監修弁護士 小林 優介弁護士法人ALG&Associates 神戸法律事務所 所長 弁護士
交通事故の被害に遭われた方が、加害者側の保険会社から交通事故の示談金の提示を受けて、「本当にこれが妥当額なのだろうか」、「こんな金額では納得できない」など、提示された金額面で疑問を抱く方も多いです。
このような中で良く分からないまま示談をしてしまい、慰謝料の制度や適正額をもらうためのポイントなどをきちんと理解していないと、適正な示談金を受け取れていない可能性が大いにあります。
そこで、本記事では、交通事故案件に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、交通事故の被害に遭われた方が適正な賠償を受け取るためにも、慰謝料が少なくなってしまう理由や、適正な慰謝料をもらうためのポイントなどについて取り上げて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
交通事故の慰謝料が少なくなる原因は?
まずは、交通事故の慰謝料が少なくなる原因について見ていきましょう。
きちんと、何が原因なのかを確認し、理解することで、それに対する対策を考えることができますので、「どんなことで慰謝料が少なくなるのか」を確認していきましょう。
慰謝料が少なくなる主な原因としては、以下の4つが考えられます。
- 低い算定基準で計算されている
- 通院日数が少ない
- 後遺障害等級が認定されていない/適切ではない
- 被害者の過失割合が高い
これら①~④について、詳しく見ていきましょう。
低い算定基準で計算されている
慰謝料が少なくなる原因の一つとして、①低い算定基準で計算されている、という点が挙げられます。
そもそもですが、交通事故の慰謝料は、算定基準に沿って計算していきます。
算定基準とは、迅速かつ公平に損害賠償金を算定することを目的として目安の基準として設けられたもので、⑴自賠責基準、⑵任意保険基準、⑶弁護士基準の3種類があり、どの基準を適用するかによって、同じ事故でも算定金額に差が出てしまう、という留意点があります。
そのため、一番低い算定基準で計算されると、必然と慰謝料が少なくなってしまう可能性が高い、といえます。
具体的には、「⑴自賠責基準」 ≦ 「⑵任意保険基準」 < 「⑶弁護士基準」となるのですが、特に、「⑴自賠責基準」と「⑶弁護士基準」とで具体的にどのように慰謝料の額が変わるのか見ていきましょう。
なお、慰謝料における「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」について以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
慰謝料の比較
以下の表は、「⑴自賠責基準」と「⑶弁護士基準」とで具体的にどのように慰謝料の額が変わるのか見ていきましょう。
以下の表のとおり、通院慰謝料と後遺障害障害慰謝料の合計額で、100万円以上の差が生じることも少なくなく、また休業損害や逸失利益も併せると、弁護士による賠償請求により示談金の額が2倍どころか3倍以上になるケースもあります。
むちうちで14級9号認定、通院期間180日、実通院日数60日
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
通院慰謝料 | 51万6000円 (4300円×60日×2) |
89万円 (赤本別表Ⅱより) |
後遺障害慰謝料(14級9号) | 32万円 | 110万円 |
計 | 83万6000円 | 199万円 |
通院日数が少ない、または過度に多い
慰謝料が少なくなる原因の一つとして、②通院日数が少ない、という点が挙げられます。
上記のとおり、交通事故の慰謝料は、⑴自賠責基準、⑵任意保険基準、⑶弁護士基準の3種類の算定基準に沿って計算していくのですが、通院日数の多さ・少なさが慰謝料の算定に影響してくる可能性があります。
例えば、長期の治療期間に対して、通院日数が極端に少なかったり不規則であったりすると、慰謝料が相場よりも少なくなってしまうおそれがあります。
逆に、症状に見合わない過度・過剰な通院だと、必要性などが疑われ、補償される治療費の減額や慰謝料の対象期間として認められなくなってしまう事態も考えられます。
もちろん、特別な事情や個々の事情などが考慮されるケースもありますので、通院日数だけで判断されるわけではありませんが、適切な通院日数かどうかも注意すべきところです。
後遺障害の認定がない、または等級が低い
