免責承諾書の効力

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

  • 同意書

検査や手術を受ける前に、合併症の発症やリスクが記載されている同意書に署名をしてしまいました。その場合には、いかなる医療過誤が発生しても責任追及をすることができなくなってしまうのでしょうか。

答えはNoです。

以下、同意書や免責承諾書の効力について説明します。

同意書の意義について

通常、手術、検査、重大な副作用を生じるおそれのある薬剤の使用の際には、合併症や副作用等の一定のリスクがあることが記載されている同意書に署名をするよう求められます。

これらの意義は何でしょうか。

患者は、当該診療行為を受けるかどうかについて選択する権利(自己決定権)を有しています。そのため、医師は患者に対し、当該治療行為に関するメリット・デメリット等の説明をしなければなりません。

同意書は、医師が患者に対し、当該診療行為を行うにあたって、デメリット等の説明を行ったこと、患者がそれを理解し、同意したことを示すためのものに過ぎません。

そのため、同意書は、医師が当該診療行為に関して、医療過誤を起こした際にも責任を負わないことに同意することを示すものではなく、責任追及ができなくなるということではありません。

医師を免責する書面は有効か?

では、医師らの責任を一切追及しないという趣旨の免責承諾書に署名をした場合には責任追及ができないのでしょうか。

この点について、患者の症状の経過及び転帰等について一切苦情を言わないと誓約していた事例について、裁判所は、「右誓約の趣旨は、病気には医師の最善の努力にも拘らず不測の事態の生ずることのあることを認め、そのような際苦情を言わない、という趣旨のものであると解するのが相当」であって、損害賠償請求権を放棄する趣旨をも含むものであるとは解せられず、仮に、そのように解すべきものとするならば、その限度において右誓約は公序良俗に反し無効であると判断しています(大阪地判昭和37年9月14日判決)。

また、手術前に、当該手術によりいかなる事態を生じても一切異議を述べない旨の誓約書を差し入れた事案において、裁判所は、「これを以て当該手術に関する病院側の過失をあらかじめ宥怒し、或いはその過失に基づく損害賠償請求権を予め放棄したものと解することは、他に特別の事情がない限り、患者に対して酷に失し衡平の原則に反すると解せられる」とし、同誓約書を理由に損害賠償の責任を免れることはできないと判断しています(東京高判昭和42年7月11日判決)。

したがって、仮に病院や医師の責任を免責する旨の承諾書に署名をした場合であっても、“医療過誤”に該当する場合には、法的な責任追及を行うことは可能であり、病院や医師は責任を免れないと考えられます。

最後に

医療過誤を疑い、病院側に説明を求めた際に、「同意書に署名を行っているではないか。」と言われる可能性があります。

しかし、同意書は、あくまでも当該診療行為を受けることに関して同意をしたことを示すものに過ぎません。

そのため、医療過誤に該当する場合に、民事的、刑事的な責任追及ができなくなるわけではありません。

医療過誤を疑った場合には、医療調査を経て、責任追及をすべきかどうかを精査すべきでしょう。

この記事の執筆弁護士

弁護士 宮本 龍一
弁護士法人ALG&Associates 弁護士 宮本 龍一
大阪弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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