても離婚は認められないでしょう。
しかし、裁判を起こすということは、夫婦関係は冷え切っていると推測できます。もうすでに別居生活に入っているのかもしれません。
裁判で離婚するには「法的離婚事由」が必要となり、この中には「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとき」という項目があります。別居の年数によってはこの事由に当てはまります。
婚姻期間等の諸事情によるので一概には言えませんが、一般的に別居期間が3~5年あると「婚姻を継続し難い重大な事由」とされる可能性があります。
夫婦関係は時間の変化により、様々な問題が出てくるものだと思います。別居期間がさらに長期化したなど裁判後に新しい離婚事由ができたとして、離婚を求めることは可能です。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は弁護士にご相談ください

調停で和解することができず、離婚裁判となるとき、はじめての裁判だという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
法的知識がないと裁判がどのような流れで進むのか、何を準備したらいいのか分からず不安な気持ちになると思います。
そんな時は離婚問題に精通した弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、法律の専門家として、離婚裁判の流れや必要なものなどを熟知しています。あなたのお悩みにより沿い、よりよいアドバイスをします。
ご自身だけで離婚裁判の準備をすることはとても難しく、「離婚したい」というストレスと離婚裁判の準備のストレスがかかってしまいます。
弁護士に依頼することで、必要書類の作成や離婚裁判への準備がより一層深まり、勝訴への第一歩となります。

離婚裁判について不安な方は、離婚問題に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士に一度ご相談ください。

神戸法律事務所 所長 弁護士 小林 優介
監修:弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。