慰謝料が少なくなる原因の一つとして、③後遺障害の認定がない、または等級が低い、という点が挙げられます。
慰謝料については、「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」と「後遺障害慰謝料」の2種類が請求できることがあります。
後者の「後遺障害慰謝料」については、後遺症が残っており、かつ、後遺症が後遺障害として認定された場合、つまり後遺障害等級を獲得していることが前提となる点に注意が必要です。
そして、「後遺障害慰謝料」については、認定された等級が1等級違うだけで、慰謝料金額が100万円以上変わることもあるため、「何級に認定されるか」「症状に見合った等級かどうか」は、慰謝料の額を左右する重要な要素となります。
正しい認定を得るためには、後遺障害診断書を適切に書いてもらう必要があるなど、申請におけるポイントや注意点があります。
後遺障害等級の認定や後遺障害診断書については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
後遺障害診断書について詳しく見る 後遺障害等級認定について詳しく見る被害者側の過失割合が高い
慰謝料が少なくなる原因の一つとして、④被害者の過失割合が高い、という点が挙げられます。
過失割合とは、停車中の事故や追突事故などでない限り、事故が起きた責任は加害者と被害者の両方にありえるという考えのもと、両者の事故に対する責任度合いを示す割合のことをいいます。
損害賠償請求をする際には、被害者に認められる過失の割合に応じて請求額を相殺することになるので、被害者に認められる過失が高ければ高いほど差し引かれる金額が多くなり、結果的に受け取れる慰謝料などが少なくなってしまうのです。
ただし、加害者側の保険会社が提示してくる過失割合は、必ずしも正当とはいえないケースもあり、正しい過失割合を見極め、交渉するためにも弁護士に相談することをおすすめします。
なお、過失割合については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
交通事故の過失相殺について詳しく見る自分の慰謝料が少ないかわからない場合はどうしたらいい?
それでは、ご自身の慰謝料額は適正なのかどうかはどのように判断できるのでしょうか、また、それが分からない場合にはどのようにすればよいのでしょうか。
まず、お怪我の内容や治療期間、後遺障害等級の有無や内容などによって請求できる慰謝料の額は変わりますし、ご自身で安易に判断されないことをおすすめします。
そもそも、慰謝料の算定において一番高い基準となるであろう⑶弁護士基準については、弁護士に依頼しなければ基本的には適用されませんから注意が必要です。
そのため、ご自身で判断等することなく、加害者側の保険会社から、示談金の提示があった場合には、まず一度弁護士事務所に問い合わせてみましょう。
なお、ご自身で示談交渉をする場合の注意点等については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
交通事故の示談交渉について詳しく見る適正な交通事故慰謝料をもらう方法
それでは、適正な慰謝料をもらう確率を上げるためには、どうしたら良いのでしょうか。
治療中の場合と後遺障害等級認定が済んでいる場合で対策が変わりうるので、以下、具体的に解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
まだ治療中の方は
まず、まだ治療中の方は、適切な頻度の通院と後遺障害等級認定の申請を視野に入れた通院を意識しつつ治療を継続することが重要になります。
過度・過剰な通院や極端に通院日数が少ない場合には、治療の必要性や妥当性を疑われてしまい、適正な慰謝料の獲得が困難になる可能性があります。
また、「完治しなかった場合」、「後遺症が残った場合」を想定して、なるべく病院・整形外科へ通う、整骨院への通院は医師の指示のもと行う、通院において自覚症状をできるだけ伝える、ポイントを押さえた後遺障害診断書を書いてもらうなどの、適切な方法の通院を心がけましょう。
場合によっては治療中から弁護士に介入してもらい、通院のアドバイスを受けるなどもすべきですから、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
交通事故で弁護士に相談・依頼するタイミングについて詳しく見る後遺障害等級認定がお済みの方は
次に、後遺障害等級認定がなされた方は、⑶弁護士基準での慰謝料獲得を目指して弁護士に依頼すべきです。
上記でも解説したとおり、⑶弁護士基準による算定額は、弁護士費用を差し引いてもなお⑴自賠責基準や⑵任意保険基準での算定額よりも高額となる可能性が高く、また、弁護士費用特約がある場合には、弁護士費用の負担を保険会社が負担してくれるためです。
すでに解説したとおり、慰謝料の算定において一番高い基準となるであろう⑶弁護士基準については、弁護士に依頼しなければ基本的には適用されませんから注意が必要です。
なお、弁護士費用特約については、以下の記事でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
弁護士費用特約について詳しく見る交通事故で慰謝料以外にも獲得できる損害賠償金
これまで、慰謝料を中心に解説してきましたが、交通事故の被害に遭った場合、慰謝料以外にも獲得できる賠償金があり、具体的には、治療費、休業損害、後遺障害逸失利益などがあります。
例えば、治療費については、一旦立て替えた治療費を請求して獲得できることが多いです。
また、休業損害とは、事故で負った怪我の治療のために仕事を休まざるを得ず減ってしまった収入のことをいい、その分は休業損害として請求できます。なお、休業損害は、後遺症が残らず完治した場合も請求可能で、会社員や自営業者などに加えて、主婦(主夫)にも請求が認められています。
また、後遺障害逸失利益は、賠償金の中でも大きなウエイトを占めます。認定された等級などによって金額が異なりますので、等級を得ること、何級に認定されるかは、金額を左右する重要なポイントとなります。
なお、休業損害や後遺障害逸失利益については以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参照下さい。
休業損害について詳しく見る 後遺障害逸失利益について詳しく見る交通事故の慰謝料が増額した事例
弊所では、交通事故案件の取り扱いは多く、弁護士に依頼した結果、ご相談日からわずか2週間で約150万円増額できた事例など多数の解決事例がありますので、ご紹介させていただきます。
【事故概要】
被害者は自転車で側道を直進中、脇道より一時停止せずに交差点へ進入してきた相手車に衝突されました。
事故により頚椎捻挫等のケガを負い、首の痛みについて後遺障害14級9号が事前認定されました。
【ご相談・ご依頼の経緯】
相手方保険会社より約200万円の示談額の提示がありましたが、「果たして提示額が妥当な金額なのか?」、「増額はできないのか?」と疑問を抱き、弁護士法人ALGの神戸法律事務所にご相談され、その後ご依頼されました。
【事件解決までの流れ】
担当弁護士が交渉に入り、相手方保険会社の提示する示談額に含まれていなかった通院交通費等の計上や、弁護士基準による慰謝料の増額交渉などを行いました。
その交渉の結果、最終的に、約350万円での示談成立が決まり、示談額を約150万円アップさせることに成功しました。また、依頼日からわずか2週間で示談をして早期解決に至りました。
慰謝料が少ないと感じたら弁護士にご相談ください
これまで解説してきたとおり、交通事故において、被害者が受け取る賠償金の中で、慰謝料は大きなウェイトを占めることが多いです。
そのため、慰謝料をいかに適切に算定し、いかに獲得するかということは非常に大事です。
これまで見てきた、⑶弁護士基準での慰謝料というのは、弁護士しか用いることのできない基準ですから、示談する前には一度弁護士に相談することをお勧めします。
上記でも解決事例を紹介しましたが、保険会社から提示された賠償額よりも数十万~数百万賠償額を増加できるケースがかなり多く存在します。
また、弁護士に依頼することで、通院に関するアドバイスや相談もできるでしょう。
このように、交通事故に精通した弁護士が担当するからこそ、被害者の方が適正な賠償を受ける可能性が高まるのであり、どんな弁護士に依頼してもよいわけではありません。
この点、弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士は、これまで数多くの交通事故案件に携わり、豊富な解決実績を持ち、知識・ノウハウも備えておりますので、安心してお任せください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:51009)
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